BCGは『ファクターX』なのか!?の一考察
山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信「ファクターXを探せ!」
“感染者や死亡者の数は、欧米より少なくて済んでいます。
何故でしょうか?? 私は、何か理由があるはずと考えており、
それをファクターXと呼んでいます。”
1.はじめに
『ファクターX』として京都大学大学院 医学研究科 上久保靖彦特定教授の『集団T細胞獲得免役説』(以下、上久保説)[1]の可能性が高いと考えているが、要因は一つとは限らない。
様々な仮説がある中、当初から個人的に関心の高い『BCG説』に関しては、コロナ初期の大阪大学 宮坂昌之名誉教授の報告[2]等はあるものの、未だクリアになっていない事に不満が残る。そこで、科学的検証や議論の必要性を感じ、本考察を行なった。
2.『ファクターX』の定義付け
東アジアだけでなく、東南アジア/南アジアも合わせて、「死亡者数/100万人」を確認してみた。
※対象はBCG接種年が確認できた国のみ。
※元データ:死亡者数[3]、BCG接種年/BCG株[4][5][6]
・上記全ての死亡者数/100万人は、数百人以上の欧米諸国に比べ、格段に少ない。
そこで本考察では、
ファクターXを「死亡者数/100万人≦50」の主要因と定義する。
3.考察アプローチ
1)BCG仮摂取率※に対するBCG株別死亡者数/100万人の関係性をみる。
※BCG仮摂取率:BCG接種年と年代別人口[8]により、当該年の新生児のみ接種したと仮定して算出。
2)死亡者数の多い70歳以上人口に対するBCG株別死亡者数/100万人の関係性をみる。
3)最終的に「死亡者数/100万人≦50」の各国について、上久保説の欧州risk scoreも加え、総合的な結論を導く。
4.結論
BCGがファクターXである可能性は低い。
※BCG追加接種による効果については、UAE論文[7]等の報告がある。
5.分析結果
1)BCG仮摂取率に対する死亡者数
・ファクターXの定義を満たすデータについて、BCG仮摂取率と死亡者数との相関はみられない。
・生菌数の多い日本株について、イラクとサウジアラビアはファクターXの定義を満たさない。地域性か?検証が必要。
・生菌数の多いロシア株について、ばらつきが大きくファクターXである可能性は低い。
2)70歳以上人口に対する死亡者数
・ファクターXの定義を満たすデータについて、70歳以上人口割合と死亡者数の相関はみられない。
3)「死亡者数/100万人≦50」の各国データ
・BCG株種類は大きくばらついており、相関はみられない。
・東/東南アジア/南アジア以外の欧州データについて、上久保説の欧州risk scoreが-100〜-31と低いものが大方を占める。
・ウクライナは欧州risk scoreが-10〜-1と高いが死亡者数が少ない。検証が必要。
・オーストラリアとニュージーランドが低い。地域性か?検証が必要。
参考)分析データ
6.引用文献
[1] Yasuhiko Kamikubo, M.D., Ph.D. and Atsushi Takahashi, M.D., Ph.D.. Epidemiological Tools that Predict Partial Herd Immunity to SARS Coronavirus 2, 2020
[2] Masayuki Miyasaka, Is BCG vaccination causally related to reduced COVID‐19 mortality?, EMBO Mol Med (2020)12:e12661
[3] Coronavirus (COVID-19) Deaths, Our World in Data, 2020/08/19
[4] BCG World Atlas
[5] Yutaka Akiyama and Takashi Ishida, Relationship between COVID-19 death toll doubling time and national BCG vaccination policy, 2020
[6] Giovanni Sala, Rik Chakraborti, Atsuhiko Ota and Tsuyoshi Miyakawa, Association of BCG vaccination policy and tuberculosis burden, 2020
[7] Iradj Amirlak, Rifat Haddad, John Denis Hardy, Naief Suleiman Khaled, Michael Hsiang Chung, Bardia Amirlak, Effectiveness of booster BCG vaccination in preventing Covid-19 infection, 2020
[8] Population by Age Groups - Both Sexes, World Population Prospects 2019
7.謝辞
・上久保先生には、論文や動画、TV・メディア出演事前情報のご紹介、コロナ緊急出版等、有益な情報・ご助言等を多々いただきました。心より感謝申し上げます。
・宮坂先生には、BCG Atlas[4]をご教示いただき、お陰様で本考察する事ができました。また、ご長男が僕と同じ高校卒でIT企業勤務という個人的なチャットもさせていただきました。先生とJ Sato氏に深く御礼申し上げます。
・徳島大学 大橋眞名誉教授(←左記心痛リンク)には、Youtube『学びラウンジ』でコロナに関する極めて科学的・専門的、先駆的な情報発信され、大変頭が下がります。引き続き学ばせていただいております。本当に感謝しております。
・松田学先生には、以前から政経を学ぶためにアゴラ経由でYouTube『松田政策研究所チャンネル』ファンでしたが、そこで上久保先生をご紹介いただいたのは何とも奇遇なご縁であり、誠に感謝しております。
・自動車開発エンジニアの吉澤智哉様(僕も日産開発エンジニアでした^^;)には、YouTube『スウェーデン移住チャンネル』ファンでしたが、そこからカロリンスカ大学病院の宮川絢子先生に繋がりました。ご縁に大変感謝いたします。
・宮川絢子先生には、カロリンスカ研究所Cell論文(筆頭筆者は日本人) 等を初め、スウェーデンの現状や文化、TV出演予定などの多くの情報発信され、大変頭が下がります。心より感謝申し上げます。
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