【第2回】脚本分析『カサブランカ』(1942)
◆アイコンについて
シーン構成
◆第1幕「リックの生活/イルザとの再会」(状況設定)
①:地球儀。ナレーション。第二次世界大戦のドイツ侵攻により、ヨーロッパの人々がアフリカ大陸へと向かうイメージ。
②:カサブランカ、大勢の人々が生活している。そこに警官たちがやってくる。不正を働いたであろう者たちが強制的に署に連行され、逃亡者は射殺される。
③:空を飛ぶ飛行機。見上げるカサブランカの人々。誰もが飛行機に乗り、ここから出ることを切望している。
④:空港。飛行機から降りてきたのは、ドイツのシュトラッサー少佐。署長のルノーらが出迎える。前日に起きた事件ついて話すシュトラッサーとルノー。ルノーは犯人をすでに見つけており、今夜リックの店で逮捕すると予告する。
⑤:夜、リックの店。店内のバーは大勢の客で賑わっている。それぞれのテーブルで、密かに出国についてやりとりする客。【setup】
⑥:バーの奥にある賭場。主人公のリックが座っている。ドイツ軍の関係者が賭場へ入店しようとするがリックは拒否する。
⑦:リックのもとにウーガーテがやってくる。ウーガーテはドイツ人が殺された事件に言及、リックは皮肉で返す。ウーガーテ、リックにドイツ軍発行の通行証を見せる。これがあると最優先で飛行機に乗れる、貴重なものだ。ウーガーテ、リックに預かるように言う。受け入れるリック。去ろうとするウーガーテに、リックは詰め寄って前日の事件の話を持ち出す。しらばっくれるウーガーテ、犯人を確信するリック。【inciting incident】
⑧:サムの演奏で盛り上がる店内。リック、通行証をピアノの天井裏に隠す。バーにやってくるフェラーリ。リックの店を買収したがっている。が、リックもサムもあっさり断る。お手上げのフェラーリ。
⑨:バーカウンター。やけ酒するイヴォンヌ。リックに執着があるようだ。リックは、イヴォンヌを外に連れ出して帰らせる。
⑩:屋外で話すルノーとリック。飛んでゆく飛行機を見つめるリック。
ルノー、カサブランカに来た心境や経緯を問うが、リックは全てジョークで返す。賭けに負けた店員がリックを頼ってやってくる。
⑪:店内。ルノー、リックに事件の犯人を今夜逮捕すると告知。金庫から負けのお金を取り出すリック。ルノーはリックに、大物地下運動家のラズロがやってくるが下手な真似はしないよう警告。ラズロは女が一緒で二人分の通行証を探しているようだ。リックは自分がラズロを助けると思うか尋ねると、ルノー「君は皮肉屋のようで人情にもろいからな」と、リックの過去の記録を引き出す。リックは内戦に参加したり武器を送ったりと、負ける側に加勢した過去が明かされる。【pinch①】
⑫:バーの店内。やってくるシュトラッサー少佐。歓迎するルノー。
⑬:賭場。ウーガーテに警官が声をかける。チップを換金するフリをして逃げ出そうとするウーガーテ、追う警官、響く銃撃音。ウーガーテ、助けをせがむが手を出さないリック。ウーガーテは捕まる。
⑭:シュトラッサーと同席することになるリック。シュトラッサーの質問によって、占領前のパリにいたことなどリックの過去が部分的に明かされる。ラズロの話題が上がると、政治に興味はないとリックは席をあとにする。
⑮:店にやってくるイルザとラズロ。驚くサム。組織の一員であろうバーグが席にやってきて指輪を見せて去る。その後、挨拶にやってくるルノー。イルザは、サムとリックのことを尋ねる。ルノーは、リックのこと絶賛する。さらにシュトラッサー少佐がやってくる。不快感を示すラズロ。翌朝に所長室に来るよう言い、去っていくシュトラッサーとルノー。
⑯:バーの演奏。ラズロはカウンターへ向かい、バーグと会話する。ウーガーテが逮捕されたことを知る。バーグはラズロを地下組織の会合に誘う。演奏が終わる。イルザはサムを連れてくるよう店員に伝える。ラズロのもとにまたルノーがやってきて、酒を注文し始める。
