目は1分でよくなる【bookノートC】

日本は「近視大国」である。

統計によると、40代以上の日本人のうち42%近くが近視だとされている。

アメリカ人や中国人が22%、49歳以上のオーストラリア人が14%だということを考えると、いかに日本人に近視が多いかがわかるだろう。

加えて、視力0.1以下の人が増えていること、視力低下の低年齢化が進んでいることも特徴だ。

実に4000万人以上の日本人がなんらかの目の悩みをもつといわれている。

「親がメガネをかけているから仕方ない」「両親も兄弟も近視だから、私も目が悪い」などと、遺伝が近視の原因になっていると考える人は多い。

だが、近視の原因は遺伝ではない。

もちろん遺伝性のものもないわけではないが、遺伝だからと視力回復をあきらめてしまうのは残念なことである。

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近年、「ドライアイ」に悩む人が多い。

日本全国には、ドライアイに悩む人が1000万人いるとされているほどだ。

ドライアイは涙が出にくくなる病気なので、「目薬をさせばいい」という程度に軽く考える人がほとんどだ。

だが実はドライアイは、目の機能を衰えさせる、恐ろしい病気なのである。

単なる肌の乾燥などと同じように考えないでほしい。

涙は目の乾きを防止するだけでなく、目を殺菌、洗浄し、角膜などへ酸素や栄養を補給する重要な役割を担っている。

無色透明だが、

ナトリウムやカリウム、ビタミンA、ビタミンC、そしてブドウ糖などの栄養成分、

抗菌作用や免疫成分であるラクトフェリン、

lgA、細胞成長因子のEGFなどといった、

血液と同じような成分を含んでいる。

この涙が出なくなるのは、人間の体の機能の衰えだといえる。

ドライアイが悪化すると、目を開けても閉じても痛むだけでなく、肩こりや頭痛も起こる。

こまめに目薬をささなければならないストレスから精神的に参ってしまう人もいるほどだ。

目は毎日一生懸命に働いてくれている。

1日に行われるまばたきは2万回近く、眼筋は10万回以上も動く。

人間の体のなかでこれほどに動く器官は心臓くらいだ。

人間の体は筋肉運動によって乳酸がたまるしくみだが、乳酸が大量にたまると視力に影響が出るといわれている。

乳酸は酸素によって分解され、血液で運び出されるため、酸素不足になると機能が衰えてしまう。

だから目を十分に機能させるためには、目に常に酸素を送り込む必要があるというわけだ。

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目の一番の栄養源は「酸素」である。

私たちの体を構成する60兆個の細胞は、酸素をエネルギー源としている。

目は1日10万回以上も眼筋を動かしているのだから、酸欠状態になると目が一番に影響を受けてしまう。

では、酸欠はどんな症状を引き起こすのか。

毛様体の筋力と水晶体の弾力が失われ、近視や老眼が加速する。

水晶体の新陳代謝が衰えて濁りが生じ、白内障になる。

眼球内の老廃物が排泄できなくなって、飛蚊症につながる。

房水という目の組織を満たす体液の排泄が十分にできなくなり、眼圧が上昇し、緑内障を招く。

さらには視神経が栄養不足に陥り、視野が損なわれてしまう。

酸欠の原因は2つある。

まず一番大きいのが、胃腸が硬化することだ。胃腸が硬化すると、息を十分に吸い込むことができず、呼吸が浅くなってしまう。

また胃腸の働きが鈍化することで、全身の血行が悪化し、酸素不足になる。



次に大きいのが、姿勢が悪いことだ。

事務仕事をしている人はほとんど100%酸欠である。

前かがみの姿勢でいると、気道がせばまってしまい、十分に息を吸えない。

また座りっぱなしでいるため、おしりや太ももが圧迫されて血流が悪くなっている。

その結果、目に栄養が十分に供給されていないというわけだ。

ストレスもまた、酸欠と同様に目が悪くなる原因の一つだ。

呼吸したり、心臓を動かしたりといった、自分の意志とは無関係に体の機能を調整する神経を自律神経という。

自律神経には交感神経と副交感神経があり、交感神経は活動しているときや緊張しているとき、ストレスを感じているときに働く神経である。

一方、副交感神経は、休息しているときやリラックスしているとき、眠っているときに働く。

交感神経が優位なときには、私たちの黒目のなかにある「瞳孔」が大きくなる。

多くの近視の人の目は、瞳孔が大きくなっている。

こうした状態が続くと、目のピントを合わせるのに時間がかかる。

その結果、ピント調節を行う筋肉が疲弊し、視力の低下を招いてしまう。

交感神経を最も緊張させる要因はストレスである。

精神的・身体的ストレスによって交感神経優位の状態が続くと、筋肉が疲弊し、視力がどんどん落ちていくというわけだ。

さらに、自律神経の乱れは血流障害を引き起こし、酸素不足を招く。

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【視力回復トレーニング】

① タッピング法(打圧法)

