リーダー修行記88(先生に丸腰で奇襲をかけたら返り討ちに合った話)
事の始まりはDance GALA。
ディナーのとき、たまたまお隣りに座ったのが、社交ダンスレッスン予約サイトNEW LOD の中の人でした。私は、突然SNSに現れたNEW LODなるものがなんなのかずっと疑問だったので、中の人が実在してることに安心しました笑
そこで、今度開催するパーティーにけやきさんの先生に来てもらうんですよ、とお誘いいただきました。コーチャーが出るパーティーに主催者から誘われるというシュールな展開。ダンス界は狭いですね。
フリーダンスとトライアルだけのこのパーティー、アテンダントリストに女性の先生がいなかったので、パートナーのフリーダンスに興味がない私のテンションは、そのときは上がらなかったんです。でも、帰宅してから、不本意に終わったGALAのトライアルが悔しくて悔しくて気持ちの持って行き場がなくて、ふと、ここのトライアルでリベンジすることを思いつきました。
アテンダントが男性の先生ばかりだからとて、リーダーをやってはいけないということはあるまい。
思いついたときは私も正気で、先生にお願いして前日あたりに練習しようと思ってたんです。でも、なんだか知らないけど、日が経つにつれ私の中にむくむくと変な気持ちが沸き上がり、
ここはひとつ、不意打ちしてやろう。
という謎の挑戦心を抱くに至りました。
下準備何もなしで、ノー打合せで踊ってみるのもそろそろありじゃない?
いったい何が「あり」なのか。
なんでこんなことを思いついたのか、今もって不明です。
無茶苦茶なことをやってGALAのダメージを埋めようとしたんでしょうか。
NEW LOD さんのいいところは、すべてネット完結で、教室とか先生とか通さず誰でも参加できるところ。
というわけで、ネットからWTRのトライアルにそっとエントリー。中の人には、先生に奇襲かけますので、と口止めをしました。
思えばメインコーチャーとは、7月以降、ほとんどリーダーレッスンをしていません。GALAに出るために1回レッスンをしたきり。腕が上がらない時期が続いたので、パートナーレッスンをしたりお休みしたりで、気がつけば3ヶ月が経っていました。
先生に不意打ちをくらわすということは、自分も丸腰ということで、それはちょっと不安よね…と、これまた直前に思い至り、パーティー前のレッスン(パートナーデモレッスン)で、「5分だけリーダーの組み方を確認したいんですけど…」と、唐突にお願いしてこっそり準備したりしました(姑息)。
参加することすら伝えず、当日、他のお客さんに混じって「こんにちはー♪」と言ったら、
「こんにち…えええ?」
と絶句されました。
先生「聞いてない」
私「言ってないから」
先生「このトライアル表はそういうことか……」
パーティーの構成は、5&1方式のダンスタイム→トライアル→ダンスタイム。
運営さんには「けやきさん、ダンスタイムはどっちで?」と確認されました。心は揺れましたがさすがに男性アテンダントさんだらけの中でリーダーやる勇気はないです笑
そして始まった最初のダンスタイムは、なんの因果か一発目がコーチャーとのスローで、
「トライアル…全然練習してないけど……」
と、もごもご言われましたが、普通のフリーダンスを断行。
ダンスタイムでトライアルの予行練習をするなんてみみっちいことはしませんよ。ここで練習したら、私のチャレンジは水の泡だで(何かにムキになってた)。
さてさて。
私史上、最上級にチャレンジングなトライアルは、ワルツから開始。
服装が普通だったので(男装していなかったので)、踊り出すまで逆転していることに気づかれなくて、踊り出したら、おおお~っと歓声をあげていただいたので、ちょびっとテンションが上がりました。
が、それもつかの間。
最初のピクチャーポース、ヒンジで、先生が華麗なスローアウェイを決めたので、びっくりしすぎて一瞬フリーズしました。
いつものルーティンなのに、こんな裏切り行為をされるとは。
次のオーバースウェイも変な間が空いたし、全体的にパートナー氏の反応が微妙に遅い。
なんだなんだどうした?
と思っているうちに、決めどころのスローアウェイで、あろうことがレフトホイスクをされるという痛恨のミス。
ミス?
私はミスしてないってば。
ステップ合ってたもん!
1周目を終えるときには、
先生「2周目なんだっけ?」
私「2周目はないよ」←持ちルーティンがないという意味
先生「・・・・・」←よもやフリーダンスかと言いたげ
僕はフォロー力ない、と日頃から豪語している先生と、やったこともないフリーダンスを人前で踊る度胸があるわけもなく、1周目と同じルーティンを繰り返しました。2回目はしっかりヒンジを決めていただいたので、とりあえず形だけはなんとかなりました。
しかしなんなんだろうか、この、想像を上回るスリル感は。
ほんの些細な気持ちの揺れも通じ合ってしまうのがペアダンスと申しますが、私、踊っている間、パートナーの動揺を感じ取ってしまったのです。
パートナーを踊っていると、えっ何のステップ? 次何来る? どうしようわからん…ってなることないですか?