⑰:イルザのもとにやってくるサム、久々の再会。イルザは早速リックのことを尋ねるが、サムは嘘をついてかわそうとする。イルザとリックに再会してほしくないのだ。そんなサムにイルザは「時の過ぎゆくまま」をリクエスト。歌詞を聞き、思いにふけるイルザ。演奏を聴いたリック、サムに中止するよう言いに来る。そこで再会するリックとイルザ、見つめ合って無言。サム撤退。【1st turning point】
⑱:そこにルノーとラズロがやってくる。他人として振る舞うリックとイルザ。リックは未練がましい様子。夜も遅いとイルザとラズロは車に乗り、去っていく。煙草を吸いながらふたりをじっと見るルノー。
◆第2幕「回想/イルザとの対立/店の営業停止」(葛藤・対立)
⑱:深夜。閉店した店で酒を飲むリック。サムが帰らせようとするが、リックは女を待っていると居座る。サムはリックのために「時の過ぎゆくまま」を演奏する。リックはかつてのパリの生活を回想する。
⑲:回想。パリ、凱旋門。リックとイルザが仲睦まじくデートしている。ふたりの生活。ベタ惚れのリック、過去を明かさないイルザ。時間が経ち、イルザはかつての恋人が死んだことを告白。
⑳:回想続き。ドイツ軍のパリ侵攻が新聞とラジオで伝わってくる。
㉑:回想続き。店「オーロラ」。リックとイルザの間にはやや緊張がある。そこにサムの姿も。ドイツ軍の重砲が聞こえ、戦争を予感させる。ナチスがリックに賞金を懸けていることもあり、ふたりはパリから逃げようと約束する。戦争が恨めしいと泣くイルザ、キスするふたり。
㉒:回想続き。夜、大雨。リックは駅のホームで待っているが、イルザの姿が見当たらない。サムが持ってきた手紙に「一緒に行けない」と書かれている。リックとサムは汽車に乗り、パリを後にする。
㉓:回想終わり。店の扉が開きイルザがやってくる。イルザは話があるようだが、リックは勝手に去ったことをグチグチ言って相手にしない。涙を流して去るイルザ、机に突っ伏すリック。
【mid point】
㉔:翌朝、警察署にやってきたイルザとラズロ。シュトラッサーはふたりを出国させないと話すが、地下組織の指導者の名を言えば出国させてもいいと話す。が、言わないラズロ。シュトラッサーは、ウーガーテが死亡したことを伝える。動揺するラズロ、逃げるように出ていく。
㉕:フェラーリが経営する店「ブルー・パロット」。やってきたリックに、フェラーリはウーガーテが持っていた出国証の取引をもちかける。大金を匂わせるが話に乗らないリック、去っていく。
㉖:外の出店。布を見るイルザ、話しかけるリック、どんどん価格を安くしていく店員。リックはイルザに昨晩の用件を尋ねる。イルザは答えず、リックを過去の人だと突っぱねる。なぜ一緒に来なかったのか尋ねるリックに、イルザはパリで出会った時点ですでにラズロと結婚していた事実を明かして去る。
㉗:ブルー・パロットの店内。フェラーリは、イルザの分だけなら出国証を渡せると言うが、一緒でないとダメだと固持するイルザ。納得したラズロはフェラーリの申し出を断る。
㉘:リックの店。やってくるルノーとドイツ警察たち。ルノーは出国証を持っていないか尋ねるが、濁すリック。バーカウンターではイヴォンヌの連れたドイツ人の男と客がきっかけに喧嘩に発展、止めるリック。
㉙:ルノーはシュトラッサーと酒を飲む。自分は風任せだと語るルノー、ラズロを危険視しているシュトラッサー。
㉚:神妙な面持ちで来店するアニーナ。リックに、ビザを買うお金がなく出国できないと涙ながらに相談する。ルノーに身体を売らざるを得ない、と。自分で解決しろと冷たく一蹴するリック。
㉛:やってくるラズロとイルザ。リックはサムに「時のすぎゆくままに」を演奏させる。
㉜:賭場。リックは、ルーレットで賭けをしているヤンのもとにやってきて、賭けるべき数字を言う。マスターは従った数字を出し、ヤンは大当たりして大金を稼ぐ。アニーナはリックに涙して感謝、キスをする。
㉝:バーカウンター。リックは給仕やバーテンダーに立派だと祝福される。負けを認めるルノー。リックのもとに話があるとやってくるラズロ。
㉞:リックの部屋。ラズロはリックに出国証を渡してほしいと頼む。大金を出すと交渉するラズロだったが、リックは頑なに拒否。イルザに理由を問うように言う。
