仮説思考【bookノートB】



優秀なコンサルタントは総じて問題を早く発見したり、解決策にたどり着くのが早い。

彼らは共通して、情報収集の途中や分析作業に取りかかる前に「仮の答え」をもって作業に臨んでいる。

このように情報が少ない段階から、常に問題の全体像や結論を考える思考スタイルを「仮説思考」と呼んでいる。

最初からいきなり答えをもって行動する。

仮説思考を使えば、手元にあるわずかな情報だけで、最初にストーリーの全体構成を創ることができる。

仮説立案に定石はないが、脳をゆさぶるコツを身に着け訓練することで、ヒラメキを生むことができるようになる。

仮説の検証方法は、実験、ディスカッション、分析の3つがある。

少ない情報から答えを出すという仮説思考が、初めからうまくいくわけはない。大いに失敗するべきだ。

解決策に繋がるいくつかの課題=仮説にフォーカスしたほうがいい。

仮説思考を使えば、手元にあるわずかな情報だけで、最初にストーリーの全体構成を創ることができる。

証拠が不十分でも、問題に対する解決策や戦略まで踏み込んで、全体のストーリーを作ってしまう。

そうすると、ごく一部の証拠は揃っているけれども、大半は証拠がない状態になり、そこから証拠集めを開始することになる。

その場合には、自分が作ったストーリー、

つまり仮説を検証するために必要な証拠だけを集めればいいので、

無駄な分析や情報収集の必要がなくなり、

非常に効率が良くなる。

「いろいろな可能性が考えられる段階で、大胆に1つのストーリーをつくり上げたりしたら、重大なことを見逃し、間違ったストーリーを作ってしまうのではないか」と心配する人がいる。

だが、それは杞憂だ。

そのような場合には、ストーリーの証拠集めをした段階で、仮説を肯定する証拠がなかなか集まらない。

そして必然的に自分のつくったストーリーが間違いであることにすぐ気付き、

初期段階であることから、余裕をもって軌道修正ができる。

仮説を立てる上で、意図的に「ヒラメキ」を生む頭の使い方がある。

人は誰でも知らず知らずのうちに、自分の得意なものの見方をしており、それが新しい仮説を生み出す阻害要因になっている。

ここでは脳にゆさぶりをかけるコツを紹介しよう。

1つ目の方法は「反対側から見る」ということだ。反対側から見るためには、

①顧客視点をもつ

②現場視点で考える

③競争相手視点で考える

の3つの思考法がある。

①について、自分がモノを売ることを考える前に、ユーザーはどんな人であり、どこでなぜ自社の商品を購入しているのか、使っているのか考えてみる。

ひとりのユーザーになりきることで、新しい仮説は生まれてくる。

②については、本社でデスクにしがみついていないで、実際に現場に行って考える。

具体的な事実を経験し、観察することで新しい仮説が浮かんでくる。

③については、もし自分が競合だったら、わが社をどう見ているだろうと考える思考方法だ。

競合はわが社の弱みを突いてくるかもしれないし、強みに正面攻撃を仕掛けてくるかもしれない。

その場合はどんな手立てがあるか考えることにより新しい仮説が浮かんでくるのだ。

2つ目の方法は「反対まで振る」つまり両極端に振って考えるということだ。

例えば、戦争の代わりに平和を追求したらどうなるのか、

攻撃の代わりに防御を徹底的にやるとどうなるのか、

といった思考法である。

両極端に振って考えることで物事の本質が見えてくる。

3つ目の方法は「ゼロベースで考える」ということである。

これは既存の枠組みにとらわれず、目的に対して白紙の段階から考える姿勢だ。

既存の枠組みで考えると過去の事例や規制により思考の幅が狭くなり、

目的に対する最適な方法に到達することが困難になる。

そのため、ゼロベース思考が仮説を立てるときには特に重要だ。

仮説を検証する場合、最も確実でわかりやすいのは実験することだろう。

ディスカッションは仮説を構築するとき、検証するとき、進化させるとき、いずれの場合にも有効な手段である。

仮説思考の基本スキルといってよい。

ディスカッションは特に仮説を検証するよい機会になる。

自分の出した仮説を自分で検証するという方法もあるが、

それは経験を積まないうちはなかなか難しい。

それよりも他者との対話によって検証するほうが時間もかからず楽なことが多い。

最初のうちは、仮説を立てても間違っていたらどうしようという不安も多いだろう。

だが、失敗を恐れずに、大いに間違えることだ。

上手なディスカッションをするためには、

必ずあらかじめ仮説を立てておくこと、

仮説を否定せずに進化することを目指すこと、

相手の意見をよく聞き「議論に負けて実を取る」こと、

ディスカッションのメンバーをバラエティ豊かなものにすること、

がポイントだ。

仮説の検証のための分析のコツは、まず最小限の要素だけを急いで簡単にやるように心がけることだ。

「問題意識のない分析」は決してやってはいけない。

まずは仮説ありき、次に分析という順序で考える必要がある。

仮説思考力が高まっていくと、最初から相当【筋の良い仮説】を立てることができる。

検証した結果誤っていたので、振出しに戻って仮説を立て直すということがほとんどなくなる。

少なくとも筋の良い仮説を立てる確率は上がる。

よい仮説は経験に裏打ちされた直感から生まれる。

仮説を立てるには経験を積むことが大切だ。

少ない情報でよい仮説を立てられるようになるためには、経験を重ねるしかない。

仮説思考をトレーニングする方法がある。

ひとつは、日ごろから「So What? (だから何?) 」と考え続けること、

もうひとつは、「Why? (なぜ?) 」を繰り返すことだ。

BCGではこの考え方が徹底されており、なぜを最低5回は繰り返す。

これを日常的に行うことで、仮説思考力も磨かれていく。

トヨタ自動車でも「なぜを5回繰り返す」という言葉が、カイゼンの基本ポリシーとなっている。

「なぜと5回問え。そうすれば原因ではなく真因が見えてくる」

少ない情報から答えを出すという仮説思考が、初めからうまくいくわけはない。

失敗というとマイナスのイメージでとらえ、

「避けたい」と思いがちだが、

意識してみると失敗から学ぶことはとても多いのだ。

大いに失敗してほしい。

失敗をおそれずに仮説を構築し、検証し、進化させる。

これを何度も繰り返す。

こうして仮説思考の精度が高まってくると、

問題解決のスピードは格段に速くなる。

すべては経験なのだ。

経験を積み重ねることで、短時間で質の高い仕事ができるようになるための仮説思考力をぜひとも身につけよう。

「仮説思考」内田和成 著
東洋経済新報社

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