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涼風真世ディナーショー「SWEETEST NIGHT」1991年 パレスホテル

スカイステージの特集番組で先日放送された、涼風真世ディナーショー「SWEETEST NIGHT」(1991年11月17日 パレスホテル)。
まもなく、32年前のその日がやって来る。
在団中のかなめさんの数少ないディナーショーの中でも、私の大好きなショーだ。
かなめさんの退団直後から、今でもずっと宝物のように大切にしているこのビデオ。幾度となく視聴してきたが、改めて今回の放送で感じたことを。

私自身、年齢を重ねるほど芝居や音楽に対する体感の仕方、受け取り方が変化してきたように思うが、常日頃、かなめさんが話されている、"歌に魂を込める”という意味を、僭越ながら強く感じとれるようになったと思う。そしてまさに今回、このディナーショーでもそれを体感できた。
オープニングの宝箱の中から飛び出してきたようなかなめさんの七変化が堪能でき、選曲も構成も非の打ち所がないディナーショー。
    冒頭、「ブレイク・ザ・ボーダー」の『太陽の女』を思い起こすダルマ姿で、コケティッシュで爽やかなお色気を振りまくかなめさんに心奪われていると、次に立襟の軍服を想起させるかのようなお衣装に身を包み、ジョージ・マイケルの『マザーズ・プライド』を。
私もWham! 時代から彼の音楽にはとても惹かれていたが、反戦のメッセージを込めたこのナンバーをドラマティックに歌い上げる。訳詞も原曲に近く、かなめさんの歌声で戦地に向かう青年とそれを見守る母の光景が浮かび、タイムリーなこのナンバーにとても感動した。
    そして次に、客席を縫うように進みながらジプシー・キングスの『ベン・ベン・マリア』、そしてスペイン語で『ウナ・モール』。
後に翻訳された歌詞を知り驚いたものだが、かなめさんの深く響き渡る情熱的な歌唱で胸が高鳴り、これほどまでに重厚感のあるナンバーに変化するのだという驚きと感動。こんなにも魂を揺さぶる歌が聴けるとは…。
    そしてパリ繋がりで、ツレちゃん(鳳蘭さん)の『セ・シャルマン!』を。
ツレちゃんのエンターテイナーぶりに心奪われ、宝塚を目指したかなめさんの来し方を想い、感慨深くこのナンバーに聴き入った。そのライトに映し出された面影がとても美しく神々しい…。
   「情熱のバルセロナ」の名曲、『この時この愛を』。
雲の上の上級生であり、かつ憧れの先輩であるマオさん(大地真央さん)の歌われたナンバーであるし、かなめさん自身が新人公演で演じた役柄でもあるので、その時経験した様々な想いが交錯する中で歌われていたのだろうと胸が熱くなった。
    私は皆さんの愛に包まれて生きることができていると前置きし、歌い始めた「ポップ・ニュース」の『愛!』
かなめさんはラジオから偶然、流れてきたこの曲を聴き、とても感動したと仰っていた。いつかこの歌を歌いたいという思いで宝塚生活を送りながらその機が熟し、ついにこの時が来た、というかなめさんの想いを窺い知ることができた。
様々な方がその解釈で、時代と共に歌われてきたが、スータンさん(眞帆志ぶきさん)の持ち歌であるこの歌、当時、稽古場では、スータンさんは共演者と事細かにその場面や振付、歌詞のひとつひとつに込められた意味や表現方法等を研究され、その解釈はパーフェクトだったそうだ。
後に「メモリーズ・オブ・ユー」のオープニングでは、まさにスータンさんご自身から伝授された『愛!』で、かなめさんのこれでもか、と言わんばかりの深い深い"無償の愛”を感じることができた。

    今となっては、この時、この瞬間にしか出逢うことのできない、その名の通り一夜限りの甘美なディナーショー。
宝塚のモーツァルトと謳われた、故寺田瀧雄先生のタクトを振るお姿と共に、後世に燦然と輝き続け伝えられるであろうこのディナーショーを映像に残して頂き、本当に感謝している。
そして何より、かなめさんに、魂の込められた宝石のようなナンバーの数々をありがとうございました、と伝えたい。

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