【ライブレポのようなもの】SAKANAMON 2023/11/11@恵比寿リキッドルーム
最高で、最低だった。
SAKANAMON結成15周年ツアー「真向」ツアーファイナル@恵比寿リキッドルーム。
今回はどうしても言いたいことがあったので、レビューを書くことにした。
言いたいことというのは、はっきりいって、ポジティブなことではない。
だから、以下では長々と今回のライブへの批判をぶちまけることになる。
もちろん、ただの罵詈雑言や誹謗中傷ではなく、私なりに理由があっての言葉だ。
とはいえ、SAKANAMONへの否定的な言葉を読みたくない人は、今すぐ戻るか、ページを閉じてほしい。
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では、単刀直入に言ってしまおう。
メンバーの演奏は、最高だった。
セットリストも、最高だった。
演出が、あまりに酷かった。
特に、いくつかの曲で舞台背後のスクリーンに投影された謎の映像。
あれは、はっきりいって、本当に、本当に、SAKANAMONに限らず今までみてきたライブの中でもこれ以上ないくらい、本当に本当に最低最悪だった。
あの映像は、あまりにも、私にとってのライブの良さを台無しにしていた。
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私にとって、ライブの楽しみは、生の演奏を体全体、五感で受け取ることにある。
胸に響くバスドラムやベース。耳をつんざくようなシンバルやギターのチョーキング。音源にはない、生々しい歌声。
そして何より、演奏しているメンバーの表情や動き。
メンバーだけでなくお客さんを含めた会場全体が一体となって音楽を楽しむ、あのなんとも言えないグルーヴ感。
それらを見て聞いて感じるのが、ライブに行く唯一の目的といってもいいだろう。
そんなライブの楽しさを、あの映像はぶち壊していた。
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具体的に、あの映像のどこがそんなに悪かったのか。
まず、映像のせいで、メンバーの姿、特に表情がよく見えない。
(おそらく)座席側にあるプロジェクターから投影されていることによって、どうしてもメンバーに映像が被ってしまうのだ。
そのライブのその曲のその瞬間にしか見えないであろう彼らの姿を、あの映像は邪魔していた。
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それでも、映像自体が「ライブの演出」として吟味され作り込まれたものならまだまし、というかむしろ全然ありだろう。
その点でも、今回の映像は本当に酷かった。
『反照』のタイトルを意識して、形や色などを反転させた映像。
『ぱらぱらり』で、桜の花びらをぱらぱらと落とす。
『プロムナード』で、河川敷やら中華街やら高架下の写真を、歌詞に合わせて写す。
そんな発想、素人の私でも思いつく。あまりの安直さに愕然としてしまった。
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とはいえ、たしかに映像自体は、曲の歌詞や雰囲気に合ってはいたかもしれない。
ただ、それが「ライブでメンバーの姿を邪魔してまで写すほどの演出的な効果をあげているか?」となると、私の中では完全に、もう本当に完全に、有無を言わさず、瀬戸内寂聴も大きく息を吸って叫ぶほど「否」である。
「こんな曲だから、こんな映像にしとこう」という安直なアイデアとクオリティに、心の底から呆れてしまった。
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いちおう言っておくと、私は、ライブで映像を使うこと自体に否定的なわけではない。
例えば成功例としてパッと思いつくのは、イギリスのロックバンドTHE 1975の以下ライブ映像だ。
その曲のMVをセルフオマージュして、巨大なルームランナーのようなセットも使いながら、決して演奏の邪魔にはならず、ライブでしか味わえない演出として素晴らしい効果をあげている。
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ライブで映像を使う時、絶対意識しなければならないのは、
「こんな曲で、“こんな風に演奏されて”、“それをお客さんがこう観るから”、こんな映像にしよう」
という視点である。今回のライブに使われた映像には、その視点が決定的に欠けていたように思われる。
