突然届いた、あの人からのメール。

こんにちは。

突然だけど、
その世界での住み心地はいかがですか?

私達が長い時間をかけて造り上げたシミュレーターの世界。なかなか良く出来ていると思いませんか?
私の住む空間をモデルにしているとはいえ、我ながら面白いものを造り出したものだと自負しています。

普通はコンピュータを使って、コンピュータの中でシミュレーションするものなんだけど、このシミュレーターで画期的なのは「実物」を使っていること。現在の私達のありったけの科学技術やバイオテクノロジーを投入し、全てを可能な限り縮小化することで可能になりました。3Dプリンターをはじめ、様々な機器の超高性能化に感謝です。

君達から見ればその「宇宙」は無限に広がる広大な空間だと感じられるだろうけれど、水族館でシャチが泳いでいる水槽くらいの大きさなんです。その空間を常に限りなく真空に近い状態に保つのが一番大変。その真空状態を保つために真空ポンプの吸気口が大小何ヵ所か付いているんだけど、君達は「ブラックホール」なんて名付けてくれているみたいだね。唯一、君達と私達の世界を繋いでいる場所。機会があったら出ておいで。
でも、造った張本人の私達ですら、君達を見ることは不可能に近いレベル。君達と向かい合って会話を出来ないのが残念です。

実は、君達は「私達が現在より破壊的な生物であった場合」を想定して造られた生物。この宇宙で君達に与えられた役割は『破壊』。君達が壊したものを君達が元に戻すことは不可能。君達の行動、活動は全て破壊へと繋がってしまうから覚えておいて。

宇宙には、他にも様々なタイプの人間を配置しています。君達が他の星の人間と出会うことは無さそうだけれど、万が一出会うことがあったとしても、君達は最悪の存在。他の人間からは駆除の対象にしかならないね・・・。

君達に与えられた役割は『破壊』。
全てを破壊し尽くして、きっといつか滅ぶ日が来るでしょう。

君達が聞いたら怒ると思うけど、私は友人達と、君達がどれだけの期間で、どんな滅び方をするのか、賭けをしています。
前回滅びかけた時は、雄と雌を何組か乗せた宇宙船で星を脱出して助かったみたいですね。辿り着いた星でまた同じ道を辿っているようですけど、次はありません。

このシミュレーターを起動してから、私達の時間でようやく46日が過ぎようとしているところ。今のままでゆけば、あと数日で結果が出ると予測しています。

君達の最後を楽しみにしています。
最高な最後を演出してね。


そうそう。
最悪なことにシミュレーターの機器や設備に重大な故障や損傷が発生したらそこで終わり。一応、バックアップはバッチリ準備してあるけれど、もしそうなったら・・・ごめんね。
でも、君達は一瞬で消えるから安心して。

それじゃ、短い日々を楽しんで下さい。
さよなら。


― この宇宙を造った者より ―





※作品は作者の妄想、空想、想像上のフィクションであり、実在の人物や団体、場所、建物などとは一切関係ありません。

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