私鉄No.1の東京メトロが上場承認。高い収益率を実現できている理由は?今後の成長性は?
こんにちわ。『誰でも決算調査団』団長です。
本日は、2024年09月20日に東証プライム市場へ上場承認された、東京地下鉄株式会社(通称:東京メトロ。以下東京メトロで統一)を紹介します。
大型の上場ということもあってX界隈でも盛り上がってますね。
得かどうかはさておき、浪漫があります笑
個人的には「地下鉄博物館」無料招待券が思い出あってグッときます。
行くと電車の下敷きもらえるんですけど、友達でめちゃくちゃ持ってるやついました。
細かい優待内容はこちらをご参照ください。
→ 2024年9月20日株主優待制度の導入に関するお知らせ
この記事では、東京メトロの事業内容、収益性や強みを確認しながら、今後の成長戦略のポイントを考察していきます。
一緒に考えながら見ていきましょう!
私鉄No.1東京メトロの超大型上場
ご存じ東京メトロは東京都区部を中心に地下鉄事業を行う企業です。
現在9路線を運営してます。
最近の若い人はご存じないかもしれませんが、元々は「東京メトロ」ではなく、「営団地下鉄(帝都高速度交通営団)」と呼ばれていました。
当時の母体は"日本政府"と"東京都"。
その後2004年に民営化、東京メトロとなります。
民営化といっても日本政府と東京都が持ってますので、いわゆる完全民営化ではありません。また、東京メトロの歴史は正確には営団地下鉄の前から始まってますので、詳しく知りたい方は別途検索してください。
以下公募・売出の概要です。
上場するときに新株発行して資金調達するパターンが多いのですが、今回は既存株主の売出だけです。
現在株主は2人しかいませんので、それぞれ半分ずつ持分を売り出します。
ちなみに「財務大臣」名義は政府保有株の意味です。
他にもNTTやJT、日本郵政など民営化した企業の株主名簿に登場します。
2024年09月20日に東証プライム市場への上場が承認され、同年10月23日に上場予定。想定時価総額は6,391億円です。
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本記事の続き↓
東京メトロの事業構成と足元の収益
企業分析する際にはまず事業の大枠をつかむことが重要です。
東京メトロのPLを見てましょう。
運輸業、不動産事業、流通・広告事業、その他の4つのセグメントを確認できます。
営業収益は売上高のことです。
全体3,892億円のうち3,541億円が運輸業の売上でおよそ91%。そのうち旅客運輸収入が3,240億円と運輸業の大半で83%。私たちが鉄道に乗る収入が東京メトロの売上の83%を占めてます。
営業利益は763億円。営業利益率は19.6%!!
店舗などの固定資産を持つ必要があるサービス業やインフラビジネスではかなり高い利益率です。
もう1つポイントとしては、売上高の増加額と増加率。
旅客運輸収入が15%も伸びてます。15%電車に乗る人が増えたということです。結構驚きですね。
「インバウンドかな?コロナの反動かな?」
とか、分析業務では自分で仮説を持ちながら調べていくことが大事です。
明確な言及ではないですが、まあコロナの反動が大きそうですね。
運輸業の売上440億円増加して、営業利益も485億円増加してます。
ビジネスとして電車の本数(≒固定費)はほぼ変わらないので、
乗客が増えた分はほぼそのまま利益に直結することがわかります。
「乗降客数」は今後の成長を占う重要なKPIですね。
※最初はこのくらいザックリ把握する程度でOKです
不動産事業と流通・広告事業の具体的な内容は以下です。
不動産事業として「メトロシティ」ブランドのオフィスビルの開発してたり、マークシティ、ヒカリエ、スクランブルスクエア、などの大規模ビルは他社と共同開発してたりしますね。他にもホテルや「メトロステージ」ブランドで住宅もやてます。
