32歳の僕が吉田拓郎に魅了されてしまう理由を示すおすすめ10曲
僕はこのまま、吉田拓郎について無言を貫いたまま、死んでいきたくない。
吉田拓郎を好きな理由をネットの海に投げ込んでおきたいと思う。
僕はビートルズが大好きで、他にもAerosmithとかMR.BIGとか日本でも人気のある王道のロックバンドが好き。あとB'zも大好きだ。別に特別「音楽マニア」というわけでもないと思うし、ビートルズがベースにあるので、ふんわりと古めのロックが好き。普通の32歳。
今あげたバンドたちは非常におすすめしやすいし、そもそもわざわざおすすめしなくてもみんな大体知ってる。話しやすいバンドたちだ。
でも、僕は「何が好き?」と言われて、答えられない人がいる。それは「吉田拓郎」だ。
実は今「avex」に所属している吉田拓郎。CMの最後の「エイベックス…!」というサウンドロゴがあまり似合わない。
僕が大好きなのにも関わらず「好きなアーティストは?」という質問に「吉田拓郎です」と答えないのには理由がある。理由は一つだ。
「会話が終わる」
吉田拓郎を話題にどうやって楽しく会話をすればいいのか、僕にはよくわからない。まず共感を生まない。「たくろう、私も好き!」なんてことになる世界は40年くらい前に終わっている。「LOVE LOVE あいしてる」が終わったのも約20年前だ。
「団塊の世代と話すときに使える」というのはあるかもしれないが、吉田拓郎ばかりに掘り下げている人はそうそういない。団塊の世代と話すときは、周辺の時代背景やアーティストの曲も知っていなければ絶対に盛り上がらない。
▲こんなのとかよく知っておくとフォーク喫茶とかで話せる(イメージ)
とくに時代背景は重要だと思う。団塊の世代と盛り上がるには「吉田拓郎はなぜ70年代の若者に支持されたか」とかをリアルタイムで実感していないとダメだろうし、当時の他のフォークシンガーである岡林信康や高田渡、井上陽水、小室等、泉谷しげるなどなどの話もできなきゃいけないんじゃないかと思う。それは無理だ。シンプルに知らないし、聴いてみて普通に良いとは思うけど、僕にはピンと来なかった。
僕は、ただひたすらに吉田拓郎のつくる音楽が好きになってしまったのだ。
僕の「好きな音楽の軸」として、ビートルズと吉田拓郎の2つがあるとする。ビートルズは素晴らしくて、そこからいろいろと枝分かれして、いろんな音楽がビートルズの影響で好きになれた。しかし、吉田拓郎からは派生していかなかった。完全に脳が特別扱いをしている。
でも僕は「好きな理由を言葉にする」ことから逃げたくない。ということで、吉田拓郎のいいところを説明するために自分勝手に10曲選んだので、曲ベースで話したい。
noteはそういう自分勝手が許される場所だと聞いている。人生で一度だけ「吉田拓郎の作品に触れる機会」と思って、チラッと触れてみてほしい。
①イメージの詩(1970)
作詞・作曲 吉田拓郎
変な歌だが、この記事から離脱しないでほしい。僕も変な歌だと思っている。
実は親父が吉田拓郎が好きで、たまにコンサートに行っており、そのライブの記念に「LIFE」というベスト盤を購入した。しかし、親父は家で音楽を聴くタイプではなかったので、そのCDは全く再生されていなかった。
家にある家電をいじるのが好きな小3の僕は家にあるCDは全て再生したいタイプの子どもだった。このCDも聴いてみることにした。
こんな歌いだし。正直、何が言いたいのかよくわからない。「信じれるものが~」って、歌詞もメロディーに合ってないせいで、歌詞が浮いて聞こえてくる。この何を言っているのかわからない歌詞が頭にはどんどん侵入してくる。でも、入ってくるのに意味は分からない。
話は脈略もなくどんどん移り変わる。
へえ、そうなのかな。でも、どうせこの話も他の話と同じようにポイッて投げ捨てるんでしょ…。
えっ!この水夫の話は説明してくれるの!???
いや、だったら、新しい海に出られるのは、むしろ古い水夫だけなんじゃ…?どういうこと??