私のフリーダンスはほぼこの繰り返しなんですが、パートナー氏の頭の中をこれらのことばがぐるぐる回っているのが聞こえたんです。
なんだこれは。あらかじめわかってる持ちルーティンをしてるのに、なんで先生が私のへっぽこフリーダンスみたいなモードになっているのかよくわからん。
そんな疑問を抱えたまま2種目目のタンゴのフロアへ。
先生「………この場所から踊るの?」
私「いつもと同じだけど(なんで驚く?)」
先生「いや、やっぱりこのステップやるんだね・・・」
このステップも何も、1年以上使っているルーティンなんです。冒頭がちょっと鬼畜だけど、そもそも作ったのは先生だし、こないだGALAでも踊ったルーティン。今日のパートナー氏はいちいち反応が変だわね。
自分が奇襲を仕掛けたことも忘れて首を傾げていたら、あろうことかパートナーが出遅れるという緊急事態が発生。
えええ、私がフライングした???
動揺しつつも、少しでも止まると取り戻せない入れ替わりの激しいルーティンなので、そのまま押し切ろうとしたら、突然パートナー氏がものすごいパワーを出してきて、私はあっという間にドラム式洗濯機みたいな渦に巻き込まれました。
何?
なになになに何!?
先生「あーごめんーーー」
よくわからないままくるくる回って身体が止まったので、とりあえずコントラチェックしてみるひよこ🐥
なんだったんだ今のは。
元々、リーダーのタンゴが他の種目より物理的なパワーを必要とするので、ふたりの力関係の拮抗が崩れると、「わああああーーー」となりがちなんですが、私のリーダー史上でもわりと大きめの「わああああーーーー」でした。
そして1周目を終えるときには、ワルツのデジャヴ。
先生「2周目なんだっけ?」
私「アレですアレ」←ステップ名が出てこない
先生「・・・・・」
そのまま2周目のルーティンで押し通そうとするリーダー。
さっぱりわからないリードに困惑するパートナー。
先生「わああああーーーこれか!」
通じたときには時すでに遅く、空中分解していました・・・。
だんだん開き直って来た3種目目スロー。
2年半かけてマイナーチェンジをくり返したので、全種目の中で一番混乱しがちなルーティンで、最新版はウイングロンデで始まるえぐさ。
先生「ウイングロンデは……」
私「やりますよ、もちろん」
先生「あ、そうだよね……」
私(今日の会話は『………』が多いなあ)
結果的には。
ウイングロンデのように、リーダーとパートナーの動きがまったく違う難解なステップは、案外なことうまくいきました。
問題なのは、ウォークとかウィーブとか、出す足が違うだけ、みたいな一見簡単そうなステップの方でした。なぜならば、ダンスタイムからトライアルを休みなく踊り続けている先生の中で、リーダーとパートナーが混同していたからです。
ほとんどのヒートにトライアルが入っていて、リーダー、リーダー、パートナー、リーダー、リーダー、パートナー……とくり返してる先生の、
どっちだ?
どっちだどっちだ、今どっちだ?
という心の声が、私には聞こえました。主に、ドラム式洗濯機にぶちこまれたときに。
そして、実は私も混同していました。
もちろん事前に準備はしていたんです。家でシャドーしてから会場に行ったし。
だから足型は間違いませんでした。
でも、パートナーのダンスタイムを踊った後だったのでその感覚が抜けなくて、過剰にパートナーに依存してしまいました。ぶっちゃけ半分くらいは連れて行ってもらえる気持ちでいました。いつもはそんなこと思わないのに、無意識のうちに、自分の出力を相手が上回ることを前提に踊っていたのです。
かくして、パートナー気分なリーダーのリードを、自分がリーダーかパートナーかで迷っているパートナーがフォローするという、やばいペアがフロアに爆誕。
恐ろしいわあ。
ペアダンス、恐ろしいわあ。
私の思いつき、予想以上にやばかったわあ……。
今回の件で、丸腰で奇襲をかけると返り討ちに合う、という、まあまあ当たり前の結論に私は辿り着きました。
でも、踊っている間に、相手の心の声が聴こえるレベルには到達したなあと、感慨深くもあります。
フロアで何が起こっても、パートナーシップのかけらを拾って帰ることができるのが、リーダーの面白いところです。
ところでこれは、GALAのリベンジになったんでしょうか。
(おわり)