流通事業は、駅直結の商業施設「Esola池袋」や駅構内の「Echika」などの商業施設を展開しています。他にもPASMO機能を備えたクレジットカード「To Me CARD」の発行など。
広告事業は駅構内のサイネージや電車の中吊りなどですね。
業績推移
次に時系列で見ていきます。
現在の売上は過去と比較してどういう位置にあるのか、利益率が高いのは昔からなのか?この辺が確認ポイントですね。
コロナショックがいわゆる2020年2月末頃なので、2021年2022年はダイレクトに影響を受けて赤字転落。
足元3,892億円の売上でもコロナ前には届いておりません。
2024年9月20日に2025/3の業績予想を出してますが、まだコロナ前には届きません。リモートがすっかり定着している企業も多いのでそりゃそうですね。
ただ営業利益率は21.6%を目指す形に。コロナ前まで戻ってきてますね。
鉄道系の会社のビジネスモデルは売上の変動に関わらず、電車を走らせて、インフラを維持する必要があります。そのため、理論上は固定費を超えたらぐんぐんと利益率が上がっていく改善していくモデルです。
例えば、固定費500、変動費0のビジネスがあった場合、
売上600のときの利益は100、利益率は16.7%。
売上1,000のときの利益は500、利益率は50.0%になります。
これはわかりやすいように、めちゃくちゃ極端にデフォルメしてますが、こういうイメージですね。
2019年は売上4,348億円で営業利益985億円
2025年は売上4,075億円で営業利益880億円
もし2019年と同じ規模の売上、すなわち2025年で+300億円の売上があがった場合、営業利益はきっと985億円以上になることは感覚としても理解できると思います。
コロナ禍でしっかり固定費削減や効率化・生産性向上をはかったきたことが見て取れます。
同業他社と比較してどうなのか?
主に東京周辺で鉄道事業を営む企業を集めて比較しました。
JR東日本、JR東海の強さは圧倒的。JR東海は新幹線が大きいですね。単価が全然違います。単価が高いと当然営業利益も莫大ですね。
東京メトロ、JRを除く私鉄群では、鉄道事業が最も大きく、輸送人員も2位の東急を倍以上引き離し圧倒的。
各社鉄道以外の事業比率が多い中で、ほぼ鉄道一本足で稼いでいるのが特徴的です。多角化していない分効率的なので利益率が高いですね。素晴らしい。
また、以下のデータは1日1km当たりの平均収入をグラフ化したもの。
東京メトロは都心部を走ってるので、短い距離の輸送でもお金を払ってもらえるということがわかります。
事業効率が良いので高い利益率を生み出せているんですね。
今後の成長性は?
ここまで東京メトロの事業の特徴や強みが見えてきました。
今回IPOするということは、ここから更に企業価値を高めていく必要があります。そうでなければ誰も株は買いません。
今後自動運転の普及などが進みますが、コスト削減や効率化にも限界があるため、売上高を上げないとなりません。
客数を更に増やす ≒ 路線を増やす、利用者を増やす
客単価を上げる ≒ 切符の単価を上げる
鉄道事業の売上を増やそうと思うと、主に上記の2つのやり方がありますが、路線を増やすのは莫大な費用がかかりますので簡単ではありません。
既存路線中心に利用者を増やすには、都内の人口が増加するか、インバウンドなどで訪日客が増加するかのパターンしかありません。完全に外的要因でアンコントローラブルであり、それに頼るのは戦略とは言えませんね。
また、客単価を上げるのも、ある意味公共性のあるビジネスでもあるので、こちらもそう簡単ではありません。
そのため、鉄道事業一本足の事業構造だけで、今後の成長戦略を描くのは正直厳しいでしょう。
ポイントは、鉄道事業以外多角化。
これまでは国と東京都が株主であったことから、なかなかその他ビジネスへの進出に足枷があったのかもしれませんが、完全民営化に向けて、いよいよ多角化する方向に舵を切っていくことになるのかなと考えられます。
東京メトロは成長戦略をどう描いているか?
