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SAKANAQUARIUM2013 を観た!

夜、徐に膝の上に座ってくる娘に仕方なくyou tubeを見せていたらtopにサカナクションのライブ映像が上がってきた。
「ちょ、ま…今やってんぢゃん!」
娘が見ようとしていたスマホをぶん取り、サカナクションのライブを流す。ライブの生配信というわけではなく、「SAKANAQUARIUM2013 sakanacshion LIVE at MAKUHARI MESSE in 2013.5.19」を公開したものだった。
後でセットリストを確認すると既に5曲を終えたところであり、私が聴きだしたのは「multipule exposure」を歌い始めていた辺りだった。
こちとらコロナ禍の波に乗ってビール会社が普及させた家庭用ビールサーバーを2樽も空けていてアイドリング中!いつでもノれる準備はできていた。

サカナクションが好きだ。
マニアでデビューから追い続けているかと問われると、そうではない。その独特の音楽性と印象的なMVで注目された「アルクアラウンド」から知るようになったので熱烈なファンとまでは言い難い。
バンド名を冠したアルバム『sakanaction』を引っ提げたツアーの年である2013年大晦日には彼らの初紅白出場が決定していた。当時、あまり多くのメディア出演のなかった彼らが大晦日当日、一体どんなパフォーマンスをするのか、私は期待・興奮・不安様々な感情で当日を待ち望んだ。

曲は「ミュージック」。
MacのPCを前にサングラスをしてメンバーが立つという前代未聞の一曲がスタイルした。
「なんじゃ、こりゃ?」
一部の年齢層、特にアッパーな層には理解が難しかったはずだ。
「おるたなてぃぶ ッテ ナンデスカ?」
「サビどこ?」
反面、サカナクションのライブを知っているファンや視聴者からしたら恐らく、「ほほぉ、このスタイルできたか!」と思ったはずだ。
私も一般視聴者受けを狙うなら「アルクアラウンド」とか「僕と花」などバンドサウンド感のある曲にすると思っていた。しかし彼らは敢えて(?)「これがサカナクションだ!」という曲で勝負に出た。
カッコいい!
自身のスタイルを崩さない姿勢に潔さを感じた。

思いがけないyou tubeでの映像公開にそんなことを思い出しながら観ていた。
丁度、「僕と花」から「『バッハの旋律…』」にシフトするところだったからかも知れない。
ビールの酔いもまわりサカナクションの発するクラブサウンドも手伝って、気づけば体は曲に合わせて揺れ、手はそこにないドラムを叩いていた。
それでも一応はイヤフォンを用意し、家族に迷惑にならない程度の配慮は心掛ける。ただ、歌っていなかったかどうか自信はない。

「夜の踊り子」で最高潮に達したところで一旦締める。が、直ぐにアンコールでメンバー全員が戻ってくる。
それにしても、まさかアンコールで「ストラクチャー」とは!これはアルバム『sakanaction』に収録されているほぼインストロメンタルの曲!歌詞という歌詞は無く「ラ〜ラ〜」のみの曲だ!これを観客を巻き込んでやるのだ!
ボーカル山口一郎は指先だけでバンド演奏をコントロールし観客を参加させる。すげぇ!ライブに行くとだいたいやる、コールアンドレスポンスみたいなもんか。いや、それ以上に観客を巻き込んでチーム・サカナクションのメンバーになっているような気分になってくる。
最近になってようやく観た「ボヘミアン・ラプソディ」。QUEENのメンバーが「観客と一緒にできる曲をやろう」と足踏みと手拍子で作り出した「We Will Rock You」を思い出した。
白いパーカーを纏った山口一郎がある種の教祖的な先導力を持ち、会場全体を包括する。この時だけは会場にいる誰もが日常を忘れ、本当の意味で音楽を楽しんでいる。この時ばかりは2013年の幕張の会場にいる人々を羨ましく思った。

そしていよいよ最後の曲「朝の歌」。
この曲は最後にもってくるには相応しい曲だと思っている。アルバムを聴いたことがある方は分かるだろうが、まさに夜明けから朝に向かっていく雰囲気を醸し出す曲になっている。アルバム『sakanaction』をループで聴いてみてもスムーズに頭出し出来る。アルバムの頭と尻が上手くつながっている、という感じがするのだ!
しかし、アルバムをループさせない場合、この「朝の歌」が妙に現実に戻させる気になってしまうのは私だけか。
「朝の歌」。それは甘美な夢の終わり。夜明けと共に再び始まる明日という現実の入り口。
ライブに参加していたら尚更かも知れない。ライブイベントという非日常が終わり、強制的に戻される日常。まだこのSAKANAQUARIUMに身を沈めていたいと感じていた人も少なくないのでは。
サカナクションに会えた、生でパフォーマンスを見れた喜びと同時に、そこから引き剥がされる
落胆による涙を流す人もいたはずだ。
現実はなかなかシビアなことが多い。
だが同時に現実にサカナクションも存在し、現実のライブで会えるのも確かだ。友人夫婦はライブ後のホールで山口一郎に「ライブどうでしたか?楽しんでもらえましたか?」と直接聞かれ、サインまで貰えている!こんなの現実でないと叶わない!
人が歌を聞き、音楽を「楽しむ」のはシビアな現実から一旦身を置き、新たな自分として戻ってこさせるという意味があるのかも知れない。
だから本気で音を楽しんでいる人達の音楽は面白い!

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