福岡県民の僕がタダ券を貰って子連れでアビスパ戦に行って楽しめなかった全理由
「ダンダンダダダン!福岡ブルックス!」
1995年、僕は小学2年生。この年、人生で一番スタジアムでサッカーを見た。我が家は福岡ブルックスに魅了され、博多の森球技場や本城、平和台に家族で何度も行った。
ゴール前にボールが行くと沸き立つ歓声。ゴールが決まれば、その歓声はさらに大きくなり、信川竜太氏の「ウーーーーーゴ!!マラドォーーーーゥナァアアアア!!!」という声がスタジアムに響き渡る。
すると親父がウーゴ・マラドーナはすげえ兄貴がいるすげえ選手だということを、嬉しそうに僕に説明する。「顔もよ~似とうもんな」とか言って。もう何度も聞いたよ、そのくだり。
ブルックスの快勝を見届け、僕は車の中で妹と「守護神サーノ!」「トーログリオ!」とブルックスサポーターごっこをする。そして、親父は「ダイエーは弱いけど、ブルックスは強いけんいいな」とボヤく。これも何度も聞いた。
「ARRIBA! FUKUOKA BLUX!」
今でもなんだか福岡ブルックスというフレーズを聞くと、ワクワクする。
あれから24年が経った。
親父はアビスパの話を全くしなくなって何年になるだろうか。ソフトバンクホークスの試合しか見ないし、城後寿すら知らないだろう。
そんなことを言っている僕も、実は城後、森本、駒野…しか知らない。あ、駒野は抜けたのか。
そんな僕がタダ券をもらったので、はじめて子連れでアビスパ戦に行ってきた。今は博多の森球技場は使えないらしく、博多の森陸上競技場で試合を行っているらしい。
サッカー観戦自体久しぶりで、少しワクワク。
親になってはじめてサッカースタジアムへ
……前置きが長くなりました。ですます調に変えさせてもらいます。
僕は生まれも育ちも現在の住処も福岡(大野城市)の31歳です。2児の父で3歳の息子と生後2日程度の息子がいます。(うまれました!)
アビスパのサポーターではないし、なんなら大してサッカーファンでもありませんが、なんとなく2~3年に1回くらいはアビスパを見に行っていました。福岡県民として、本当に何となくですけど。
子どもとはホークス戦に行ったことはあります。ホークス戦は楽しかったようで、家でおもちゃのバットでボールを打つ遊びをするようになりました。それなりにスポーツ観戦を楽しめる子どもです。アビスパ戦ははじめて。
ただ、正直に言います。1試合見て「少なくとも今シーズンはもういいかな」と思いました。あまり自分でお金を出して見に行く気にはなれないな…と感じています。
アビスパの試合観戦を経て「これってどうなの?」と思うことがたくさんありました。そのへんは後でまとめて説明しますので、まずは僕と息子の観戦体験をお話しさせてください。
スタジアムに行くバス停はどこ?
