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サギが一羽

正月二日目。息子がお年玉で買い物をしたいというので、電気屋に向かった。電気屋はプラモデルやらなんやらいろいろ売っているから半分おもちゃ屋のようなものだ。私もミニ四駆のパーツで欲しいものがあった。ちょうど良い。今朝からかなり雪が降っていたがまあ気にしない。車を走らせた。

国道を走り、片側二車線の比較的広い道路へ出たときだ。最初は道路に積もった雪の白さでよくわからなかったのだが、目の前に「なにか」がいることに気づいた。

すらっと道路の真ん中に立つのは、サギだった。
ふっと異世界から現れたかのような、
いや私たちが異世界に紛れ込んだのか、
その一瞬はこの現在の世界から切り離された不思議な時間だった。

「サギ!」
運転している夫と私と息子がほぼ同時に叫ぶと、サギは二、三歩歩き、バサッと羽を上下させて飛んだ。なんとも美しい。時間が移動したのかと思う。
サギは空に飛び立つわけではなく、反対車線との境目にあるガードレールに降り立つとまたその体を伸ばし、静止した。

毎日、時間や空間を切り取って意識することはほとんどない。自分がいて、自分が動き、自分が何かを成し遂げている。
その流れの中に、突如現れる動物はいつも、それをぶった切っていく。時間と空間を切り取って、透明な額縁でそれを囲む。

今、ここに自分がいて自分が生きているということは、そういう時に実感するような気がする。

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