㉟:店内ではドイツ警察が軍歌を歌っている。ラズロ、合奏団にリクエストしてフランス国歌「ラ・マルセイエーズ」を演奏させる。ふたつの国歌が交じり合う。観客の大熱唱、最後はフランス国歌が残る。湧くフランス人たち。【pinch②】
㊱:ラズロを危険視したシュトラッサーの命令で、ルノーが店の営業停止を言い渡す。納得できないリック。シュトラッサーはイルザのもとにやってきて、脅しをかけて去っていく。【2nd turning point】
◆第3幕「イルザとの和解/リックの作戦/出国」(解決・変化)
㊲:夜、ラズロの家。ラズロはリックが出国証を渡さない理由はイルザにあると言われたと話す。イルザは何も答えられない。ラズロはイルザに愛を告げ、何も言わせずキスをする。ラズロ、会合へと向かう。イルザもひとり出ていく。
㊳:リックの部屋。灯りを点けるとイルザがいる。イルザはリックに出国証を譲ってほしいと交渉、突っぱねるリック。そんなリックにイルザは拳銃を突き付ける。「さあ撃ってくれ、死にたいよ」と近づくリック、イルザは撃てないと涙を流す。リックはイルザを抱きしめる。イルザは愛を告白する。【stand up】
㊴:リックとイルザの対話。イルザは結婚を隠していた理由は、身の安全のためだったと語る。リックはイルザを、ラズロには渡せないと語る。イルザはどうしていいかわからなくなり、リックに決めてほしいと言う。
㊵:ラズロと給仕はドイツ警察に追われ、店に逃げてくる。ラズロはリックがイルザを愛していることを、出会った時から気づいていたと言う。そして自分は構わないのでイルザだけでも逃がしてほしいと訴える。と、そこにやってくるドイツ警察。ラズロは逮捕されてしまう。
㊶:翌日、警察署。リックとルノー。リックは自分とイルザのために出国証を使うと語る。ラズロが出国証を買うタイミングで再逮捕する作戦を、ルノーに提案する。
㊷:ブルーパロット店内。フェラーリに出国する話を告げる。店員たちをみな、フェラーリの店で雇わせることにする。
㊸:リックの店。先にやってきたルノーは隠れる。その後ラズロとイルザが出国証を買いにやってくる。出てくるルノー。逮捕しようとすると後ろには拳銃をかまえたリック。脅されたルノーは飛行場に電話するフリをして、シュトラッサーに電話。違和感を感じたシュトラッサーは飛行場へと向かう。
㊹:飛行場。リックはラズロ夫妻を出国させると話す。驚くイルザ、リックはラズロと共に行くよう説得する。リックはラズロに出国証を手渡す。廻るプロペラ。リックとイルザは目配せ、別れを告げ去っていくイルザとラズロ。【climax】
㊺:飛び立つ飛行機。シュトラッサーがやってきて飛行を中止しようとする、リックは発砲する。シュトラッサー倒れる。遅れてやってくる警察たち。ルノーは嘘をつき、リックをかばう。
㊻:ヴィシー水を捨てるルノー。飛び去る飛行機。リックとルノーは肩を並べて宵闇の中へと消えていく。【ending】
分析点
◆「主人公」はどんな人か?
名前:リック・ブレイン(演:ハンフリー・ボガード)
年齢:40くらい
職業:酒場「カフェ・アメリカン」の店長
性格:冷静沈着でクール。皮肉屋。
好きなものorこと:イルザ、酒
嫌いなものorこと:ドイツ警察
憧れ性:内に秘めた正義感、いざという時弱者に味方してきた。
共感性:過去の恋愛に敗れた孤独感。
🤔とにかくクール。渋かっこいい。
🤔あまり本心を吐露することがない。
🤔ジョークが上手いキャラはなんとなく好きになる。周りをすかしている感じに観客自身も優越を感じるから?
📌余計なことを言わず、本心を出さない人間はクールに映る。
📌人を助ける主人公は魅力的に映る。「過去に人を助けた」的な情報も他人に語らせることで魅力になる。
📌ジョークのうまさ、大事。外すとダサい。
◆主人公が「何をしようとする」物語か?
リックが「過去の恋人・イルザを自分のものにしようとする」
🤔主人公の動機はこれ。
🤔結局は実現しない。
◆主人公の「葛藤」は?
「偶然手に入れた出国証でイルザとその恋人ラズロを出国させるか、イルザをラズロから奪って一緒になるか」
◆主人公にとっての「敵対者」はどんな人か?