で、ここで話変わるのかよ。絶妙。「なぜなら」なんて言葉を使っている曲って他にあるのかな。
まだ僕は水夫の話を考えてる。そもそも「古い水夫」の「古い」ってどういうこと?とか考えちゃってる。
小3だったが、僕はこの曲が「すっごい変な歌」だとは思った。意味不明な歌詞とは裏腹に、何だかホッとするような実家のようなやさしい伴奏。
この曲は吉田拓郎のデビュー曲。「イメージの詩」は歌詞の意味が分からず、解釈がそれぞれに委ねられるのが面白いところ。
アルバム「青春の詩」の12曲目ですが、のちに出たベスト盤の「LIFE」の音質が非常に良いので、そちらの音源がおすすめ。
②リンゴ(1972)
作詞 岡本おさみ 作曲 吉田拓郎
ギター!!!ウッドベース!!!!ギター!!!!!!
吉田拓郎の魅力のひとつに、ギターの弾き語りがある。(とくに初期)
その中でも抜群にかっこいいのがこの曲。マジでヘッドホンで聞いてほしい。一音一音の弦の響きすべてが力強くて美しい。
ギター2本とウッドベースというシンプルな楽器だけで、ここまでヘヴィーでかっこいい音源がつくれるのか。
歌声はあまり抑揚がなく、淡々と歌っている感じ。歌詞もリンゴにまつわるカップルの日常が淡々と歌われているだけ。そのせいか、より演奏が際立つ。主人公の感情のヒントはこの激しくて美しい演奏だけなのだ。僕のイマジネーションはさらに刺激される。
いくつかカバーバージョンやセルフカバーも存在するが、やはりこの演奏を越えるバージョンはない気がする。吉田拓郎のアルバムで最も売れた「元気です。」というアルバムに入っている。このアルバムは「旅の宿」や「春だったね」などの人気曲が入っている言わずと知れた名作だ。
しかし、僕はあえて企画ベスト盤の「ひきがたり」の音源を推したい。リマスタリングされているので、シンプルに音が良いのと、弾き語り曲の吉田拓郎を味わえる素晴らしい企画盤だからだ。
繰り返すが、ぜひヘッドホンで。
③風になりたい(1976)
作詞・作曲 吉田拓郎
僕は川村ゆうこさんの透明感のある歌声もひっくるめて、これは吉田拓郎の作品だと思う。
実際に当時、プロデュースを吉田拓郎が担当していた。
この曲の良さはメロディの美しさはもちろんだけど、歌詞。
この歌詞を5~6年前に「♪いったい 俺たちの魂のふるさとってのは~」とか言ってた人と同じ吉田拓郎が書いている。シンジラレナイ。
「吉田拓郎からこんな歌詞が出てくるのか」
そして、すきま風の冷たさがこちらまで伝わってくるような、川村ゆうこさんの透明感のある歌声。
ちなみにこの曲、吉田拓郎がセルフカバーしたバージョンもある。…でも、僕はこの記事にその曲の「Spotify」を貼らない。正直なところ、吉田拓郎本人のバージョンよりも川村ゆうこさんのバージョンの方が、数段いいなあと思う。
「風になりたい」もいくつかカバーがあるようだが、素晴らしいのが中ノ森BANDのバージョン。
爽やかかつエモーショナルな歌唱は「風になりたい」の主人公の女性像をイメージする幅を広げてくれる。僕はこのバージョンがかなり好き。素晴らしい。生で聞きたい。
僕が女性に歌ってほしい曲の圧倒的ナンバーワンだが、その夢が叶ったことは一度もない。誰が歌っても新しいこの曲のイマジネーションが広がりそうなので、世の女性歌手全員に歌ってほしい。
④もうすぐ帰るよ(1977)
作詞 岡本おさみ 作曲 吉田拓郎
ラブレターのような独り言。
僕はこの曲以上に、一人の女性への深い愛情をやさしく表現できているラブソングを知らない。
この曲の歌詞は岡本おさみさんという、吉田拓郎とはゴールデンコンビと言われている作詞家さん。
僕は「愛情」を「帰る場所」「日常の重なり合い」のように表現している吉田拓郎の曲が好きだ。吉田拓郎の声と合うなあと思うから。
歌詞中で「君を抱く」という表現が2度出てくるが、セクシャルな感じはなく、むしろとってもさわやかだ。
徹夜明けのしんどい時に会いたくなる人、強く抱いた後の朝に想いを馳せられる人。
仕事から帰っている。もう夜が明けた。今日も仕事はしんどかった。でも、俺には帰る場所があるんだ。そこにはきみがいる。
ベースは「きみ」への愛情だ。きみへの愛がないと、こんな風には思えない。シブい。
この曲の「ぼく」「きみ」がひらがなであるところも、やさしくて好き。
