嫌いが少し薄くなる
先月の水道代が引き落とされなかったので支払いに来いと、役場から封書が届いた。
振込用紙は入っていない。入れろよ。
私は役場に行くのが嫌いだ。
何が嫌だって、こちらから声をかけないと、ちらりと見ることもなく無視されるからだ。
いやいや、町民がなんの用事もないのにこんなとこ来ないでしょ。
「どうかされました?」の一言くらい、言えないもんかね。
毎回、毎回そう思う。
嫌なものは嫌だ。でも行かないわけにもいかない。
駐車場で私は眼鏡を外し、マスクをした。
案の定、今回もそのパターンだった。
絶対気づいてるだろ。足音めっちゃ聞こえてるだろうが。
でも、いつもより平気だ。視界が少しぼんやりしているし、マスクで顔が半分隠れているせいか、嫌が半減している!
「すみませーん、水道代払いに来たんですけどー」
しーんと静まり返った役場で、場違いなボリュームで私は言った。
若い男の職員が、いそいそとこちらにやってきた。
「あ、すみません。水道代は1階の出納係の方で支払っていただく事になってまして。」
ん?2階まで来る必要なかったってこと?(心の声)
いや、でも、振込用紙入ってませんでしたけど。
「あ、振込用紙は、今お渡しします。」
は?何それ面倒なシステム。(心の声)
それならこちらに来るのが正解ってことね。
「はい、中身見ないで捨てちゃう人がいるので、用紙の無駄になってしまうので。」
は?そんなもん封筒に【振込用紙在中】ってハンコでも押せばいいのでは?(心の声)
はあ…
振込用紙を受け取り、出納係で支払いを済ませ、役場を後にした。
やった!やり遂げた!裸眼とマスクでやり過ごした!
だけどやっぱり嫌なものは嫌。
来月からは気をつけよう。