ハングリー精神はなくとも…
元々この人の事は知ってはいた。
地元のチームで若くしてキャプテンを務めている、将来を期待されている選手だと。
2019年、ラグビーワールドカップでは日本代表に選ばれ、彼の活躍により『ジャッカル』という言葉はそれまでラグビーに触れていなかった人でも知ることになったのではないかと思う。
勿論、地元チームのキャプテンなので、応援はしていた。
代表に選ばれた時は自分の事のように嬉しかった。
でも、特にこの人が…という感じではなかった。
その感情が大きく変わった決定的な出来事があった。
ワールドカップの試合中、興奮した選手同士があわや乱闘になるのかという緊迫した場面で彼はそこに割って入り、今にも殴り掛かりそうになっている相手国選手の顔を両手でがっつり挟み自分の方に向かせ、落ち着かせるように必死でなにかを語り掛けていた。
その甲斐あって乱闘は避ける事ができた。
なんだ!この人!
その紳士的な振る舞いに、一瞬でハートを撃ち抜かれた。
ホントに一瞬で。
それ以来、一番の推し選手として応援するようになった。
毎回、試合会場入する時は、全身からピリピリ感が伝わってきて、とても声をかけれるような感じではなく、誰も寄せ付けないくらい威圧感がある。
だが、試合が終ると勝敗に関係なく、サポーターひとりひとりに感謝の気持ちを伝えるべく、誰よりも深々と長いお辞儀をする。
フィールドを去る時には、大きく手を振りながら、なんならちょっと立ち止まり撮影出来る時間を作ってくれる。
会場を出てバスに乗り込むその最後の最後まで手を振り続けてくれる。
試合後は感心する程、ファンサービスを怠らない。
この度、彼の密着番組が放送された。
衝撃的な内容だった…
同じ地元、そして自分とそう大して年齢が変わらない。
でも彼のような幼少時代を送っていた子は、自分の知る限り周りにはいなかった。
そして強さと優しさを兼ね備えた彼の根底にあるものが何か、それを観て漸く分かった。
それは『ハングリー精神』
ストンと腑に落ちた。
ストイックで常に高みを目指している。自分に甘えない、妥協を許さない。
そして頻繁に口にするのは、支えてくれている人たちへの感謝の言葉。
だからこそ彼は日本代表というトップの座に居続けているのだと思う。
それを知って以来、ずっと考える。
ハングリー精神は自分に大きく欠けているモノのひとつだと以前から思っていた。
こればっかりは後付でなんとかなるものではない。
でも、ハングリー精神がなくとも持ち続けれるモノはある。
それは、人への感謝の気持ち、優しい気持ち。
これまでわたしに関わってくれた人、そして関わるだろう人への感謝の気持ちを持ち続けよう。
そしてどんな時でも優しい気持ちで人と接しよう。
それさえあれば、自然と同じような人の中に居続けることが出来、優しい世界だけで生きていけると信じている…