楽曲はロックなアレンジ。心地よい疾走感がある曲で、歌詞の世界は徒歩だろうが、楽曲としては朝方の街を車で走っているようなイメージが合う気がする。
ストリングスが入っているが、派手ではない。むしろ、この曲の「骨まで突き刺すような寒さ」の雰囲気が出ている。
この「もうすぐ帰るよ」はシングル曲でアルバムに収録がないうえ、これほどの名曲でありながらベスト盤の収録も少ない。
とは言え、先ほども紹介したベスト盤「LIFE」のリミックス版の音質がとにかく素晴らしいので「LIFE」の音源で聞いてほしい。
⑤裏街のマリア(1978)
作詞 松本隆 作曲 吉田拓郎
ファンキーなアレンジがツボだ。かっこいい。
編曲は僕ら世代には「野猿」でおなじみの後藤次利さんが担当している。僕は野猿の曲も好きで、とくに後藤次利さんのアレンジはツボだなー、と思うことが多い。野猿で一番好きな曲は「Be Cool!」。
いい曲だなあ「Be Cool!」。話がズレた。
この「Be Cool!」にもあてはまるんだけど、裏街のマリアは「派手だけど、シンプル」だと思う。
一音一音にスキがなくて「この音はここになきゃダメ!」というか、どのピアノの一音、ブラスの一音が抜けても嫌な感じ。絶対に必要なものだけで構成されている。こういう曲は聞いていて楽しい。
ビートルズの曲でもそういう感覚はある。好きだからなだけなのかな。
この曲が後藤次利さんの編曲だと知った時は心底驚いた。知ったのは最近だ。「ディスコで踊りまくるような曲」と吉田拓郎が注文したそうだ。吉田拓郎の楽曲で後藤次利さんが編曲した楽曲は「裏街のマリア」だけだ。(t.y.lifeより)
歌詞ははっぴぃえんどの松本隆さん。「木綿のハンカチーフ」を書いた作詞家で、吉田拓郎とも「外は白い雪の夜」「舞姫」「言葉」などの名曲を手掛けている。この曲でもドラマのような情景が浮かぶフレーズが秀逸だ。
当時は1978年。今は2020年だ。歌詞全体の言葉遣いや世界観に「若干のダサさ」を感じるのは認める。それはこの曲がきちんと1978年の空気をまとった曲であることの証だ。レトロ映画を楽しむような気分で、僕の生まれていない時代の味をかみしめたい。
裏街のマリアはベスト盤に入ることもまず無いような、コアファンしか知らないアルバム曲なのだが、2014年にセルフカバーアルバム「AGAIN」で再録された。
吉田拓郎は90年代以降、よく「セルフカバー」をしている。「AGAIN」以外でもこんなに。
・アルバム「みんな大好き」(1997)
・アルバム「Oldies」(2002)
・ミニアルバム「一瞬の夏」(2005)
書いた曲への愛の表れかなあ、と思っている。
正直、必聴とまではいかない。僕にとっては、元の楽曲の良さを生かしながら、現代にも合うようなブラッシュアップがされている印象で悪くない。
とくに「AGAIN」(2014)の「裏街のマリア」は洗練されていい感じ。でも、原曲のクセになる感じがやっぱりイイなぁ。
おすすめは「ローリング30」のオリジナル。最近、リマスタリングされて音質が非常に良くなっている。
⑥流星(1979)
作詞・作曲 吉田拓郎
吉田拓郎の楽曲の中で、もっともメロディが好きな曲。ライブで披露されることも多く、ファンの人気も高いと思う。
ピアノとストリングスのイントロ。そしてこの歌い出しだ。
珠玉のメロディ。ここまででもう、聞き手を引き付けてしまう。
サビの盛り上がりは圧巻。
「ただひたすらに」のガラガラ具合がたまらない。吉田拓郎にしかできない、すばらしいボーカル。
歌詞は解釈が分かれるようだが、ラストの叫びがすべてだ。
星空を眺める男の頭の中をのぞき見したような歌詞だと思う。
歌詞中の「君が好き」を素直に受け取れば、恋で悩む男の歌ともとれる。でも、僕はこの歌の「君が好き」ということ自体はそこまで重要とは思わなかった。
何も見えない中「君が好き」ということだけはわかる。でも、なんで好きなのかとかはよくわからない。とにかく主人公は自分が見えなくなっている。
歌詞の中の「僕」はへこんでいる。だいぶへこんでいる。自分に素直に生きてきたつもりだったが、これからどう生きて行けばいいかすらわからなくなってしまった。そんな「僕」とは関係なく、社会は回っていくし、成功してるやつもいるし、星空は輝いている。そんなときに、流れて消えゆく星を見た。流れ星を1つ、2つ、3つと見るうちに、見え方が変わってくる。いったい、「僕」は何者なんだろう。
