セブンスター
わかってる。どれだけ手を伸ばしても届かないことも。私になんて振り向いてもらえないことも。
***
「あ!先輩!お疲れ様です!」
「おぉ、おつかれさまー!」
今日もいつもの場所にあなたを見つけた。
「ちょっと先輩、またたばこ吸ってたんですか?」
「なんだよ。だめか?」
私が咎めるような視線を向けても、気にせず胸ポケットから新品のセブンスターの箱を取り出す。
「体に悪いし、やめた方がいいですよ」
「そうだなぁ。彼女ができたらやめようかな。」
しゃがれた声で、彼は笑った。
その彼女、私じゃだめですか―。
そんなこと言える勇気は、残念ながらどこにも持ち合わせていない。
***
「私も吸っちゃおうかなぁ〜」
そう言って私は、綺麗に並んだうちの1本を抜いて咥えてみせた。
「子供はだめ。ほら戻して。」
「私だって子供じゃないですよ〜!」
背伸びぐらいさせてよ。そうしないと届かないの。あなた色になりたいの。あなたの悪気ない優しさが、私の胸に刺さった。
そんな優しいところも好き。そんなことを思う自分を悔やんだ。
***
ねぇ、なんでたばこなの?
手持ち無沙汰だから?
それなら私がその手を握るのに。
口が寂しいから?
それなら私が口づけするのに。
たばこじゃなくて、私があなたを蝕むのに。
***
本当はわかってる。あなたと私の間には埋められない差があることも。どれだけ背伸びしても届く距離にいないことも。
あなたの求める人が、私じゃないことも。
でも邪魔しないから。だからもう少し、追いかけさせてね。
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