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子どもの主体性を育むとは?

コロナ禍の家庭教育で「トラバーユ制をとりいれてみた…」その結果は?


雑談会


「子どもの主体性を育むとは」をテーマに、第4回の雑談会を開催しました。

フレネ教育の根幹にあるのは「仕事の教育」です。「トラバーユ(仕事)」というのは、どんなことでも仕事として責任をもって完結させることをいいます。子ども自身でも目標をたて、それに向かってやるべきことを考え、計画し、決めたことをコツコツと実行するということです。

今回の雑談会では、昨年の緊急事態宣言のコロナ禍で、家庭内で「トラバーユ制を取り入れてみた」と話していた、けやの森学園の元保護者、嶋田佑紀さんに話を伺いました。

同じ兄弟なのに…トラバーユ制がうまく機能したり、しなかったり…

嶋田さん


嶋田さんの2人のお子さんは、けやの森学園の卒園生で、現在、長男は小学4年、次男は2年生。嶋田家の「トラバーユ制」実行から1年経ちましたが、2人とも同じ結果にはならなかったそうです。

それは年齢によるものなのか、その子の資質によるものなのか・・・
長男は、目的があれば、それを達成させるためには、今やりたくないことでも決めたことを実行していくことができ、「トラバーユ制」がしっくりときたと言います。

一方、次男は、遠い目的よりも、今それをしたいかしたくないかという感情の方を優先するタイプ。「トラバーユ制」は、あまり馴染まなかったとのことでした。

嶋田さんは「親としてこの個性の違いにどう対応すればいいのか、悩むところです」と話します。


「自己保存」と「突然の飛躍」の繰り返しで成長する

阿部先生

雑談会にご出席いただいたフランス哲学がご専門で『ヴァンスのフレネ学校』を翻訳くださった阿部一智先生からは、嶋田さんのお子さんの結果について、次のように解説していただきました。

子どもの成長の過程の中で、どんな子どもも、その子どもなりの「高度な課題」を抱えているものです。

その「高度な課題」というのは、自分の中のいろいろな要求が、自分の中でバランスがおかしくならないようにしている、つまり常に調整しているということです。このことで、おかしい精神状態にならずに成長していけるのです。

子どもの「調和的な発展」がある程度に達すると、自分の中に目標を持ち始めます。

つまり、遠い将来に向かって、維持していた今の段階から、今までできなかったことが突然できるようになったりして、ステップアップしていくのです。

〝生きもの〟というのは、「自己保存」をしながら「突然の飛躍」するのです。親がこうするんだよ、これをしなさいと言わなくても、自然にそれを交互に繰り返しながら成長していきます。


子どもを見守って待つ大切さ


ゲームをする子供と叱る親1


阿部先生のお話から、子どもの成長の過程の「突然の飛躍」を、大人が見守ることの重要性が理解できるような気がしませんか?

得てして親は、「これだけ我慢したのに…」と言って、親の方が先に爆発してしまうことがあるけれども、それはよくないですね。それまでの努力が水の泡になってしまいます。むしろ、そういう子どもをじっと見ていて平静でいられる親になるべきだと思います。子どもを変えるのではなく、親が自分を変えればいいのではないかと思うんです、と阿部先生はコメントしておられました。

学校教育の現場ではどうする?

石井先生

では、これを学校教育の現場に置き換えてみるとどうでしょうか?
嶋田さんの場合、兄弟でさえも個性や考え方が大きく異なり「トラバーユ制」がすんなりいかなかったわけです。

違う家庭の子どもたちが集まる教室で、子どもの主体性を育むには、教師はどのように考え、何をすればいいのでしょうか?

阿部先生のアドバイスは、「どんな子どもも成長したいという本能を持っている。それを可能になる環境を与えることです。子どもの活動を邪魔しないような環境を、大人がどう提供するかが大事」

以前のインタビューでフレネ学校の先生方も話しておられましたが(※)、その必要な環境を子どもたちにどのように提供するかは、「子ども一人ひとりをよく観察して知ること」が大事なのです。

※インタビュー内容は次の刊行物で紹介しています。けやの森学園の公式サイトでネット注文できますので、ご利用ください。
小冊子「けやの森学園とフレネ教育 VOL.3」
DVD「ドキュメント『フレネ教育の神髄に迫る』 Part3」

佐藤先生

昨日できなかったことが今日できるようになっていれば、それを認めて褒めて励ます。それだけで子どもは、意識が変わって前に向かって邁進できるといわれています。

まずは、保護者や教師は、子どもの次のステップを見据えて提供する新たな活動のアイデアが求められてくるのではないでしょうか。

「子どもの主体的な活動とは」をテーマした雑談会を観ていただければ、それぞれの日々の保育・教育の気づきもあるはずです。このnoteをご覧いただいている皆さまと雑談会の内容を共有したいと思い、動画を無料で配信していますので、是非、ご覧ください。そして、ご意見もいただければ嬉しく思います。
※下記をクリックするとYouTubeで見られます
けやの森雑談会Vol.4「子どもの主体的な活動とは」


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