そんな主人公の姿がぼんやり見えてくる。ただ、輝く星と自分を対比させながら「自分の本質を問い続ける姿」がある。
ほんっと、素晴らしいボーカリストだ。
この曲もベスト盤の「LIFE」のリミックス音源が音質が良いので、おすすめ。他の音源は少しこもって聞こえる。
※今気づいたが、LIFEは廃盤でAmazonでは中古しか取り扱っていないようだ。この記事でも引用している「Spotify」などで聞いてみて。
⑦されど私の人生-LIVE version-(1979)
作詞・作曲 斎藤哲夫
なんという歌い出しだろう。どんな流れも断ち切り、この曲に集中させる力を持っている。なにせ、もうどうでもいいのだ。
歌詞を書こうとしたときに、まず「もうどうでもいいのさ」とペンを動かす神経は全く理解できない。どうでもよくねえだろ。
この曲は吉田拓郎ではなく、斎藤哲夫さんというフォークミュージシャンがつくった曲だ。なんと弱冠18歳で書いた曲だという。シンジラレナイ。
吉田拓郎があまりにライブで演奏するので、70年代当時はカバーなのに「吉田拓郎の代表曲」のような存在でもあったそうだ。今でも吉田拓郎の曲だと思っている人も多いらしい。…それはあまりに斎藤哲夫さんがかわいそうだ。
もともとは弾き語りで演奏されており、そちらのバージョンがリアルタイムのファンの中では定番である。
とにかくこの曲で吉田拓郎は叫ぶ。叫ぶ。感情を込める。
この曲が人生のテーマソングとなっている人がどれほどいるだろう。この曲のテーマの壮大さと、吉田拓郎の歌唱の迫力を最大限に生かしたのが、冒頭で紹介している1979年のライブアレンジだ。
ロックな歌詞だなあ。
サックスが印象的な、このライブアレンジで「されど私の人生」はさらに輝きを増している。心にガツンと響く名曲だ。
この曲は1979年のライブアレンジで聞いてほしい。「THE LIVE BEST」がおすすめだ。
⑧旧友再会フォーエバーヤング(1982)
作詞・作曲 吉田拓郎
この曲が響く年齢になってきてしまった。
この曲はもともと山本コウタローさんと山田パンダさんが組んだ期間限定音楽ユニット「山本山田」に提供された楽曲だ。
発表されたのは1982年で、当時の吉田拓郎は36歳。僕は今年で33歳。うーむ。
いい歌詞だ。いい表現だ。吉田拓郎自身はこんな生活してねえだろ、と思うけど。
僕はこの曲に流れている「やさしさ」が好きだ。
「お前、頑張ってきたよな」「俺も頑張ってるよな」「これからもまあ、お互い生きて行こうぜ」「同じ世を生きている仲間だな」
自分を含めたそれぞれの人生をやさしく肯定する。そんな吉田拓郎のやさしい歌詞が僕を安心させてくれる。
旧友と会って「俺ももうちょっと頑張ってみよう」「気持ちは若いままでいよう」と思えるような、そんないい歌だ。
この曲は1984年にセルフカバーで発表されたバージョンが吉田拓郎名義の初めての音源なのだが、正直この打ち込みだらけのバージョンがあまり好みではなくて…。一応貼っておこう。
https://www.youtube.com/watch?v=u99pqddK3w4
それよりも近年、ライブで演奏されている編曲されたバージョンが好き。(冒頭のYouTubeがそのバージョン)
1975年の伝説のライブ「吉田拓郎・かぐや姫 コンサート インつま恋」を31年ぶりに再現するとして話題になった、2006年の「吉田拓郎 & かぐや姫 Concert in つま恋 2006」では1曲目に演奏された。
多くのファンの心に残ったに違いない。(実は僕も2006年のこのライブは現地で見た。)
このライブバージョンが聞けるのは2004年に発売されたライブ盤「豊かなる一日 ~TAKURO & his BIG GROUP with SEO」だが、廃盤になっておりプレミアがついてしまっているようだ。
どの曲もアレンジが素晴らしい名盤なので、興味のある方はレンタルや中古をあたってほしい。
⑨ガンバラないけどいいでしょう(2009)
作詞・作曲 吉田拓郎
この曲は発明だ。
「頑張れ」と背中を押す曲が大半の世の中で、この曲は「頑張らなくていい」と背中を押している。
発表したころの2009年、僕はまだこの曲がピンとこなかった。「いや、がんばれよ」と思った。
