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米国企業分析 / Schrodinger Inc. (SDGR) 自分用メモ

(2020/12/20時点で書いた記事)

 ここ数日でARK ETF、ARKGが買いまくってるSchrodinger(SDGR)について触れていこうと思います。この会社の事業は、前回記事にしたCertaraと同じくしてバイオシミュレーションのソフト及び創薬開発ソリューションを提供する会社です。時間のかかる創薬開発において、従来のような実験ベースの臨床試験を科学技術計算を用いることで仮想実験に代替し、低コストでスピーディーな創薬開発を実現することで病気に苦しむ患者さんに一刻も早く新薬を提供することを使命にしてます。

詳細な説明に入る前に、まずは前回書いたCertara (CERT)の記事を参照下さい。Certaraの記事の中で競合他社情報としてSchrodingerの説明に触れてます。

この記事では主に会社プレゼンの内容とそれに対するメモ及び、S-1から読み取れた肉付すべき部分にフォーカスする格好にします。半分自分用のメモなので、結構ライトな感じに仕上げてる点はご了承下さい。

ビジネスモデル

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メモ
ビジネスモデル
①社内の創薬開発チームによるソフトのbuild up & improvement
②ソフトの販売
③製薬会社との創薬共同開発

これらをループさせることでソフトの精度&機能を強化しビジネスのシナジー効果を生むのが狙い
実際に直接マネタイズを生むのは②と③が該当


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メモ
・ソフト開発に従事→約200名、内ソフト開発で140名、創薬開発で85名
・創薬共同プログラムは25件
 - 内FDA承認は2件のみ
 - 臨床試験中が7件
・社内で取り組んでいる創薬プログラムは5件

私見
Certaraの解析を用いてFDA承認申請された創薬の件数、200件以上と比較するとかなり少ない

経営者

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メモ
CEO Ramy Farid
2002年にSchrodingerに入社。CEOとして、研究開発、プラットフォーム開発、創薬に対するかなりの成長と多額の投資、研究協力や合弁事業を通じた積極的な事業開発を通じてSchrodingerを率いてきた。彼は、2009年にアトラスベンチャーズで見つけたバイオテクノロジー企業、ニンバス・セラピューティクスの取締役も務める。さらに、2016年から2019年まで取締役会を務め、現在はモーフィック・セラピューティクスの科学諮問委員会を務める。Schrodingerに入社する前は、ラトガース大学の化学部門の助教授を務める。彼はペンシルベニア大学生化学と生物物理学科のNIH博士研究員であり、カルテックで化学の博士号を取得。


プロダクト

第一原理シミュレーションに基づく、分子スケーラブルな主要薬剤特性を予測することが可能なツール

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メモ
- 社名の通り、計算の基礎式はシュレーディンガー方程式※1
- 自由エネルギー摂動、初期分子を別の目的の分子に変換し、その変換が特定のタンパク質標的への結合親和性をどのように変化させるかを評価する
- 基礎式は時間依存による波動関数
→分子スケール離散空間+摂動解析となると、離散時間はnano secか?どうせ時間発達を偏微分で解くパターンになるだろうから凄まじい計算負荷が想定される(とりあえず量子力学は専門じゃないのでこれ以上は深入りしない)
- 対応OSはLinux、Win、Mac、GPGPU※2。事実上GPUの一択であろう
- AutoQSAR/DeepChemと呼ばれる機械学習の実装を統合することで、数日以内に数十億個の分子を探索可能
- タンパク質折りたたみプログラムのライセンス契約をコロンビア大学と締結しており、2001年にロイヤリティーを支払った(永久ライセンス)※3
その他解析技術、計算高速化技術についてもコロンビア大学とライセンス契約を結んでいる

私見
Certaraの解析技術は、直接分子スケールの解析モデルを扱うのではなく、第一原理に基づく独自に加工された数理モデルをデータセット化して使っている、という点が大きく異なる。恐らくデータセット化に含まれてない、全く未知のたんぱく質構造を解析で同定していく、みたいな使い方にSchrodingerの技術の強みがあるように思える。ただし、結局解析のコア技術は大学の成果に依存してそう。
加えて、Schrodingerの解析は計算負荷はかなり高いと思われるので、絨毯爆撃的なランダムサンプリングみたいな使い方であればCertaraの方が有利と推定。

※1補足(シュレーディンガー方程式)

※2補足(対応OS)

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※3補足(たんぱく質折りたたみ技術)


解析技術利用による効果

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メモ
従来: 上限5000分子の合成。開発期間4~6年。
解析利用: コンピューター上で100万分子からソートし、1000分子を合成。
      開発期間は2~3年。従来開発方法より半分の開発期間


業績

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メモ
- ACV$1000以上の顧客は1266社。顧客はバイオ医薬品企業、材料科学企業、学術機関、政府研究所
- ソフトウェア事業のACV (Annual Contract Value) = 年間発注額は2013年以来 CAGR 16%で成長、2018-2019はYoYで18%
- 過去6年間のACVが$ 100,000を超える顧客の96%以上が契約更新
- 売上トップ20社は15年契約更新
- 2019年にACV >$1Mの顧客が減少に転じている

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メモ
- 2018-2019売上YoYは24%。事業別で見ると、ソフトウェアよりも創薬共同開発の成長率が大きい。これはコンサルサービス強化してるCertaraと同じ傾向ということが言えそう。
- 売上の約6割が北米市場を占めており、売り上げの約30%を上位10社に依存している。この点はCartaraも同様。


直近2018-2019年のファンダ
特に改めて追記することは無し。なかなか利益が出ないねぇ。

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リスク

・大口顧客への依存。
・稼ぎ頭の創薬共同開発に関してはFDA承認対象であるということ。ただこれはCertaraのコンサルサービスも同じである。

所感

稼ぎ頭の創薬共同開発のFDA承認実績が少ないのが気になる。一方のCertaraは解析ソフトを用いた創薬が既に200件以上もFDA承認されている実績アリ。主要マネタイズである技術サービスが、両社共にFDA承認という同じリスクに晒されるのであれば、実績多いCertaraの方が有利な気がする。しかもCertaraは利益が出てる点も〇。CertaraはEQTというよくわからんファンドに買収されてる件はやや気になるものの、CertaraとSchrodingerのどっちか1つ選べと言われたらCertaraかなあ。(ARKはなぜこんなにSchrodingerを買っているのだろうか、、、)


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