現行の中期経営計画は2025年3月期がGOALです。
また、プライム市場への直接上場となるため、グロース市場に上場する際に公開する「事業計画及び成長可能性に関する説明事項」は出ないと思われます。ということで、上場日前後では特に何か将来に関する新しい言及はないと思われます。ですので、現行の中期経営計画を見て成長性を見ていきましょう。
基本方針と重点戦略です。
直接収益向上に関係してきそうなのは、④⑥⑦⑧になりそうですね。
まず、収益の大半を占める乗客輸送の部分。既に新線建設は決定してます。
どちらも便利ですが、特に豊洲・住吉間は熱いですね。
江東区の縦動線って基本的にバスしかなくてめちゃくちゃ不便なんです。
そのまま半蔵門性乗り換えで錦糸町も近くなりますし、住吉・東陽町で都心と千葉を結ぶ都営新宿線や東西線にも乗り換えすぐです。
豊洲に来るお客さんもかなり増えるでしょうね。
現状の年間輸送人員が23億8,473万人。
2路線延線後は45.7万人/日増えるので年間1億6,680万人程度増加。
単純計算で約7%は売上伸びそうです。現在の売上ベースで約250億円増加。
そして、今後の成長において重要な鉄道事業以外の取り組みを確認しましょう。
この辺はまあやらないわけにはいかないのでやっていきましょうという感じなのですが、これら施策によって「よし、じゃあメトロ乗るか」にはなかなかならないので難しいですね。JR東日本がやっている『ポケモンスタンプラリー』とかのアプローチの方がよっぽど効きそう。あとは『ビックカメラSuicaカード』はめちゃくちゃ普及しているので、金融事業的な方面力をいれるとか。
いずれにせよこれは成長戦略のメインではないでしょう。
基本的にこれが旅客輸送以外のビジネスの肝でしょう。
不動産開発を重点的にやっていくわけです。
ページ下段に小さくしれっと書かれていますが、REIT組成ということで、東京メトロは潤沢な不動産は保有しておりませんが、現状あるいくつかの保有不動産を資金化して、新規投資していくぞというメッセージですね。
今後はこの辺の具体的な話が出てくるでしょう。
次回の新中期経営計画で新しいアプローチが出てくるか?
巨大企業で社会インフラですので、完全民営化となり、全方位色々手を広げていくことになるでしょう。
現在の中期経営計画には描かれてませんが、細かい取り組みは沢山あります。
例えば自前でプログラミング教室を15店舗運営したり、
他にもスタートアップとの協業を模索したりも。
CVC設立とかもありそうですね。
※CVC:コーポレート・ベンチャー・キャピタル
事業会社がファンドを作ってベンチャー記号に出資や支援を行うこと。
出資や支援を通じて、本業の事業へのシナジーを創出する狙いがある。
沿線開発みたいな文脈でこういったソフト面を拡充してくる可能性はあります。こうして経済圏が広がるとポイント活用とか、提携とか、新しい収益機会が生まれてきますし、JRや他の私鉄各社がやってますので追従するのが自然でしょう。
これまで力を入れてこなかった分、伸び代はあるかもしれませんが、自前だとやっぱりドライブかからないので、外部の事業者との提携を加速したり、M&Aするのがよさそうです。
ただこのあたりって各社やってますが、鉄道事業があまりに巨大すぎて、収益的に大きく貢献するものでありません。中長期的にコツコツ積み上げていく必要があります。
あとは、都営地下鉄との一元化の話は昔から出ており、合併や完全買収ではなくても、一部株式取得も含めてより関係値を強める可能性はあります。
株価は割安なのか?
結論、株価がどうなるかはわかりません笑
様々な要因が絡むので一概には言えないのですが、PERやPBRを見るとまだ伸びしろはありそうです。
自分は時価総額からネットキャッシュを引いた金額が営業利益の何倍かという指標を簡易的に見ることが多いのですが、IPOによりアグレッシブな戦略が取れるようになると考えると、こちらもまだ伸びしろありそうです。
まとめ
ここまで、東京メトロの各種資料から、事業内容や強み、今後の成長可能性などを考察しました。
今後IPOして成長が求められる以上、これまでとは違った動きが産まれてくるのは間違いないです。上場したことで資金調達の方法も幅が広がります。
どんな伸びしろを見せてくれるのか、めちゃくちゃ楽しみですね。
引き続き注目していきましょう!
最後に、東京メトロさんもNoteやっていたので紹介↓
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