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2025沖縄遠征備忘録 秋田→名護到着まで

 思えば、5年前は勢いだけで飛んだ気がする。
 ファイターズファンになり春季キャンプ見学がどうやら楽しそうだと知り、翌年2020年には初の沖縄に一人で飛んだ。
 楽しくて楽しくて、いい思い出しか無かった沖縄遠征。また行きたいと思うのは当然だった。そんな中、世界が一変したコロナ禍。2年連続で予約をキャンセルすることになり、自分の中ではすっかり沖縄に嫌われた感が残ってしまった。
 何がきっかけだったか、たぶん日程的に仕事休めそうだな、とかチームがAクラス入りする強さを見せたシーズンの熱にもやられたのかもしれない。多分9月頃だったと思う。ホテルと航空券を確保した。
 正直、高齢の両親の体調だったり不安要素はあったけれど、自分自身沖縄まで行く体力気力、行ける時に行こうという、5年経っても結局勢いで遠征を決めた。
 年末年始、恐れていた両親の体調悪化に見舞われたが、1月中旬に復調し、なんとか行ける段取りとなった。なったものの、ギリギリまで行けるかわからなかった私は、最低限のことしか準備しなかった。準備万端で迎えたにも関わらず計画がとん挫すると、その後精神的にかなり引きずるのが分かっていたからだが、結果的に準備不足に泣くことになる。

 1月31日、キャンプ開幕を翌日に控え野球界ではおおみそかとなるその日、夢の沖縄に旅立つため午前4時を少し過ぎ家を出た。
 時間としては早朝になるのだが、この時期はまだ夜の闇が深い。足元の雪と夜の闇、モノクロのコントラストの中で南国沖縄への大きな期待を胸に出発した。

 7:30 秋田発 8:40 羽田着
 9:25 羽田発 12:25 那覇着
 13:45 名護行バス出発 15:09 名護着

 なかなかタイトなスケジュール。いくつもの関門があるような初日のスケジュール。どこで計画が狂ってもおかしくない旅のはじまり。
 空港の立体駐車場が開く6:00に合わせるべく、時間調整のため立ち寄ったコンビニで【熊出没注意!】の張り紙にビビりながら、6:00過ぎに立体駐車場に着いた。運良くエレベーターのほど近くに空きを見つけ、荷物の最終チェック。沖縄用の軽装だったので、車内で身に着けていた手袋とストールを外し、スノーブーツからスニーカーに履き替える。
 数日後、日本にやってくるという今季最強寒波という情報が頭をかすめ、ストールを再度手にしたけれど、(いや、でも沖縄だし)と車内に置き直した。これがひとつ目の後悔である。ストール1枚くらい、なんとでもなる。ギュギュッと押し込めたら持っていける。これは本当に後悔した。
 外を歩くことなく連絡通路から空港に入る。荷物を預け早めに保安検査も済ませ、中の待合スペースで家から持ってきたサンドウィッチを食べながら、いくつもの関門が訪れるこの行程の無事を祈った。

 結果としては、とても順調だった。同時刻の伊丹行が欠航となり、羽田経由で伊丹に向かうことになった方々の振り替え手続きの都合で離陸が遅れたものの、羽田発の那覇便も遅れ、特に急かされたり走ることもなく、那覇に到着した。
 那覇ではバスの時間まで1時間あるため軽くなにか食べようと思っていたのだが、これがうまくいかなかった。完全に自分が悪いのだけれど、調べる程に期待が大きくなることもあって飲食店の情報をロクに調べていなかったのである。行けなくなった場合のショックが大きいから。まあ、でも何とかなるだろうと思っていた。思っていたが、1月31日という日付がそうはさせてくれなかった。
 到着したお昼時、なんとタイガースさんとベイスターズさんの本隊到着とかぶってしまったようで、出迎えのファンの方々で到着ロビーが大賑わい。それは到着してからググったポーたまが見つけられない程だったのだ。ならばレストランフロアに……と思い3Fまで移動したが、どこも行列。1月31日の移動は危険……! 1時間やそこらじゃ、空港でなにもできない! という学びを得た。
 そうこうしているうちにもう13:20になったので、バス乗り場の確認にと外に出た。今回お世話になったのは『沖縄エアポートシャトル』さん。特急があり、順調にいけば1時間30分で名護に送り届けてくれるという大変ありがたいバスだ。5年前はこのバスの存在を見つけられず、111だったかな、その路線に乗り名護バスターミナルを目指した。所要時間の予定としては確か2時間30分程度だったと思う。乗車前にトイレを済ませたらいけるかな、と夕方の渋滞を知らない私はそれに乗ったわけだけれど、結果3時間と少しかかった。途中優しい運転手さんに「トイレ休憩するかーい?」と聞かれた程だった。当時は丁重にお断りしたが、今の私にその余裕はない。どうも、トイレ休憩を入れようとしてくださったのもその方の優しさだったようで、デフォルトでついているわけではないのだ。――というわけで、今回は沖縄エアポートシャトルさんにお世話になることにした。
 沖縄エアポートシャトルさんは、乗車1か月前から予約ができ支払いを済ませることができる。沖縄のバスは支払いに使えるものがかなり限定されていた記憶があるので、予約時クレジットカードで支払いできてしまうのもありがたかった。ちなみに運賃は那覇国内線ターミナル→名護市役所で1,600円。赤い可愛らしいラッピングバスで、時折運転手さんが「右手が国際通りです」等、名所をお知らせしてくれる。停車場所はバス停ではなく、ビーチや美ら海水族館などで、到着のお知らせの際カチャーシーが流れるのも沖縄気分を盛り上げてくれて嬉しい完全なる観光用高速バスである。そのため空港を出発するとあまり乗車する人もおらず、のんびりと車窓を楽しんだ。
 ちなみにこのバス、予約しなくても当日時間に合わせて乗車場所にいれば乗せてくれる。予約優先のため後から乗ることになるが、係のおじさんが言うには「乗れないことはまず無いよ」ということだ。

 景色が街から住宅地になり、ゴツゴツと角ばった沖縄独特の建物の中にちらほらと伝統ある赤瓦の住宅が見えると(あぁ、沖縄に来たんだなぁ)と感じる。赤瓦を乗せたあの様式の家屋は本当に趣があって美しい。その周りだけ、時間の流れもゆったりしているのではないかとさえ思えてくる。
 そんなことを考えながらぼんやりと景色を見つめていると、徐々に自然が増え、海が見えた頃ゆるくカーブを描いた湾の向こうに目的地が見えた。この日まではタピックスタジアム名護、明日からはEnagicスタジアム名護。ファイターズが球春を迎える舞台だ。感慨深い思いを胸に見つめていると軽やかなカチャーシーの音色と共に、名護市役所到着を告げられた。


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