医者の本音【bookノートC】

医者はしばしば、風邪の患者さんに対して少し雑な態度を取ることがある。

その理由は、風邪は薬では治らないからだ。

風邪の原因であるウイルスは通常数日で死滅する。

だから医者にかからなくてもやがて風邪は治るのだ。

それでも医者は、いくつかの目的で薬を出す。

1つ目が、のどが痛い、高熱があるなどといった、患者さんの症状を抑えるためだ。

つまり対症療法として薬を出す。

2つ目が、細菌の感染に対処したり、予防したりするためだ。


風邪と似た症状が出ているだけで、細菌に感染しているかもしれないし、弱った体に細菌が攻撃するかもしれない。

そういった事態に備えて抗生物質を処方することがある。

3つ目が、患者さんを満足させるためだ。

風邪でつらいとき、病院で薬をもらえなかったとしたら、不満に感じるだろう。

医者は、顧客満足のために薬を出すこともある。

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医者が自分の話を聞いてくれないと感じている患者さんは少なくないようだ。

もちろん医者は、わざと冷たい態度を取っているわけではない。

彼ら彼女らには、患者さんとコミュニケーションを取るための時間が十分にないのだ。

どんな科に所属しているにしても、分刻みのタイムスケジュールで動いている。

それに合わせて看護師や助手のスタッフなどがスタンバイしており、遅れることは許されない。

そのため、患者さんから急に質問をされても、後日改めて話しましょうということになってしまうのだ。

外来診察も同様だ。

1日に何十人もの診察をするため、1人と話ができるのはせいぜい10分ほどだ。

そのうえ、カルテの記入やお薬の処方、次回の外来の予約もしなければならない。

こうした状況で患者さんに合わせてゆっくり説明することは難しいだろう。

では、どうすれば医者ときちんと話せるか。

おすすめなのは、事前に聞きたいことをメモしておくことだ。

それを医者に見せれば、疑問を短時間に伝えられ、回答をもらうことができるだろう。

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困る患者さんとして、

治療と無関係の話を続ける患者さん、

平日の日中には来院できないと言い張る患者さん、

不満を抱えて医療機関を渡り歩く患者さん、

などが挙げられる。

中には、「袖の下」を渡してくる患者さんもいる。

「袖の下」は小説やドラマの中だけの話ではない。

日経メディカルの調査によると、約8割の医者は謝礼金を受け取ったことがあるという。

医者によって意見はさまざまで、

「受け取ればいい」と考える人もいるし、

「謝礼金は収入の一部だ」という人もいる。

「謝礼金を渡すなんて、失礼だ」と感じる医者もいる。

もちろん、謝礼金を渡したからといって優遇してもらえるというものではない。

感謝の気持ちを伝えたいなら、寄付や手紙といった形が望ましいだろう。

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高齢になると、複数の病気を抱える人も多い。

結果として、1日に10種類以上の薬を飲んでいるというケースも珍しくなくなる。

なぜ複数種類の薬を飲むことになるのか。

これは残念ながら医者のせいだ。

医者は様々な科に分かれており、それぞれの専門領域に応じて薬を処方する。

「おくすり手帳」を確認するものの、そこでチェックするのは薬が重複していないかどうかであって、薬の数ではない。

その結果、薬の数が増えてしまうと言うわけだ。

患者さんにとっては言いだしにくいことかもしれないが、薬を減らしたいと言われても医者はそれほど嫌な顔をしないだろう。

薬を減らしたところで医者の収入が減ることもない。

たしかに、必要な数だけを処方しているのに「薬を減らしたい」と言われてしまうと、医者も悩むかもしれない。

それでも、薬を減らすことで患者さんが楽になるのなら、医者にとっても嬉しいはずだ。

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がんの告知を受けると、多くの患者さんは頭が真っ白になってしまう。

それは仕方のないことだ。

しかし検査や治療のスケジュールを決めていかなければならないので、何はともあれ次の3つの質問をしよう。

1つ目は「そのがんの治療に慣れているか」だ。

基本的に、告知をした医師が主治医となる。

医者といっても得意分野はそれぞれ異なるから、主治医がそのがんの治療を得意としているかどうかは確認しておこう。

年間で20人以上の治療に携わっていれば専門性を持っているといえるだろう。

2つ目は「どんな予定で治療や検査を進めるつもりか」だ。

患者さんとしては、すぐにでも治療を進めたいものだろう。

しかし病院によっては、検査や手術まで何か月も待たされることもある。

病院選びの基準は人それぞれだが、これも最初に確認しておきたい。

3つ目は「私・家族にできることは何か」だ。

その答えはがんの種類や病状によって変わってくる。

それでも、体の健康にもこころの健康にも役立つ答えがもらえるはずだ。

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手術は患者さんにとっては大ごとだが、外科医にとっては日常だ。

