TRAINING FOR STAIRCASE
前回のTRAINING FOR FRONT UPに引き続きまして、今回はフロントアップの先にあるテクニック、ステアケースです。
林道ツーリングやクロスカントリーのライダーだと丸太を越える事はあるかと思いますが、膝上以上の高さのある岩を越えるといったシチュエーションはあまりないかなと。一方、ハードエンデューロライダーだとヒルクライムと同じ位、ステアケースは特に練習する項目だと思います。何故ならハードエンデューロだと誰でも走れる場所を早く走れるという事よりも、ヒルクライムやステアケースといった難所を上手く走れるという事が重要だからです。その難所が越えられなければそこでお終いですしね。
とはいえ、ステアケースをやるにはまずフロントアップがキチンと身に付いていないと出来ません。TRAINING FOR STAIRCASEの内容はスタンディングでのフロントアップが出来る事を前提として書きますので、勢い任せで何とか越えているという人は前回のTRAINING FOR FRONT UPの記事を読んで頂き、練習を重ねる事で基礎の部分を覚えてから挑戦して貰えたらと思います。前回の記事はこちらからどうぞ。(TRAINING FOR ~シリーズは有料記事となります)
内容
・フロントタイヤを狙った位置に当てる練習
・カラダを伸び上げる練習
・1度吹かしで越える
・2度吹かしで越える
・助走をつけずに越える
・フロントタイヤを乗せた状態から越える
・2連ステアを越える
・フロントタイヤを当てないで越える
・(番外編)敢えてリアを残してから越える
・(番外編)パワープレイで越える
フロントタイヤを狙った位置に当てる練習
ステアケースをやるにはまずステアケースに対してキチンと狙った位置にフロントタイヤを当てられる事が必須となります。フロントタイヤを当てる事でフロントサスが縮まり、サスが反発して伸びる事でバイク自体が前方向への移動から斜め上方向への移動に変わります。その際、バイクの動きを邪魔しないようにライダー自身も伸び上がるのが重要です(カラダを伸び上げる練習は後ほど)
ダメな例としては、フロントを当てられずリアタイヤからぶち当てるやり方をしている場合。バイク自体が横方向への移動のままで斜め上方向への動きになっていないので越えられません。仮にスピードがあってカラダ自体が前に行っていたら低ければ何とか越えられる事があるかもしれませんが、衝撃が大きく前転モーションでライダーが吹っ飛ぶ可能性があるし、スピードが無くカラダが後ろに残っていたらリアが越えられず引っかかります。初心者でシッティングのままやろうとしているなら当たった瞬間にシートで跳ね上げられて怪我する元なのでやらないように…。
基礎となるフロントアップが習得出来ていない(アクセルで上げている、リアブレーキが踏めない、姿勢が悪い)と、正確な高さに上げて当てたり、バイクのコントロールが出来ませんので、まずはクラッチでフワッと上げて、リアブレーキを踏めるようになってからステアの練習をしましょう。
【練習方法】
最初にフロントタイヤを狙った位置に当てられるように練習をします。20cm位の丸太やブロックを使い、スタンディングでゆっくりと歩く程度の速さで走ってきて、手前でフロントアップをしてフロントタイヤを当てたらリアブレーキを踏んで「ステアの角で止める」という練習をします。これは正確な高さに当てるコントロールを身に付くようになる為と、その後の2度吹かしの為の練習も兼ねていますので当てたら越えるのではなく必ず止まってください。越える為の練習ではないので、何となく当てて何となく越えてしまっていたら練習になりません。1回1回丁寧に当てる位置を調整して感覚を掴んでいきましょう。
あと、当てて止めた際にすぐに足を着くのではなく、一瞬でも良いのでそのままスタンディングスティル状態がキープ出来るようになると尚良いです。最初は低めで安全な高さから始めて徐々に高さを上げていくようにしましょう。高さを求めるよりもまず正確さが第一です。
下の動画では停めた後にもう1度吹かす、2度吹かしを行っていますが、まずはキチンと当てて停める練習をしましょう。
カラダを伸び上げる練習
次に大事なポイントであるカラダの伸び上がりについてです。先ほどの練習で正確にフロントタイヤを当てられるようになったとしても、ライダー自身が何もしていないとバイク自体が越えようとする動きを邪魔してしまい、後ろに体重が残る事でリアも残ってしまいステアを越える事が出来ません。なので、フロントタイヤを当ててフロントサスが縮み、「反発して伸びる時に合わせてカラダも伸び上がる動きをする」とバイクと一緒に移動する事が出来ます。
では、その伸び上がる動きを練習しますが、いきなりステアを越えるのは先程のフロントを正確に当てるのと合わさって難しいと思いますので、まずはTRAINING FOR FRONT UPの後半に挙げた応用テクニックのバニーホップの所の、キッカケを使ったジャンプの練習をしてみましょう。
【練習方法】
