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エクストリーム推し活
写真家の幡野さんに会った。
会ったというか、仕事の依頼をした。
会社のリクルートページ撮影依頼だ。
さらに図々しくも、「写真を教えてください」というお願いもした。
ウチの会社はそれなりにいいカメラがあり、自社メディアには自前で取った写真を乗せる。
今年はリクルートページのリブランディングを行うことになり、写真も自前で撮ろうという話になっていた。
でも、ある日酔った勢いで「社長!やっぱりプロを呼びましょう!」と直談判した。
幡野さんのワークショップに参加して、たくさんの気づきがあったけど、「好きな娘を好きなように撮る」という、ゆるふわパパカメラマンであることに変わりはなく、リクルートページ用の写真なんてどう撮っていいか考えあぐねていた。
どう撮っていいか?とまるで自分が撮るみたいなこと言ったけど、自分の立場は法務的なもので、担当外。社内カメラマンは20代の女子たちだ。
我は外野のおじさんである。
外野のおじさんが「クオリティを求めるならRAWで撮ったほうがいいよ。現像教えるよ」という事案が発生しただけだ。
そんで、教えられるほどのものはない。
そんななか、久方ぶりに社長と採用担当と飲みに行く機会があったので、幡野さんをねじ込んだ。完全に暴走だ。
翌朝には依頼メールを送り、マネージャーの小池さんと連絡を取り合った。
小池さんの対応がホスピタリティの塊だった。すごい。
どんどん自分もノってきて、前のめりでメールを返した。
「社長、ゆうべのこと覚えてますよね?」
社長にも無事思い出してもらえたところで、幡野さんへの依頼が確定した。
撮影とレクチャーで1.5日間の贅沢なメニューだ。
これは、仕事の革を被った推し活だ。
当日、幡野さんが到着前に坦々麺をアップしているのを見て、突撃しようかと一瞬思ったけど、開始前からドン引き確定なのでグッと堪えた。
幡野さんが到着して、会議室にお通しする。
他のメンバーが入ってくる前に精米機と羽釜の話をしてしまった。
はしゃぎすぎている。
握手会で、剥がされる前にありったけの話題をブチ込むオタクのメンタリティだ。
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その後も、隙を見つけては幡野さんに話しかけてしまった。
・炊飯の話
・子供の話
・マリオパーティの話
・名古屋土産の話
・仕事の話
などなど、もちろん、写真の話も。
たくさんお話できて、その時はホクホクだったのだが、今になって反省している。
喋りすぎたか?グイグイ行き過ぎたか?邪魔だったよな?引かれたかも?と考えてしまう。
なにかに似ているぞ。これは。
あれだ、思春期男子の初恋だ。
我ながらとんでもなく気持ち悪いヤツだなこれは。
さておき、幡野さんはまずメンバーにレクチャーをしてくれた。
ワークショップでの話と、仕事で撮る写真の話はだいぶ違った。
目的がぜんぜん違うから当然だ。
幡野さんの話を聞いていると、みんながどんどん前のめりになって、イキイキしてくる。
質問が沢山飛び交う。
推し仲間が増えた。
自分もこんなふうに、後輩たちを輝かせられるおじさんになりたいな。
と思いながら、ずっと一部始終を見ていた。
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ドサクサに紛れて、自分も質問した。
ゆるふわパパカメラマンにも使える知識がたくさんあった。
完全に役得だ。公私混同している。
レクチャーだけでなく、もちろん幡野さんにも撮ってもらった。
まだ納品されていないけど、とっても楽しみ。
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まだ納品されていないので、この写真たちは当然幡野さんではなく、私のものだ。
現像も、私のプリセットをもとに教えてもらったことを反映させて少しブラッシュアップしたもの。
まだまだ現像は迷いながらやっているけど、それが楽しみでもあるので、自分なりに試行錯誤を繰り返している。
スケベ心が働いて、自分のプリセットを幡野さんに見てもらったりもした。
「いいんじゃないですかね」の一言で小躍りするような小物だ。
これで間違っていないんだという安心が欲しかった。
でも、レクチャーのなかで「下手で、いい写真を目指しましょう」と言われたことが、今になって効いている。
ワークショップでも言われたし、日々色々な媒体で幡野さんが繰り返し言っていることだ。
それが、今回でもう一段階深く落とし込めた。
自分にとって、写真は「趣味」だ。
上手くなりたい、正解は何だ?と悩んでいるのは意味がない。
「料理」も趣味だけど、自分が食べる料理は自分が好きな味にすればいい。
人気店の味をコピーしようとしても、自分の好みじゃなかったら意味がない。
もちろん、家族においしいと思ってほしいというのも大事だ。
それが写真になると、他人に見せて褒められたいとか、いいねが欲しいという欲が出てしまう時がある。
料理を人に食べさせることは相当な間柄にならないと難しいが、写真は気軽にアップできてしまうから、こんな欲が出るのかもしれない。
見る専門だったTwitterがちょっとずつ稼働したのも、写真にハマって誰かに見られたかったからだ。
でも、ネットの向こうの顔色を伺っても意味がない。
「誰かの期待に応えるために悲しくなるなんてつまんないって」
リコリコ屈指の名台詞が頭に浮かぶ。
ネットの向こうの誰かはそもそも期待すらしていないのにね。
おかしな話だ。
幡野さんが「バズ・バエ・エモを頭から消そう」と言っているのも、また1段深く効いた、
1回で分かれよ、自分。
子どもたちは、絵も歌も楽器も料理も、大人から見たら下手だ。
始めたばかりだから当たり前だ。
だけど心からに楽しそうにやっている。
親はそれがたまらなくかわいい。
大人もそれでいいじゃん。
なんとなく、ツイッターのアカウント名を変えてみた。
撮影後にダッシュで向かったBase Ball Bearのライブ、MCでこいちゃんが「タイトルの意味は後付なのに、インタビューでそれっぽく喋った」と言っていた。
この時の「何才」は効いたなぁ。
だから自分も後付けで意味をつけた。
SONYのSNSで、意味もなく使っていた「Take-C」
本名の表記をひねったもの。
Take-C
AでもBでもなく、Cを撮る。
おー、なんかしっくりくる。
気取らず、C級写真でいいから好きな写真を沢山撮ろう。
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幡野さん、Base Ball Bear 推しの2大巨頭を堪能した怒涛の2日間だった。
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