これは、人差し指から小指までの4本の指先を使い、目のまわりを中心にトントンと叩くという方法である。

少し強めに叩くが、皮膚が赤くなるほど強くなくていい。

1秒間に3回叩く程度のリズムを意識しよう。

まず、眉間からこめかみに向かって、眉毛の上に沿って5回タッピングする。

次に、目の1センチ下を、目頭から目尻に向かって5回タッピングする。

最後に、こめかみから頭頂に向かって5回タッピングする。

タッピングによって、筋肉、骨、皮膚を同時に刺激して血流を促進し、酸素の供給量を増やす効果が期待できる。

また目の周りには自律神経の活動を促すツボが集まっているため、ツボの位置を意識せずとも十分にツボを刺激できているはずだ。

② 呼吸法

呼吸法の基本は、鼻から吸って口から吐くことだ。

ポイントは2つ。まず、肺のなかにある空気を先にすべて吐きだしてしまうことだ。

吸い込むのが先ではなく、吐きだすのが先だと意識しよう。

まず空気を出し切った後、肺が背中や体の脇からもふくらむイメージで思いっきり空気を吸い込む。

次に、吐きだすときに6秒以上かけることだ。

筋肉の繊維を構成しているフィラメントの働きは5秒しかもたない。

その性質を利用して5秒以上負荷をかければ、筋繊維を効率的に鍛えることができる。

呼吸筋を鍛えれば、深くしっかりした呼吸ができるようになり、酸素をたっぷり取り込むことができるようになる。

深い呼吸によって副交感神経の働きを活発にし、眼筋をゆるめることができるというメリットもある。

③ 瞑想法

人間の脳は疲弊している。パソコンや携帯、スマートフォンなどから情報を一方的に受け取っているからだ。

そんな脳を緊張から解放し、脳の疲れを取り除いて「見よう」「見える」と思わせるのが瞑想法である。

脳を休ませるため、目を閉じて幸せなシーンや楽しいシーンを思い浮かべるという、簡単なメソッドだ。

きれいな風景や楽しい思い出など、幸せな気分に浸れるシーンならなんでもいい。

時間制限もないので、好きなだけイメージの世界に浸ってみよう。

これがムリなくできるようになれば、子どもの頃に見えていた風景や情景を思い出してみよう。

かつて目がよかったころのあなたが見ていた風景だ。

そうすると、あなたの脳のなかの「見える」という記憶がよみがえり、どんどん見えるようになるというわけだ。

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酸欠の大きな原因に胃腸の硬化がある。

また、目の機能を維持する筋肉は、自律神経と深くかかわっている。

つまり胃腸をほぐし、自律神経のバランスを整えることが目と全身の健康維持への近道だといえる。

そのために最も効果的な運動がジャンプである。

ジャンプによって胃腸を揺らせば、ぜん動運動を促し、硬くなった胃腸をほぐすことができる。

さらに、足の骨を刺激して自律神経を活性化させることもできる。

またジャンプ500回はラグビーの試合と同等の運動量なので、運動によって血流を促進することも可能だ。

ジャンプによって太ももを鍛えることができる点にも注目したい。

太ももを鍛えれば心肺機能が向上するので、酸素をうまく取り入れることができるようになる。

高く飛ぶ必要はない。

床から足が数センチ浮く程度、1日500回を目標にやってみよう。ひざが悪い方は、もも上げやスクワット100回に置き換えてもよい。

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悪い姿勢もまた、酸欠を招く。

正しい姿勢でいれば、気道が開き、1回の呼吸で450~500ccの空気を吸い込むことができる。

しかし姿勢が悪いと、たった100ccしか吸い込めない。

100ccしか吸えていなくても息苦しくなるわけではないので、知らず知らずのうちに体中で酸欠のしわ寄せが起きてしまうのだ。

悪い姿勢の例として、パソコンに向かって前かがみになっているというものがある。

この姿勢だと、必要な量のわずか5分の1の空気しか据えていない。

これが1日8時間以上、何週間も何カ月も続けば、心臓や肺などの生命活動に関わる部分へ酸素が優先的に供給され、目は酸欠状態になってしまう。

姿勢は、目だけでなく体や脳の発達にも大きな影響を与えるのである。

「目は1分でよくなる!」
今野清志 著
自由国民社

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