MMAの残酷さと美しさ

あれは2003年の8月。夏真っ只中で行われたPRIDEミドル級グランプリの1回戦。桜庭和志vsヴァンダレイシウバの一戦。当時僕は中学生。悪ガキで喧嘩も好きな少年でした。その昔、小学生だった僕は朝方までゲームをするという日常のサイクルでたまたま見たスポーツニュースの『すぽると』という番組で桜庭和志という普通の見た目をしたおじさんを初めて見て、その存在を知りました。それからというもの、僕は桜庭和志という人間、プロレスラー、格闘家を愛し続けました。僕の格闘技人生の出発点は間違いなく桜庭和志です。そしてその日、桜庭和志はヴァンダレイシウバにKO負けを喫しました。見事なまでの失神KO負け。涙に暮れながら僕はその瞬間に格闘家を志しました。

総合格闘技と呼ばれていた時代。

色々と割愛するが僕は16歳から総合格闘技、今で言うところのMMAを始めました。当時はまだMMAなんて言葉が浸透してなかった時代。ちょうど軽量級の大会も出来て、日本では大晦日に各局キー放送で格闘技が流れていたバブル時代。日本が格闘技の中心だった時代。僕は今もお世話になっている福井県は三村道場で練習に励んでいました。

格闘技が好きだった。

僕は自分の才能の無さを痛感していました。プロを目指して道場に通っていたのだが全くと言うほど上達を感じたことはなかったです。それでも格闘技が好きで、楽しくて仕方なかった。試合に出て最初の頃は訳もわからずに勝てた。18歳になるまでの2年間は基本練習しかしたことなかった。そこからアマ修斗という当時はアマチュア格闘技の最高峰の大会へ出始めたんですが勝ったり負けたりを繰り返し自分はプロにはなれないかもなと思い始めます。

堀口恭司という天才が出てきた

20歳になった頃だったかな。まだプロに昇格できる気が全く無かったどころかもはや軽く諦めていた頃、とんでもないニュースが。当時は全日本選手権が頂上でその下に関東&関西オープンと言う大会があって。そこで結果を出してプロへ上がるというルートしかなかった。勿論出てくる選手はアマチュアのトップ処ばかり。その関東オープンで全試合圧倒的な試合で優勝を遂げた堀口恭司と言う選手が全日本を待たずにプロ昇格を果たしたと聞いた。知り合いの関東にいた選手は生で見ていたらしくモノが違うと思ったらしい。僕も人伝に聞いた話だけで堀口という選手は凄いんだなって記憶したんですね。

日本の堀口恭司へ

僕は22歳を迎える前に全日本選手権で3位になってプロになることができました。好きで始めた格闘技だったけどひとつ何かカタチにすることが出来て嬉しかったのは覚えてます。その頃、堀口恭司はプロ修斗の新人王トーナメントという登竜門でまたもや圧倒的な内容で優勝を果たしていました。その頃は五味隆典や山本KID、川尻達也、須藤元気など日本人の軽量級のスター選手が揃っていて盛り上がっていた時代。スター選手は国内の大きな興行で試合をしていて、次世代の選手は小さな団体で経験と戦績を積み上げていました。

対世界へ。

この頃から格闘技は暗黒期を迎えます。いわゆる日本格闘技の氷河期です。先見の明がある選手達は海外へ打って出て行きました。当時の関係者やファンは日本人でも外国人選手と五分以上に闘えると思っていたでしょうし、僕もそう思っていました。しかし時代はもう変わっていたんですね。世界の総合格闘技はMMAというスポーツに変わっていました。独自のルールがあって、それが爆発的に世界中に広がっていきました。皮肉にもこの日本が落ちた時点で、日本が世界から置いていかれてるという現実に気づいたのです。

日本にもMMAを。

それでも世界と闘える日本人はいました。その内の一人が堀口恭司です。日本で輝かしい戦績を残して、今も世界の覇権を握るUFCに参戦。その後の活躍は皆さんご周知の通りです。何が言いたいのかと申しますと、今の格闘技の世界情勢、そして歴史を踏まえた上で、僕達日本人のファン&関係者達は国を代表してトップで闘っている堀口恭司という人間に感謝しているし期待しているし託しているし懸けているんですね。今、それができる日本人は堀口恭司しかいないのですよ。ボクシングなら井上尚弥がいるし、キックボクシングなら那須川天心がいる。そしてMMAには堀口恭司がいる。

今の若者に伝えたい。

僕はたぶん身内には厳しい方です。あまり甘やかしたりしないです。それは現実を見てほしいし知ってほしいからです。格闘技を心から愛しているからです。僕が昔そうだったように今、選手を目指している若者も今のこの格闘技ができる環境にもっと感謝してほしいし自覚を持ってほしいのです。少なくとも身内にはそうであってほしいと僕は思っています。今の堀口選手は名も無き選手や、色んな事情で夢潰えた選手、今まで下してきた対戦相手、そしていつの時代も支えてくれるファンの想いを全部背負って闘ってくれてます。今日は残酷な現実が待っていました。でもこれが格闘技です。実力や運や色々あります。でも堀口選手もペティスも誰も何も言えないくらいの才能の持ち主で、誰も何も言えないくらい努力して、出した結果なんです。素晴らしい闘いを見せてくれた2人に感謝です。ありがとう。

最後に。

応援していた選手が負けて泣いたのは3回目。桜庭シウバ、ヒョードルのベラトール、そして今回の堀口恭司。自分の精神状態が本当におかしくなってこのままだとヤバいと思ってnote書きました。青木真也さんのnoteも購入して読んで少し落ち着いてきました。酔っ払いながら殴り書きしたので誤字脱字文脈等訳のわからない所も多々あると思いますが最後まで僕の気持ちを書き殴っただけのnoteを見ていただけた方には感謝申し上げます。そして書いていて改めて思った自分の格闘技への恩返しと責務を見つめ直すことが出来ました。時代は紡ぎます。物語は続くんです。この先にどんな景色が待っているのか楽しみにして、この辺で終わりたいと思います。

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