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傑作絵画:レオナルド・ダ・ヴィンチ『最後の晩餐』の謎と傑作である理由


最高傑作である理由


レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』が傑作とされる理由はいくつかあります。

  1. 構図と空間の使い方: ダ・ヴィンチは、視覚的な深さを生み出すために透視図法を巧みに使用しました。作品の中央にキリストを配置し、周囲の使徒たちが彼に向かって集まる構図は、観る者の視線を自然に中心に引き寄せます。

  2. 感情の表現: 各使徒の表情やジェスチャーは、キリストの「裏切り者がいる」という言葉に対する反応を示しており、個々の感情が豊かに表現されています。このような心理的な深みは、作品に対する感情的な共鳴を生み出します。

  3. 色彩と光の使い方: ダ・ヴィンチは色彩と光の効果を巧みに利用し、人物の立体感や空間の奥行きを強調しています。特に、光と影のコントラストが人物の表情を際立たせています。

  4. 宗教的・文化的意義: 『最後の晩餐』はキリスト教の重要なテーマを扱っており、宗教的な背景が作品に深い意味を与えています。また、ルネサンス期の人文主義的な思想が反映されており、芸術と科学の融合を象徴しています。

  5. 技術的革新: ダ・ヴィンチは、当時の技術を超えた新しい技法を用いており、特にフレスコ画の技術において革新をもたらしました。彼の技術的な試みは、後の芸術家たちに大きな影響を与えました。

これらの要素が組み合わさることで、『最後の晩餐』は単なる絵画を超え、芸術史における重要な作品として位置づけられています。

@Public Domain

『最後の晩餐』の謎


レオナルド・ダ・ヴィンチの**『最後の晩餐』**(The Last Supper)は、ルネサンス期の最高傑作のひとつであり、多くの謎や象徴に満ちた作品です。1495年から1498年の間に描かれ、ミラノのサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院の食堂の壁にあります。以下は、この絵画にまつわる重要な謎や象徴、そしてその解釈について詳しく説明します。

  1. 構図と構造の謎
    ダ・ヴィンチは、この作品で画期的な技術と独特の構図を採用しました。絵画は、イエスが十二使徒と最後の晩餐を共にする場面を描いています。重要な特徴として、すべての登場人物が同じテーブルの一側に並び、視聴者と向き合うように配置されている点です。これは従来の描き方とは異なり、心理的緊張感や劇的な効果を強調しています。
    また、絵の奥行き感を出すために、一視点透視図法(線遠近法)を駆使し、部屋の奥行きが正確に表現されています。この技法によって、視線が自然に中央のイエスに引きつけられるようになっています。

  2. イエスと十二使徒の配置と表現の謎
    『最後の晩餐』でダ・ヴィンチは、各使徒が驚き、動揺、疑念などの異なる感情を示す瞬間を捉えています。イエスが「あなた方のうちの一人が私を裏切る」と言った瞬間が描かれており、それぞれの反応が非常に個性的で、感情の変化が表現されています。
    特に有名なのが、イエスの右手側に座るユダの描写です。ユダは伝統的に陰鬱で悪意を持つように描かれることが多いですが、ダ・ヴィンチの描き方では、他の使徒と同様に普通の人間として描かれており、彼の心の葛藤や罪悪感が伝わってきます。ユダの手は袋(おそらく銀貨の入った袋)に触れ、彼の裏切りを暗示していますが、彼は他の使徒の中に自然に溶け込んでいます。

  3. イエスの三角形のポーズと象徴
    イエスの身体の構図は逆三角形を形成しており、安定感や調和、神聖さを象徴すると考えられています。彼の手はテーブルの上に広げられ、穏やかにパンとワインに触れており、これは後にキリスト教の聖体拝領(エウカリスティア)として儀式化される聖餐の予兆です。
    この三角形のポーズや手の位置には、トリニティ(三位一体)の象徴も見られ、神と人間の結びつきを表現しているという解釈もあります。

  4. 「マグダラのマリア」説とその謎
    『最後の晩餐』に関する最も有名な謎のひとつは、イエスの右側に座る人物がマグダラのマリアであるという説です。この説は、ダ・ヴィンチが伝統的な十二使徒の描写を破り、女性の姿を絵に含めたと主張するもので、特にダン・ブラウンの小説『ダ・ヴィンチ・コード』で有名になりました。
    しかし、多くの美術史家は、この人物はあくまで使徒ヨハネであると主張しています。ヨハネは若く、美しい容貌で描かれることが多く、女性的に見えることがあるため、混乱が生じているとされています。

  5. 絵画の劣化と修復に関する謎
    『最後の晩餐』は、時間の経過とともに深刻な損傷を受けています。ダ・ヴィンチは実験的な技法を使用し、フレスコ画に油絵の技法を組み合わせたため、湿気などの環境的要因で劣化が早く進行しました。これにより、長年にわたり複数回の修復が行われましたが、その過程でオリジナルの絵画がどれだけ残っているかについては疑問が残ります。

  6. 数秘術的な解釈とシンボリズム
    ダ・ヴィンチの作品には、数秘術的な要素や象徴が埋め込まれているとする説もあります。たとえば、イエスを中心にして左右に6人ずつ使徒が配置されていることや、グループが三人一組で区切られている点は、三位一体や聖なる数「12」の象徴と関連していると解釈されることがあります。
    まとめ
    レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』は、技術的な革新だけでなく、多くの謎や象徴が詰め込まれた作品です。ユダの描写、イエスのポーズ、そしてヨハネまたはマグダラのマリアにまつわる議論など、時代を超えて人々を魅了し、議論の対象となり続けています。この絵画は、宗教的な意味合いだけでなく、人間の感情や心理を見事に捉えた芸術作品としての価値も非常に高いです。


ハルビンの聖ソフィア大聖堂に見られる『最後の晩餐』のレプリカ

~作品の紹介~


レオナルド・ダ・ヴィンチ『最後の晩餐』
Leonardo da Vinci 『L'Ultima Cena』

「ヨハネによる福音書」にあるイエス・キリストの最後の晩餐を描いた作品である。

キリスト教の新約聖書のうちマタイによる福音書第26章やヨハネによる福音書第13章等に記されているイエス・キリストと12使徒による最後の晩餐を題材としたもので、「12使徒の中の一人が私を裏切る」とキリストが予言した時の情景が描かれている。

イエスの右隣に座っている女性のような人物はヨハネ。女性のようにみえるため「ダヴィンチ・コード」では「マグダラのマリア」とされた。

その左下にいる肌の黒い人物が、裏切り者とされるイスカリオテのユダ。右手にはイエスを裏切った代金である銀貨30枚が入った袋が握られている。

イエスのこめかみに消失点がある遠近法「一点透視図法」と正三角形のキリストにより、視点がキリストに集まる。
輪郭を描かない「スフマート技法」、遠いものを青白く描く「空気遠近法」、解剖学に基づいたリアルな人体表現など、ルネサンスの技法を駆使して描かれた。
ダヴィンチの作品は完成品がほとんど遺されていない中、ダヴィンチの珍しい完成した作品。

謎とダヴィンチの技法がちりばめられたキリスト教絵画の傑作である。

絵画の題名 最後の晩餐
絵画の作者 レオナルド・ダ・ヴィンチ(イタリア)
美術様式 盛期ルネサンス
絵画の制作年 1495〜1498年頃
絵画の画材 油彩、テンペラ・壁画
絵画の寸法 420 cm × 910 cm
絵画の所蔵 サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会(イタリア、ミラノ)



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