
ワークショップ
娘が5人で一組のワークショップに参加してもいいかと訊いてきた。おおよそ半年かかる。私は初め難色を示したが、結局「後悔することのないよう頑張れ」とエールを送った……のが二日前。
夜勤明けでぼうっとしながら朝食の支度をしていると、起きてきた娘が「この前のアレなくなったから」と言う。ウチがOKでも他の4人に"ウチの事情"をごり押しして口説いてはならぬと言っていたので、単にメンバーが揃わなかったのだろうと思った。
「残念だったね」
「うーん、5人揃ったんだけど○○から断られたから」
――どうにも歯切れの悪い口調の続きはこう。
○○から「××がダメっぽいんだけど貴女はどう?」と誘われた。ウチは紆余曲折の後OKが出て「これで集まったね!」と娘本人は喜んでいたという。ワークショップに参加するには教師の前で人数と意思確認をして申し込む手順だったが、何故か放課後メンバーの1人から「行ってきた」と報告。全員で行くのではなかったのか? といぶかしげにする娘に
「あのね、××がイイって言い出したから、ごめん」
娘は5人のなかの補欠だったらしい。レギュラーが出られるからキミはいい、と。 誘ってくれたリーダー格の子も土壇場で入れ替わった子も、その場に姿はなかったという。
「うん、まあ、人数合わせだったのかな」
ぼそぼそと話す娘。6人全員で話し合おうと言わなかったのか? と静かに訊くと「先生に意思表明する前にみんなで話し合って、△ちゃんは遠慮してもらおうと決めたからと言われて」と。
笑うこともなく泣くこともなく、目の前のお味噌汁の椀を斜めに傾け、少し顔の隠れた娘。
「最初からいっそ言ってくれてたら、――も、しなかったんだけどね」
聞こえなかった部分に胸がずんと痛んだ。何を言おうか迷うと、私はいつも調子はずれなもの言いになる。この時も。
「うーん。子どもというのは困ったもんだね」
「子どもですから」
子どもだからといって、と言いかけて。『あのこはいらない』と言われて最後に残る一人の花いちもんめが鮮やかによぎった。
『わたしも入れて』
泣いて地団太を踏んで悔しがる娘に、何故育ててやれなかったのだろう。
庭に続くガラス戸を開き娘は小さく猫を呼んだ。雨が降る前の熱気が寄せてくる。梅雨冷の昨日までが嘘のように。
今夏、娘は15になる。
※2014/05/11 2:49改行を修正 【備忘】Shift+Enter