週に何件も似た手術をしているし、それまでに何百件も執刀している。

特別な緊張や大きな心境の変化はない。

いくら日常であるといっても、医者は手術の何週間も前から準備をしている。

医者同士の会議で何度も画像を見て議論を重ね、十分にシミュレーションして手術に臨む。

そして手術中の医者が考えているのは、いかに最高のパフォーマンスを出すかということだ。

最高のパフォーマンスを出すためには、緊張するよりも、リラックスしつつも軽い興奮状態の方がいい。

リラックスが精神的な余裕を生むとともに、軽い興奮が集中力を高めてくれるのである。

リラックスするため、ほとんどの医者は手術中に話をするし、音楽をかけていることもある。

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病院の待ち時間はとにかく長い。

それはなぜか。

理由は2つある。

検査結果が出るのに時間がかかるから、

そして、病院が待ち時間を減らす努力をしていないからだ。



初診の患者さんが病院に行くと、患者さんが書いた問診票をもとに、病院側がカルテを作る。

名前、年齢、性別などといった基本情報から、

身長体重や過去の病気・アレルギーなど様々な情報を入力するため、

カルテの準備ができるまでには30分以上かかることが多い。

初診でなければ、検査をして待つこともあるだろう。

採血検査やレントゲン検査をし、

結果が出るのを待って診察を受けるというわけだ。

病院の規模にもよるが、たとえば採血検査であれば結果が出るまでに40~50分、

腫瘍マーカーなどの検査では2時間以上かかることとなる。

待ち時間を減らすために、病院側としてはどのような対策が可能だろうか。

例えば、待ち時間に問診票を書いてもらうことだ。

待ち時間の長さは変わらずとも、作業をしていれば体感時間は短くなる。

問診票に詳細な症状や今困っていることも書いてもらうようにすれば、診察がより効率化でき、一石二鳥となるだろう。

そのほかにも、診察状況と待ち時間が表示されるようにしたり、患者さんに呼び出し機を渡しておき、待ち時間を別の場所で過ごしてもらうようにしたりする方法も考えられる。

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病院を受診するタイミングとして、「平日の昼」を勧める。

その理由は3つある。

1つ目は、医者が寝ぼけていないからだ。

夜中に診察する医者は、朝からぶっ通しで働いていることが多い。

寝不足によって診察と治療のクオリティが下がるのは避けられないだろう。

2つ目は、値段が安いからだ。

時間外と休日、夜間には追加料金がかかることも知っておきたい。

3つ目は、検査がしっかり受けられるからだ。

夜間には放射線技師がおらず、CT検査やMRI検査を受けられないことも多い。

加えて、日中ではほかの科の医師に相談できることでも、夜間では難しくなる。

その結果、お昼に再度病院に行かなければならなくなるのだ。

こうした理由により、可能なら平日の昼に受診するのがいいだろう。

ただし、かつて経験したことのない痛みやつらさに襲われたり、交通事故に遭ったりした場合には、どんなときでもすぐに受診してほしい。

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医者は、勤務医と開業医に分けることができる。

勤務医は大病院に勤めている医者のこと、

開業医は小さな診療所で働く医者のことだ。

入院設備がある医療機関を病院と言う。

調査によると、勤務医の年収は1500万円ほど、

開業医は2500万円ほどだといえる。

この中から開業資金の返済をしたり設備投資をしたりしているものの、開業医のほうが年収は多い。

流行っている病院であれば、年収が勤務医の倍以上になることもあるようだ。

なお、大学病院の勤務医の給料は、一般の病院の半分以下であることが多い。

彼らは生活のためにアルバイトをしているという。

アルバイト代は病院や勤務形態によって様々だが、多忙な緊急外来では時給1万円ほどになる。

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男性医師のおよそ3~4割はナースと結婚しているという。

その理由の1つは、単純に職場で接する時間が長いため、恋愛関係が生まれやすいということだろう。

もう1つには、医者という仕事の特殊性がある。

医者の勤務形態は他の業界に比べるとかなり特殊だ。

ほとんど家に帰ってこられず、月の休みは1日だけ。

休日も夜も関係なく病院から呼び出しの電話があり、

旅行もほとんどできない。

そんな働き方を理解するのは、同じ業界の医師やナースなどでなければなかなか難しいだろう。

違う業界の女性と結婚したものの、仕事に対する価値観のずれで離婚してしまうカップルも多いそうだ。

ちなみに医療関係者以外だと、キャビンアテンダント、芸能関係、製薬会社MR、社長令嬢などと結婚している医師が多いらしい。

「医者の本音」
中山祐次郎 著
SBクリエイティブ

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