内容としては、先程と同じ位の高さの丸太やブロックなどを使い、進入するスピードも歩く程度の速さで行います。丸太やブロックにフロントタイヤが当たる手前でクラッチで溜めておいて膝を入れ、フロントタイヤが当たると同時にクラッチを繋ぎカラダを伸び上がらせます。リアタイヤが当たってポンと跳ねるのでバイクの動きを邪魔しないように膝を曲げて抜重するとフワリと浮く事が出来ます。キッカケを使ったサスの反発と抜重を利用したジャンプです。
下の動画では停まった状態から行っておりますが、速度任せで飛ぶのではなく、クラッチで溜めて伸び上がる時に繋ぐ事でサスが縮まり、その反発を利用しているのが分かるかと思います。リアタイヤが当たった際には抜重するのもフワッと飛ぶためのポイントです。
上手くジャンプ出来ない場合は伸び上がりや抜重が出来ていないという事になります。また、伸び上がるタイミングが早過ぎて伸び切っていたり、伸び上がる方向が間違っているという可能性もあります。カラダが伸び上がるという事は同時にステップを踏んで地面に押しつけているという事=つまり加重している状態です。縮んだサスペンションが戻ろうとする反発を活かす為にもしっかりと押し付けるというのがポイントで「下に踏み込む」というのが大事です。フロントアップだと膝を前に入れてフロントサスを縮めるのと、戻る時に前に押し出すような感じで前後の体重移動とピッチングを活かす動きでしたが、ステアでの伸び上がりは上下の体重移動とリアサスを縮めて反発を引き出すという部分が違います。
リアタイヤと丸太が当たった反発で飛ぶのだろうと、リアをぶち当てようと前に蹴り出すのは間違いです。前に蹴り出すとカラダは反対側、後ろに伸びるのでカラダ自体が浮きません。バイクとカラダの動く向きがバラバラで遅れますし、リアサスの反発が地面を押さないのでリアタイヤも浮きません。
正しくは、カラダが伸び上がってバイクと一緒に斜め上に移動した結果リアタイヤも浮いて、浮いた状態で丸太にリアが当たった反発が斜め上の動きを水平方向へと返す、その際その動きを邪魔しないように膝を曲げて抜重するというイメージです。カラダが真っすぐに伸び上がるとバイクの「ハンドルバーはお腹の辺り」に来ます。その後、リアタイヤが当たって抜重する時はバイクは水平になろうとするので腕は伸びてハンドルバーは遠くにあります。これはバイクの動くのに合わせて邪魔しないような姿勢を取った結果そうなるのであり、無理やり引き寄せたりしてはいけません。
ちなみにボディーアクションですが、膝を曲げてカラダが沈み込ませる最中は加重されておらずむしろ抜重されています。カラダが一番下がった状態になった時に少し加重され、そこから伸び上がる時が一番加重されてサスが縮みますので「伸び上がりながらクラッチを繋ぐ」とグリップします(体重移動による加重+荷重によって縮んだサスが伸びようとするチカラ+クラッチを繋ぐ事により駆動力が伝わる事でリアサスが伸びようとするアンチスクワット=地面を押し付ける)。そして、カラダが伸び切ってくるとサスを抑えていた加重が無くなるので更に伸びます。そして、サスが伸び切った時に抜重していると今まで地面を押し付けていたチカラによりバイクを浮かせるという訳です。もちろん浮くのにはスピードや車重、エンジンの出力、サスペンションの減衰、ボディーアクションの強さなど色々な要素が絡みますが。
理屈で分からないという人は体重計の上に乗って屈伸をしてみてください。沈む最中に体重が減って(抜重)、一番下でちょっと増える(加重)、伸び上がるともっと増え(加重)、伸び切った瞬間減る(抜重)というのが分かります。また、屈伸のスピードが速く、動きが大きければ加重抜重の影響は大きいですし、ゆっくりと動きが小さければ影響も少ないというのも気付けるのではないかと思います。つまり、「ボディーアクションは大きく素早く動く」のがポイントという事になります。
また、ギアは1速よりも2速と高いギアでやった方が飛距離は出ます。同じ回転数で繋いだ場合に2速の方がタイヤが多く回転する為です(分かり易く言い換えるなら高いギアの方がスピードが出る、スピードとは時間当たりの移動距離、タイヤが多く転がっているからですよね。つまり、クラッチを繋いだ一瞬の間に移動する距離が長いって事です)。ただ、ギアが上がるとその分トルクは下がるので、1速よりもより大きくアクセルを開けて繋ぐ必要があります。1速だとトルクが強いが回転が少ない為、バッと上がるけど前に進まず距離が出ないし、トルクが強い分掻きやすい。2速だとトルクが弱いが回転が多い為、バッと上げるにはエンジンの回転数をその分足す必要があるが前に進むので距離が出るし、トルクが弱い分掻きづらい。これは滑りやすい苔むした沢やマディーの時のステアで特に重要になってきます。
このジャンプするという一連の動作とバイクの動きはステアケースでも同じです。後はステアの高さが高くなるのでフロントアップしてフロントタイヤを上げて適切な場所に当てるというだけです。
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