でも、僕も年を重ね、いろいろなことがあった。
社会もあれから少し変わった。そうした中で、この曲のメッセージはより響くようになった。
「されど私の人生」でまだ見ぬ明日へ向けて一歩一歩歩んでいく決意を示したが、自分を見失い「流星」を歌ったこともあった。
そんな吉田拓郎も2009年当時は63歳。自分と周囲を振り返っている。
この曲の中で「頑張る」とは、人生をより良くするために努力することではない。自分を壊してまで、周囲に合わせようとすることだ。
超大事なことを歌っている。こんな曲が世の中にあることが救われるし、これを1946年生まれのおじさんが歌っていることに救われる。
必死に頑張ってきたリアルタイムの吉田拓郎ファンは、この曲がリリースされた時、何を思い、どう感じたのだろう。おそらく戸惑ったんじゃないだろうか。もしかすると「拓郎は終わった」と失望した人もいたのかもしれない。
でも、僕にはこのメッセージが今、スーッと入ってくるし、この歌が存在していることで救われる人は大勢いるんじゃないかと思う。
もっと多くの現代人にこの歌のメッセージを知ってほしいと思う。あいみょんとかKing Gnuとかに歌ってもらって、辛くなっている人に届けてほしいくらいだ。
一回、歌詞を読みながら聞いてほしい。マジで。
繰り返すが、やっぱり僕は吉田拓郎のやさしさが好きなんだ。
⑩人生を語らず(1974)
作詞・作曲 吉田拓郎
この曲を聴くと、人生に積極的で若いエネルギーに溢れた強い漢の歌だと感じると思う。
それはおそらく正しくて、レコードの中の吉田拓郎もそんなイメージで歌っているんじゃないかなと思うし、最近のライブでもこの曲の時の吉田拓郎はエネルギッシュでかっこいい。
でも、僕は最近「人生を語らず」が少し違って聞こえている。特にこの部分だ。
原曲の「人生を語らず」はここのメッセージが非常に強く聞こえる。
ここで超えるものというのは「なかなか超えられない壁」のことを指しているはずだ。人生で現れるとてつもなく大きな困難にも、立ち向かっていけと言う強いメッセージ。
吉田拓郎ファンはこの曲を聴くと「ようし、やってやる」と燃えてくるという人が多いだろう。
でも「人生を語らず」はこんなことも歌っている。
他人を見つめて、自分を見つめなおそうという趣旨である。僕が好きな「やさしさ」も感じるメッセージ。
歌詞から見えてくる「驕らず丁寧に生きよう」というメッセージ。
もしかして、この曲で一番大事なメッセージは「頑張って強く生きること」ではなく「自分のペースで自分らしく生きること」なんじゃないか?と思うようになった。
そうした目線でこの歌詞を読むと「大きな困難に立ち向かっていけ!」というよりは、小さな困難も一つ一つ着実に越えて行こうという意味にも読み取れる。
僕が思っていたよりも、「人生を語らず」はやさしい歌なのかもしれないと思うようになった。
そんな風に思っているところで、「人生を語らず」をKinki Kidsの堂本剛さんがカバーしたというニュースを見た。
堂本剛さんのカバーを聴くと「人生を一歩一歩、丁寧に生きて行こう」と素直に思えた。楽曲をとらえる幅が広がるとってもいいカバーなので、両方を聴くのがおすすめだ。
おわりに
1万文字も書いてしまった。読んでいる人はいないだろう。
でも僕は満足だ。やっと、吉田拓郎が好きだという気持ちを外に出すことができたから。
これからは「吉田拓郎が好きだ」と人に話そうと思う。会話は盛り上がらないだろう。だから「好きすぎて1万字にもわたる記事を書いてしまったことがある」という話をネタにしようと思う。
それだけでも、この記事は僕にとって存在価値があるのだ。
また僕が自己嫌悪に陥っているときにこのnoteに戻ってこようと思う。
そして「やっぱ吉田拓郎って、いいよなあ」という幸せな気分で、自分を肯定してあげようと思う。
越えていけそこを。私なりに。
越えて行けそれを。私なりのペースで。
季節が巡る中で今日を確かめて。
心が歩くままに、生きて行こう。
今はまだまだ、人生を語らず。
ありがとう、吉田拓郎。これからも僕は吉田拓郎と生き続ける。
追記(2020.2.12)
この記事がきっかけのひとつになり、インタビュー出演しました。この記事の話もしていますので、ぜひ見てください。