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深海少女の安全な浮上方法
こんにちは、ボカロが好きです。ボカロはいいぞ。
深海少女
名曲ですね。
この海を出て 今飛び立つの
「心惹かれるあの人を見つけ」た深海少女が最後に浮上し、希望を感じさせる最後でこの曲は締めくくられます。
本当に大丈夫でしょうか。
メンタルも回復しかかっている時が一番不安定とも聞きます。
心配で夜も眠れなくなった私は…………
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スキューバダイビングの資格を取りました。
深海少女と学ぶスキューバダイビング
手を伸ばせば届きそうだけど 波に拐われて見失った
ドリフトダイビングと呼ばれる船を係留せずに、海に入るポイントと出るポイントが異なるダイビングでは、浮上後に船に拾ってもらう必要があります。このような時になんの目印もなければ波にさらわれて見失われてしまいます。
こういう時のために、シグナルフロートという蛍光色の浮き具を携行します。
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ドリフトダイビングではなくても、何らかの緊急事態が生じて一緒に潜るバディとはぐれたり、自分だけが浮上してしまったときにも救助のためにもフロートを使用します。つまりどんなタイプのダイビングでも携行した方が良いということです。
あれは一体なんだったのかな あたたかくて眩しかったの
夏に入江など流れが少ない所では、太陽に温められた海水面付近の水と深い所の冷たい水が混じらず、水深によって温度が急激に変わることがあります。また、岩陰など垂直方向でも急に温度が変化することがあります。この温度による水の層をサーモクライン(水温躍層)と言います。
深海少女は沈んでいく過程でサーモクラインを通過したのでしょう。その前に「どこへ向かい、何をすれば? ふと射し込む一筋の光」と言っていますので、岩陰が多いところなのかもしれません。
急な温度変化は体力を奪い、低体温症などの危険もあります。潜水スポットのことをよく知っている現地のダイビングショップの方などにポイントのレクチャーを受けることが大切です。
深海少女 だけど知りたい 心惹かれるあの人を見つけたから
ダイビングをしていると、とても美しい海の生物に出会います。
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しかし海の生き物はとてもデリケートです。不用意に驚かせたり無暗に触ったりしてはいけません。また、海の生き物の中には危ないものも少なくありません。「サンゴ、フジツボなどによる切り傷、タコ、ウツボなどによるかみ傷のほか、イモガイ類、ガンガゼなどによる刺し傷」などの危険があります(←この文言、潜水士試験の頻出です)。
自分のため、海のためにもそっと見守るようにしましょう。
自由の羽を大きく広げて 泳ぐあなたは奇麗でした
潜水中に泳ぐときは中性浮力を意識する必要があります。中性浮力とは、浮力と重力が釣り合って無重力に近い状態になることです。この状態で水の流れに逆らわずに、フィンを大きくゆっくりと動かして泳ぐことで体力を消耗せず、自由に潜水を楽しむことができます。
私は今年始めたばっかりのひよっこですので、中性浮力を維持してジタバタせずに泳ぐのがまだうまくできません。もっと経験を積んで深海少女に見とれられるくらい優雅にダイビングを楽しみたいものです。
そしてまた光は降りそそぐ 見とれていたら目が合った
ダイビングを行うときは、通常バディシステムといい、複数人で潜ります。単独で遠くに行ってはいけません。ボンベからは通常自分が使う分とバディに異常があったときに空気を分けてあげる用の呼吸器具(オクトパスといいます)が出ています。「突然息が吸えなくなったときに、バディのところまで息を吐きながら近づいてオクトパスを咥えることができる距離」がバディから離れてもよい距離となります。「見とれていたら目が合う」くらいに近づいている深海少女は模範的と言えるでしょう。
深海少女 わざわざ沈む 暗闇のさなかに赤い頬
水中では、波長の長い赤色は吸収されやすく、波長の短い青色は吸収されにくいです。海が青いのはこのため。
水中ではオレンジ、白、黄色の順でよく見えます。深海少女の頬はオレンジがかって見えたことでしょう。かわいいですね。
また、水中でマスクを通してみると実際より近く、大きく感じます。
ダイビングは民間のライセンスを取得すればできますが、水族館や救難隊などの潜水の専門職に就きたい場合「潜水士」という国家資格を取得する必要があります。この潜水士試験で水中での光や音の感じ方は頻出です。
・赤色が吸収されやすく、オレンジ、白、黄色が見えやすい
・音は空気中より早く、長く伝わるのでどの方向から来た音かわからない
はセットで覚えましょう。
次の瞬間、君が突然姿を消した