「今日は息子と2人でアビスパを観に行く!」
妻は唐揚げを揚げ、おにぎりを握ってくれました。
僕が持つ数少ないアビスパグッズのストールを巻かせ、一応洋服は紺色に染めてみました。せっかく行くなら楽しまないと。
ひとまず、福岡空港に到着。
福岡空港からスタジアム行きのバスに乗り込みたいのですが、なかなかバス乗り場が見つかりません。
「あれ、マジで何も書いてない。」
僕、てっきり福岡空港のロータリーのどこかに「博多の森行きのバスはこっちだよ」ってわかるようになってると思ったんですよね。
いや、本当はどこかに書いているのかもしれませんが……。見通しが甘かった。
壁は目が覚めるように真っ白で、何も案内はありませんでした。
スマホで公式サイトを改めて確認し、ようやくバス乗り場を見つけました。ちゃんと下調べをしておかないとだめですね。反省。
バス移動も楽しそうにしてくれてホッと一安心。今日は楽しむぞ。
バスの移動時間は10~15分くらいでしょうか。すぐに到着しました。スタジアムが変わったので心配していましたが、想像以上に快適です。
※改善済「キックオフ4時間前がビビーのおすすめ」
大きなスタジアムを前にして、息子のテンションもアップ!まだ試合開始まで、時間はあります。
実はアビスパの試合前は、いろいろと楽しめることがあるようです。
公式サイトに「初めての観戦ガイド」というものがあったので、バッチリ読んできましたよ。
そこには「キックオフ4時間前がビビーのおすすめ♪」という記述がありました。90分の試合を見るために4時間前からですか。すごいな。
今日は3/30(土)のジェフ千葉戦。13時キックオフなので、4時間前に到着となると9時です。
「え、13時の試合に9時から行くの?初めての人が?」
「初めての観戦ガイド」をどんなに好意的に解釈しても、4時間前から楽しめる道筋が見えませんでした。何するの、マジで。
※5/31 追記 この表記は削除されました。
結局、キックオフ1時間前に行くことにしました。
わいわいしていて、息子もちょっと楽しそう。
うろうろしてると、スタジアム前にアビーくんのフワフワがあるのを見つけました。
有料ですがたったの200円ということなので、遊ばせてみました。いいですね、これ。
さっそく他の子どもとゲラゲラ笑いながら、飛び跳ね始めました。中を覗くと、広くて驚きました。楽しそうでよかった。
※改善済 子どもに「Avispa」と書かれたTシャツを買いたい
子どもがフワフワで遊んでいる間に、残りの時間で何をしようか考えました。
せっかく観戦するので「なにかアビスパグッズがほしいな~」と思いました。といっても、湯水のようにお金があるわけではないので、せめて子どものために何か買いたいと思ったのです。
何か買うとしたら、やっぱり洋服がかわいいなと思いました。洋服なら何枚あったって足りないくらいだし、定番だけどユニフォームっぽい「Avispa」って書いたTシャツとかあったら、可愛くて似合いそう。
ということで、子供服がいくらくらいするのか公式サイトのグッズ案内を見てみました。
※6/2追記 現在、商品内容が変わっています。
あれ??ない。「アビスパ」って、どーん!と書いてるTシャツがない。
でもアロハシャツとか、ファビオ監督Tシャツとかはあるんですね…。
安い特製ネイビーTシャツは「IWASHITA」って書かれてるけど、その人が抜けたというニュースを見たような気がします。「福岡力」とか「魂」とかしかありません。うーん、なんだそれは……。
そもそもTシャツのサイズは大人用のみでした。子ども用ないのか。びっくり。
※7/22追記 本記事がきっかけとなり、7/27より「アビスパ」と大きく書かれたベーシックなTシャツが110㎝からLLまで販売されます!詳しくはこちら
※9/1追記 ベーシックTシャツ(110cm)を息子に購入しました!観戦時はいつも着てます。
↓当時の本編に戻ります
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うーん、無理やり買ってもなあ…と思い、グッズ売り場に行くのはやめました。
今思えば、サイトに載っていないだけで、実際のグッズ売り場にはあるのかもしれないのですが、どうなのでしょうか……。
そうこうしてるうちに、息子はフワフワから出されました。
あ、これ、5分なのね。5分って、あっという間だ…。
息子の目からスタジアムはどう見える?
大学時代の後輩と合流してタダ券をもらい、いざスタジアムへ。博多の森陸上競技場なので、間にトラックがあって、ピッチまですこし遠く感じます。
でも、スケールはだいぶ大きい!
息子の目には、初めてのスタジアムはどう映ったのでしょうか。
……ということで、息子に取りつけてもらったGo Proの映像で子ども視点のスタジアムを確認してみましょう!