名前:イルザ(演:イングリッド・バーグマン)
年齢:20後半くらい
職業:主婦(ラズロの妻)
性格:強い意志を持ち行動力がある。恋に情熱的。
好きなものorこと:リック、ラズロ
嫌いなものorこと:戦争
🤔正直あまり好きになれなかった。特にリックに銃を突きつけるところは、そこまでやる?と思った。
🤔ただこれはリックを愛しているが故の行動と言える。愛と憎悪が混ざり合った複雑な心情。
📌好きであるが故に傷つけようとすることもある。
◆主人公にとっての「協力者」はどんな人か?
名前:ルノー(演:クロード・レインズ)
年齢:40くらい
職業:フランス人の警官
性格:ちゃっかりした立ち回りをする現実主義者。利己的。
好きなものorこと:女、金、冗談
嫌いなものorこと:ドイツの酒
🤔出国証をだしに身体を売らせようとするかなり利己的なキャラ。
🤔味方でもあるし扱いによっては敵にもなりうる、ある種の緊張感をもたらすキャラ。
◆「きっかけとなる出来事(事件)」はどんなことか?
「⑦」・・・ウーガーテがリックに出国証を預ける。
→【inciting incident】ではその事件と対になる【central question】が明示される。
【central question】リックは手に入れた出国証を何のために使うか?
◆中間地点で起きる「葛藤・衝突」はどんなことか?
(何が主人公の気持ちを揺さぶっているか?)
「㉓」・・・深夜、イルザがやってくるがリックは突き放す。呆れて去っていくイルザ、どん底に落ち込むリック。
やけ酒をして回想するほど恋焦がれているイルザがやってくるが、自分を置いていなくなったことを強く当たる。イルザはイルザで「あなたがいると知ってたら来なかったわ」「尊敬の念を愛だと思ったの」などリックへの愛を否定するようなことを言う。
🤔イルザの一言ひとことがリックの気持ちを揺さぶる。
🤔これ修復無理では?というぐらい亀裂を深く入れている。
📌主人公をとにかく苦しめる。そういうセリフや展開はどんな主人公であっても作り出せる。
📌中間地点、グッと主人公の気持ちを下げる。これ以上無理だと思える敗北感を味わわせることがのちの飛躍に繋がる。
◆「クライマックスの直前」にはどんな出来事が起こるか?
「㊸」・・・リックは嘘をついてルノーを呼び出した後、ルノーに拳銃を向ける。
🤔一度はリックがラズロを逮捕するフリをする。「破るべき殻」と全く逆のことをしようとする。
◆主人公にとっての破るべき「殻」は何か?
・イルザ(過去の恋愛)と向き合い、正義のために彼女と別れることができるか?
🤔リックという魅力的な人物が描かれる⇒「殻」が何かが中間で判明⇒「殻」を最後に破る、という丁寧な展開をしている。
◆「クライマックス」にはどんな出来事が起こるか?
「㊹」・・・リックは、イルザとラズロを出国させる。自分は犠牲となり、とどまる決断をする。
🤔リックが殻を破る瞬間になっている。
🤔リック自身が出国するのか、留まるのかがギリギリまで分からない。⇒意外性のある転換をしている。
📌どんな選択をするのかクライマックスの瞬間まで分からないことが、観客の興味をそそらせる。
◆どんな「ラスト」を迎えるか?
「㊻」・・・飛び去る飛行機。リックはカサブランカにとどまる。ルノーとの友情が確かなものになる。
🤔ルノーは脅威としても描かれ続けていたので、最後にリックと友情が完成するシーンが感動的に見える。
📌脅威に見える敵が味方になる展開は感動をもたらす。
◆このストーリーを3文で言うとどうなるか?
カサブランカのバーを経営するリックは、偶然にも出国証を手に入れる。
過去に離れ離れになった恋人イルザと再会し、一度は衝突するも、互いに愛し合っていることを確かめ合う。
リックはイルザと祖国を想い、カサブランカに残ることを決断、イルザとラズロを出国させる。
◆主人公を襲った障害一覧
・急遽預かった出国証をどうするか?
⇒大金が提示されたり、元恋人から譲ってほしいと言われたりする。
・目の前に大好きだった恋人とその彼氏が現れる。
・アニーナに出国証のことで相談を受ける。
⇒身体を売るべきか、その相手は信頼できる人かと問われる。
・店の営業停止を言い渡される。
・イルザに拳銃を突き付けられる。
・出国直前にシュトラッサーが阻止しようとしてくる。
🤔主人公を悩ませることが次々と起きている。
📌主人公を常に悩ませ、課題とぶつからせて行動させる。
◆中心軌道は?