もしもバディとはぐれてしまったときは、緊急事態ですのでダイビングを継続してはいけません。まずは1分間水中でバディを探します。それでももしも見つからないときは水上に浮上します。浮上後はシグナルフロートなどで居場所を知らせます。
バディ側も仲間がはぐれていることに気づいたときはすぐに予定していたダイビングを中止して仲間を探し、見つからない場合は浮上します。
心配性の 彼女は焦る 闇が彼を隠しひとりきり
ダイビングではボンベの空気の残り量(残圧)=活動時間です。こまめに残圧を確認し、余裕を持ったダイビングをしなければいけません。
しかし、何らかの緊急事態が起きて空気がなくなりそうなときはどうしたらよいでしょうか。バディが近くにいるときは、緊急用のオクトパスから空気をもらいながら安全に浮上します。
ところが、この場合深海少女はバディともはぐれてしまっています。そういう場合、水深が十分浅い(9m程度)ときは「コントロールされた緊急スイミング浮上(CESA)」を行います。
これは、上を見上げ、レギュレータをくわえたまま、ウェイトは捨てずに上に向かって通常の浮上速度(毎分18m以下)で泳いでいく方法です。この時絶対に息を止めてはいけません。息を止めると、水圧で縮んでいた肺の中の空気が膨張して、肺を傷つけてしまい致命傷となります。このため息を吐き続けるために「あーーー」と言いながら浮上します。
限界少女 その手を伸ばす
正しいです。緊急浮上の際には、頭上の安全確保のために片腕を上にあげて浮上します。
ちなみに、9mよりさらに深い所でエア切れとなり、バディも近くにいない場合、緊急浮上となります。この場合はウェイトを捨ててできるだけゆっくりと浮上していきます。浮上速度が上がりすぎると前述の肺裂傷や減圧症のリスクは上がりますが、緊急も緊急なので浮上できるならそれでもマシ、ということです。
この海を出て 今飛び立つの
ダイビングには常に「減圧症」のリスクが付きまといます。ダイビングでは水圧がかかった水中で、圧縮空気を吸うので、血液に窒素が高圧で溶け込みます。炭酸水が高圧で水に二酸化炭素を溶かしているのと同じです。これが急浮上などによって圧力が下がると、炭酸の蓋を開けるかのように、血液から気体となって、血管や神経や関節にダメージを与えることがあります。これが減圧症です。
減圧症を予防するためには、浮上をゆっくりと行うことが重要です。通常毎分18m以下、だいたい小さい泡が上がっていくよりも遅く浮上します。また、どのくらいの深さをどのくらいの時間潜っていたかに応じて、段階的に水深をあげながらその水深で一定時間待機する「減圧時間」を設けます。
そもそも減圧時間を設けなくてもよいくらいの時間に潜水時間を抑えるということもあります。この減圧不要時間の限界は、簡易的には「ダイブテーブル」という表から調べることができます。
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とはいえ、減圧不要限界に満たない時にも、減圧症のリスクがないわけではないので、さらに予防のため、水深5m付近で一定時間とどまります。これを「安全停止」と言います。
また、ダイブテーブルでは水中での最大深度からしか調べられず、深度の変化を考慮することができません。そこで、ダイブコンピュータという腕時計型のデバイスをつけ、これで水中にいた時間や水深の変化を計測し、コンピュータが自動的に適切な停止時間を教えてくれます。これを守ることで安全なダイビングを楽しむことができます。
「飛び立つの」が沖縄などでのダイビングを終えて飛行機で帰る、という意味なら注意が必要です。飛行機で上空に上がると、地上よりもさらに気圧が下がります。ということは、血液に溶けた窒素が気体になる可能性があるということで、減圧症のリスクがあります。1日に複数回のダイブを行った場合は、最低でも18時間は飛行機に乗ってはいけません。もちろん登山など急激な気圧の変化を伴うこともしてはいけません。
なお、深海少女は素潜りをしています。基本的に一般人レベルの素潜りで減圧症は起きません。しかし海女さんレベルの長時間・複数回・深深度の素潜りは減圧症のリスクがあるようです。また、減圧症はなりやすさに個人差があり、しっかりと決まりを守っていてもなることもあります。体に異常を感じたら医療機関に相談しましょう。
……というわけで、趣味でダイビングを始めてみたので、習ったことを書きたいだけの記事でした。すみません。
始めたてのにわかなので間違えていたらすみません……教えてください
次回、深海少女が潜水士取ってみたでお会いしましょう。
それでは、よきボカロ&ダイビングライフを!
本記事はボカロリスナーアドベントカレンダーに参加しています。obscure.さん毎年ありがとうございます!
おまけ
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悲しみの海に
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沈んだたわし
撮影地:北大東島
(沖縄の海は綺麗すぎて悲しみの海感が無いですね)