Go Proに映っていた動画を確認すると、スタジアムに入り太鼓の音が聞こえてくるとワクワクし始める息子の声が記録されていました。
スタジアムに入ると息子視点だとさらに広く感じますね。
Go Proの映像を見て、やはりスタジアムという環境は子どもをワクワクさせる力を持っているんだなあ、と改めて実感させられます。
試合をどう楽しめばいいのかわからない
チケットをくれた大学時代の後輩が、気を利かせてうちの息子のためにアビスパの野球帽を買ってくれました。ありがたや~。
なるほど、子ども向けグッズは野球帽という手段があったんですね。なかなか帽子を好んでかぶってくれなかったんですが、これだとかぶってくれそう。
うちの息子にはホークスの帽子をかぶせようと思っていたのですが、先にもらっちゃったので、わざわざもう一つ買う気にはなりません。
うちの息子の帽子は、小学校低学年くらいまでは、このアビスパ帽を使いたいと思います!
そうこうしてるうちに試合が始まりました。
あれ、サッカーの試合ってどうやって楽しめばいいんだっけ。
とくにこの試合は(3/30 vs千葉)は両チームともチャンスに乏しく、ずーっと「パス回し⇒失敗⇒パス回し⇒失敗」というのを見せられるような感じで、ちょっと退屈でした。
息子も最初は興味を持って見ていましたが……
途中からは飽きて、えびせんを食べながら横になってしまいました。まだ早かったかな……。
とはいえ、息子も周囲で歓声があがると目線をピッチに向ける仕草はするんですよね。やっぱり、サッカーはチャンスやピンチが多い試合じゃないと、見る分には楽しみにくいんじゃないかなあと思いました。
僕はサッカーは詳しくありませんが「やったー!」とか「あー!おしい!」とか「わー!あぶね~!」とか、みんなで声をあげながら試合を楽しみたいなあと思っていたのですが……。この日はそういう場面が極端に少なかったですね。
試合終了後、サポーターからブーイングが起きていました。やっぱり、この試合はどちらかというと「ひどい試合」だったんだなあ、と察しました。
試合中の記憶があまりなく、正直、サッカーはあまり楽しめなかったかもしれません。(この日の試合のせいという面も大きいとは思いますが…)
アビスパの観戦をなぜ楽しめなかったのか
ということで、息子との初めてのアビスパ観戦が終わりました。正直なところ、期待していたほど楽しめませんでした。
たまたま、この春にサガン鳥栖とソフトバンクホークスの試合を観戦したのですが、アビスパの試合が一番楽しくなかったのは間違いありません。
その原因を改めて考えてみたところ、いくつか原因を言語化することができました。
別に偉そうに「提言」まがいのことをするつもりはありません。とくに具体策は浮かびません。僕はサッカークラブの常識やアビスパのチーム状況も知りません。
詳しい人からすれば「何言ってるんだ」と感じる部分もあるかと思いますが、一人の福岡に住む父親の独り言と思って聞いてください。
①試合観戦が初めての客層を配慮していると思えない
アビスパの公式サイトの内容や、スタジアムなどすべての面で、クラブが初めて観戦する客層のことを考えているようには思えませんでした。
具体的にはバス乗り場がわかりにくかったり、公式サイトの初めての人のためのガイドで「キックオフの4時間前に行くのがオススメ」と書いてしまったりしていたのは、その顕著な例だと思います。
僕が今回、一番げんなりした部分です。
②試合前の楽しみがない
試合前にやることがなくて、1時間前に来ても時間を持て余してしまいました。スタジアムグルメはいろいろあったし、どれもおいしそうだし、良かったと思うのですが…ご飯食べる以外にはとくにやることを見つけられませんでした。
公式サイトにいろいろと書いてはいましたが、正直目を引くようなイベントはなかったです。
一方、先日行ったサガン鳥栖の試合では、様々なイベントが行われていて印象に残りました。
試合前には間近でチアのダンスを見ることができたり……
ベンチ入りしていない選手のトークショーがあったりもします。現役選手のトークショーなだけあって、たくさんのファンが見ていました。
子どもがサッカーと触れ合う場所があったり……
試合後もクラブ専属のチアがビンゴ大会をやっていました。あまりお客さんは集まっていませんでしたが、いろいろとよく頑張ってるなあ~という印象。