「Xは偶然にもAを手に入れる。過去にいざこざのあったYがXのもとにやってきてAを求める。XとYは衝突しながらもさらに関係を深める。XはAをYに渡し、自らを犠牲にYを救う。」
🤔主人公が正義のために犠牲になることで英雄へと成長する話(ヒーローズ・ジャーニー)と言える。
📌主人公をふたつの天秤に駆けて揺らし、結果正義のために決断させると英雄誕生の物語ができあがる。
魅力的だったもの・思ったこと
◆キャラクター
・ラズロ
イルザの恋人であり、ドイツ抵抗運動の指導者。
リーダーとしての素質があり、周りから慕われている。
リックとイルザの関係に気づきながらも嫉妬心を見せない。
🤔主人公として成立するぐらい魅力的に描かれている。
🤔ラズロ=ドイツ軍への抵抗心の象徴。だからこそリックはラズロを逃がそうとする。
📌恋人の相手役を簡単に悪役にしない。どちらも魅力的だからこそ、主人公も恋人も葛藤する。
・サム
リックのバーの黒人ピアニスト。
主にリックの愚痴の聞き役であったり、イルザとの仲介者としての役割。
性格が明るく陽気、表情豊か。
◆小道具
・出国証・・・今作の最重要アイテム。
🤔マクガフィンの役割を果たしている。
📌みんなこれを欲しがる、というものがあるとキャラクターの動機がはっきりして物語が分かりやすく進む。
・音楽「時の過ぎゆくままに」
リックとイルザの思い出の曲。この曲をきっかけにふたりは再会する。
もう過ぎてしまったあの時を思い起こさせる曲として、その刹那を演出する。
•シャンパングラス
不吉な時、不穏な予兆の時に倒される。中の液体がこぼれることで映像的にわかりやすい。
・ヴィシー水
最後にルノーがゴミ箱へ捨てる。ヴィシー政権=ナチスの傀儡政権だとして、ルノーのナチスへの不満を表現するために使われる。
◆シーン
「①~⑥」・・・地球儀~リックの店奥の賭場。
🤔最初は地球儀で世界情勢⇒アフリカ大陸⇒モロッコ⇒カサブランカの街の様子⇒リックの店⇒その最奥の賭場、という少しずつ奥へと進んでいく見せ方が上手いと思った。状況が理解しやすく入り込みやすい。
📌序盤にはある程度の丁寧さ、特に複雑な情勢が絡むなら分かりやすさは必要。
「㉟」・・・ふたつの国の曲が混ざり合い、「ラ・マルセイエーズ」が勝利するシーン。これまで抑圧されていたフランス人、ドイツ寄りだったイヴォンヌも涙を流してフランス国家を歌い上げる。
🤔結局ここが一番好き。
🤔このシーンでドイツ警察が怒り、店は営業停止になる。物語がクライマックスへと加速する。
📌全員が全力、感情をあらわにした対立は熱い。
📌物語にスピードを与えるには、大きな対立⇒結果⇒転換が必要。
◆セリフ
🤔短いやりとりだがリックとイヴォンヌの関係性が見える。
🤔リックの刹那的な価値観が垣間見える。
🤔名セリフと言われている。映画内で4回ほどリックが言う。
◆ざっくり所感
「別れ」をテーマにした哀愁のある映画だと思って再鑑賞したら、意外にも笑えるやりとりが多い。序盤が若干長い印象を受けるが、それでも飽きないのはそのユーモラスな会話のおかげだと思った。主人公リックがクールにふざけ倒すので、リックが会話に混ざれば大体面白い。
再生時間を見てみると、ヒロインのイルザが初登場するまでに25分かかっていてかなり驚いた。めちゃくちゃ遅い。
リックとラズロのふたりはとても魅力的だが、イルザはわがままで感情的なのであまり魅力的に見えなかった。
全体としてグッときたのは、
・フラれる、警察から圧をかけられる、周りから頼られまくる・・、と散々なリックが自分の最も欲しかったものに近づくが、最後には正義感のために手放してしまうこと。
・互いに愛し合っているのに事情が事情で結ばれないこと。
・戦時下の中でも逞しく反抗し続ける人々の姿。
◆読んだ本
特に「カサブランカ」の制作秘話が面白かった。
脚本は、撮影日の朝に少しずつ渡されるほど完成が遅かったらしい。
主演の二人も映画がここまで上手くいくとは思ってなかったようで、撮影時のモチベーションはかなり低かったらしい。
今から15年前に「カサブランカ」の続編を作る話があった。
『カサブランカ』続編製作へ 30年前に執筆されていた脚本を映画化
以上。