花なきもののつける実

 スパコンみたいな大きな装置がぎちぎちゴンゴン音をさせ、やがてしずしずと運び出してくる部品は無花果のように小さく、ピカリと光る。
「小さなものほど手間がかかる」と、今秋、早期退職を選んだ職人は静かに笑った。

 カラクリを覚えるのにどれくらいかかるのだろう。わたしは無花果を作れるだろうか。

 ひとの作るものは無花果。私はここよと名乗る花を咲かすことは滅多とない。職人以外の世界は、残す実のほんとうの名を知らない。

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