もしかしたらアビスパも何か、これくらいのことはやっているのかもしれませんが…。これは気づいていないだけかもしれません。
でも、見る限り、フワフワしかなかったと思うんですよね……。
③グッズの種類が少ない
公式サイトのオフィシャルショップのグッズを見て、なんだか奇をてらったようなものばかりで買いにくく、買える物がありませんでした。もう少し王道の商品を取り入れてよいのではないでしょうか。
ユニホームのようなものが、1万円越えの本物のユニホームしかないので、ハードルが高すぎて手が出ません。子どもサイズがないなんてもってのほかです。
一方、サガン鳥栖のグッズは種類が豊富で、見るだけでも楽しかったように思います。
④サッカーやアビスパが大好きじゃないと楽しめない
アビスパの試合は「サッカーの試合に集中する」以外に楽しむ術がなく、楽しみ方の種類が非常に少ないと感じました。
「サッカーの試合に集中する」という楽しみ方以外は許されない感じなので、初めて試合を観に行く人にはハードルが高すぎるのではないでしょうか。
この面での模範はソフトバンクホークスです。ソフトバンクホークスの本拠地のヤフオクドームでは、様々な野球観戦の楽しみ方を受け入れることで、野球観戦が初めてでも楽しめる工夫がなされています。
世界最大サイズのビジョンは眺めるだけでも大迫力。野球なんてわからなくても、ヤフオクドームの体験だけで非日常です。
外野席の後方にはベンチと同じようなデザインの休憩スペースがあり、モニターで野球を見ることができます。
バーカウンターのようなフードコートもあり、お酒を楽しみながら野球観戦を楽しむこともできるのです。
コンコースには座席に戻らずに食事ができるスペースもありますし…
充電用のコンセントがついたカウンターもたくさん用意されているのです。野球観戦に家族で行こうと思うと、野球へのスタンスは家族によってさまざまです。ずっと試合の行方に集中するのは辛い、という家族もいるでしょう。
ヤフオクドームはそんな人でも楽しめるように、居心地の良い空間をつくることに努められたスタジアムになっています。
資金力が違うので、ここまでのマネは難しいかもしれませんが、「様々なサッカー観戦の楽しみ方を認める」という考え方は大いに参考にすべきではないでしょうか。
⑤試合を観に行く目的になるような選手がいない
アビスパの選手を一人も知らないという人は、福岡県内の何割なのでしょうか。ソフトバンクホークスの選手を一人も知らないという人の割合と比べると、どれほどの差があるものなのでしょうか。
せめて長年アビスパでプレーしている城後選手については、もっと知名度があってもいいのではないかと思いますが、とにかく福岡県内でのアビスパ選手の認知度が低すぎると思います。
やっぱり気になる選手がいないと、生で観に行こうという気は起きません。誰かひとりの選手を売り出すような、上手な宣伝の仕方が必要なのではないでしょうか。
たとえば、サガン鳥栖にはサッカー無知の僕でも知っているフェルナンド・トーレスという絶対的なスター選手がいます。
僕はカメラを持って、彼を追っているだけでも、正直とっても楽しかったです。
サッカー選手ってあんなにかっこいいんですね。やっぱりそんな目的となる選手がいると、サッカー観戦はわくわくすると思います。
福岡ブルックスの頃のような高揚感がほしい
僕はこの日サッカーを楽しむことはできませんでしたが、息子はサッカーを観に行ったことを楽しそうに保育園で先生や友達に伝え、アビスパの帽子はすっかりお気に入りになりました。
子どもが楽しんでくれるなら、また機会をつくってアビスパを観に行こうかと思っています。
とはいえ、今のアビスパの試合を観戦するのは、ちょっとつらいなあとも思っているのです。
こんな時に昔を懐かしむようなことは意味がないかもしれません。しかし、Jリーグ昇格前の福岡ブルックスの高揚感が恋しいと思います。
95年当時、ウーゴやトログリオのゴールの先にある「Jの夢」をみんなで共有できている気がして、一体感を勝手に感じていました。
アビスパも福岡ブルックスの頃のような、夢のある強いチームになってほしいと切に願います。ちょっと光が見えてきたときに、また博多の森へ行きたいなと思います。
※追記 7/20 この記事の執筆後、いろんなことがありました。