天才を殺す凡人【bookノートB】
人には「天才」「秀才」「凡人」の3種類がある。異なるタイプ間には「コミュニケーションの断絶」があり、天才は凡人に殺されることがある。
コミュニケーションの断絶を引き起こしているのは、3つのタイプによってそれぞれ異なる「軸」だ。
異なる軸を持つ人同士のコミュニケーションが成立するのは、異なる才能を併せ持つ「アンバサダー」と呼ばれる人たちのおかげだ。
凡人の中には、「共感の神」がいる。「共感の神」は人間関係の機微に敏感で、天才を心から理解し、サポートすることができる。
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天才は、独創的思考にすぐれ、その人にしか思いつかないようなプロセスで物事を進められる人。
秀才は、論理的思考が得意で、システムや数字、秩序に基づいて堅実に物事を進められる人。
凡人は、感情やその場の空気を大切にしつつ、相手の反応を予測しながら動ける人だ。
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「天才は変革の途中で、凡人に殺されることさえある」という。
凡人にとって、成果を出す前の天才は、コミュニティの和を乱す存在に見えるのだ。
そして天才をコミュニティから追い出そうとする。
ここに天才と凡人の「コミュニケーションの断絶」が存在しているわけだ。
こうして天才は、凡人に殺されてしまう。
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コミュニケーションの断絶は、軸と評価の2つで起こる。
軸は絶対的で、その人が「価値」を判断する前提となるものだ。
一方、評価とは、軸に基づいて良し悪しを評価することだ。
これは相対的であり、相手の考え方に共感できるか否かで決まる。
例えば、あなたはサッカーが好きで、友人は嫌いだとする。
ここでコミュニケーションの断絶が起こったとしたら、それは「評価」が原因だ。
評価は相対的なものだから、あなたが鹿島アントラーズの魅力を夜通しプレゼンし、それに友人が共感したら、評価は変わる。
一方で、「軸」は変化しない。
だから「軸が異なること」によるコミュニケーションの断絶は、ほとんど平行線だ。
天才と秀才と凡人は、この「軸」が根本的に異なる。
天才は「創造性」という軸で物事を評価する。
秀才は「再現性」で、
凡人は「共感性」による。
3つのタイプによってそれぞれ異なる「軸」。
これこそが、コミュニケーションの断絶を引き起こしている。
凡人は天才よりもはるかに多く存在する。
だから凡人は、「多数決のナイフ」によって天才を殺し得る。
革新的なサービスが凡人によって叩き潰されそうになったのも、この「軸」の違いによるものだ。
軸が異なるとコミュニケーションは成立しない。
それでも会社が成り立っているのは、「アンバサダー」と呼ばれる人たちがコミュニケーションの断絶を防いでいるからだ。
アンバサダーには3種類いる。
① 創造性と再現性を持つ「エリートサラリーマン」
② 再現性と共感性を持つ「最強の実行者」
③ 共感性と創造性を持つ「病める天才」
というふうに、2つの才能を併せ持っている。
天才と秀才の橋渡しをする「エリートサラリーマン」は、高い創造性と論理性を兼ね備えているが、共感性はまったくない。
とにかく仕事ができるサイボーグのような人だ。
秀才と凡人の橋渡しをする「最強の実行者」は、何でも要領よくこなす。
共感性も兼ね備えているため、後輩や周りから好かれるリーダーの役割を担っていることも多い。
天才と凡人の橋渡しをする「病める天才」は、一発屋のクリエイタータイプだ。
クリエイティビティと共感性を兼ね備えているため、爆発的なヒットを生み出せる。
一方で、再現性がなく、ムラが激しい。
組織におけるコミュニケーションがうまくいかないときは、相手のパターンと自分のパターンをつないでくれる「アンバサダー」を探そう。
凡人が「最強の実行者」を巻き込む際、効果的な方法がある。
それは「あなたならどうしますか?」と聞くことだ。
天才、秀才、凡人における主語の違い。
凡人の多くは、主語を「人」で語る。
秀才は組織やルールなどの善悪で、
天才は世界や真理など、超越した何かで語る人が多い。
秀才は天才に対して「憧れと嫉妬」という2つの感情を持っている。
尊敬はしているものの、天才さえいなければ自分が頂点に立てるという気持ちがあるわけだ。
秀才がコンプレックスを抱え続けると、天才を密かに殺す「サイレントキラー」になることがある。
サイレントキラーとは、制度やシステム、ルールなどを使い、自ら直接手を下すことなく、組織の「創造性」や「共感性」を殺す存在だ。
いくら素晴らしい成果を出し、高い評価を得ていても、「心の中にある闇」に食われ、多くの天才は自殺してしまう。
その一方で、幸せな人生を全うする天才もいる。
この違いはどこにあるのだろうか。
それは、「共感の神」が側にいてくれるかどうかだ。
「共感の神」とは、凡人の一種で、誰が天才かを見極められるほど共感性が高い人だ。
人間関係の機微に敏感で、天才を心から理解することができる。
そして天才をサポートし、天才を世の中に活躍させ続けるのだ。
これは、大企業における「若くて才能のある人」と「根回しおじさん」の関係に似ている。
大企業で新しいことをやるには、若くて才能のある人と、細やかな根回しが必要だ。
「共感の神」である根回しおじさんがさまざまな部署に根回ししてくれているからこそ、若くて才能ある人がイノベーションを生むことができる。
天才には、根回しができない。
「創造性」はあっても「再現性」や「共感性」が低く、凡人を説得できないからだ。
だから天才には、自分をサポートし、足りないものを補ってくれる「共感の神」が必要なのだ。
天才は、「共感の神」のサポートのもと、大きな成果を生み出す。
そしてその成果は秀才によって「再現性」をもたらされ、人々の「共感」を獲得する。
こうして世界は進化していく。
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凡人にとって最強の武器は、「自らの言葉」だ。
多くの人は、自分の言葉ではない、借り物の言葉を使っている。
利益、会社、マーケティング……こうした言葉は、つくりものの言葉だ。
もちろん、これらの言葉が不要だというわけではない。
こうした言葉がなければ、社会は回らないだろう。
だが、人の心を動かせるのは「自らの言葉」だ。
凡人は他人の言葉を捨て、「自らの言葉」という最強の武器で戦うべきだ。
「他人から借りた言葉」を使わず、「自らの言葉」だけで仕事の話をしてみよう。
いかに「自らの言葉」を置き去りにしてしまっているかに気づけるだろう。
「自らの言葉」だけを使い、ありのままの気持ちを伝えれば、必ず人は動く。
「天才を殺す凡人」 北野唯我 著
日本経済新聞出版社
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