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そんなに最悪だったSAKANAMONの映像での演出のなかでもとりわけ最低中の最低だったのが、『烏兎怱怱』である。
これは映像のクオリティ云々ではなく、私の個人的な事情が大きい。
何を隠そう、この曲は私がSAKANAMONの中でいちばん好きな曲なのだ。
決して目立つ曲ではないと思うが、SAKANAMONの十八番とも言える「緩急」が随所にある名曲だと思う。
最初のピアノの静かな感じと、途中や終盤に挟まれるロックな演奏の格好よさ……マジで最高である。
『烏兎怱怱』が私の中で特別な曲になっているのは、曲自体の良さだけではない。
いちばん好きな曲なのに、ライブで見たことがなかったのだ。
アルバムリリース時のツアーでは多分演奏したはずだと思うが、当時のライブに私は行けなかったのである。
大学受験の年だったので、ライブに絶対行かないことを決めていたからだ。
それから無事に受験は終わり、SAKANAMONのライブを楽しみながらも、毎回思ってきたのは「烏兎怱怱、やっぱりやらなかったな」ということだった。
MVもないし、ピアノがあるから演奏的にもやりにくいしで、普段のライブではやらなさそうな曲だから、仕方ないとは思っていた。
そんな中で、今回のアンケート企画が来たとき、「もしかして……?」と期待しながら迷わず回答し、ライブ中もドキドキしていた。
そんな『烏兎怱怱』を、元生くんが曲紹介をして演奏をし始めた時、泣きそうになってしまった。
でも、あの憎き映像がスクリーンに映し出されて、失望とともに涙は引いていった。
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たしか『烏兎怱怱』を含んだパートが終わった後のMCだったと思うが、元生くんがこんなことを言っていた。
「みんなが選んでくれた曲たちが、みんなの人生のBGMになっていると思うとすごく嬉しい。これからもそんな曲を作っていきたい」
まさに、そうなのである。
『烏兎怱怱』は、私の受験時代を思い出す曲として、好きなのにライブで観れてこなかったもどかしい曲として、それでも曲自体の格好良さに聴くたびに鳥肌が立つ曲としてーー私の人生の中でも特別なBGMとして、大切な曲だ。
タイトルに鳥が入っているから、鳥の映像?
「真っ赤な空がセピアに染まっていく」映像?
マジでふざけんなよ。
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『烏兎怱怱』に限らず、あの映像たちは、「演出としてライブの演奏を際立たせる」どころか、ただただ「メンバーの姿を邪魔しながら曲のイメージを固定化させて、お客さんがそれぞれ持っているその曲の大切な思い出やイメージをぶち壊す」効果しか上げていなかった。
本当に(我ながら何回「本当に」と言っているのだろう)最悪だ。
映像を作ったのは誰かとか、演出の担当者とか、そんなのを特定するつもりは皆無だけれど、もし関係者の人がこれを読んでくれていたら、どうか今後は、大切な曲の演奏と一緒にあれを見る観客の気持ちも考えてほしい。
SAKANAMONの曲は、そのライブの演奏は、彼らが本気で作り上げているものだし、それがファンにも伝わっているから、爆発的に売れずとも根強いファンがついているのです。
作るなら、SAKANAMONの曲に、ライブに、会場に、メンバーに、ファンに、真剣に向き合って、映像を作って演出してください。
生半可なものじゃ、絶対に感動させられませんよ。
だめだ。無限に悪口が出てきてしまう。
あの憎き映像についてとやかくいうのは、ここまでにする。
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おそらく読んでいる人も不快だろうが、書いている私も、書かないでいいならこんなことは書きたくなかった。
でも、これからもSAKANAMONのライブを心から楽しみたい切実なファンのひとりとして、どうしても言っておかなければならない気がしたから、書くことに決めた。
暗いというかネガティブな気持ちのまま終わるのも嫌なので、最後に今回のライブの良かったところを、断片的に・おぼろげに・簡単にだけれど書いておきたい。
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『ハロ』
最初の元生くんの弾き語り風のところから、照明も含めてめちゃめちゃ良かった。
『カタハマリズム』
なんかよかった気がする(うろ覚え)
『PLAYER PRAYER』
たぶん久しぶりにやってくれた?のもあって、すごくよかったとおもいました(小学生)
『マジックアワー』
”浮かぶ頭はもう〜”らへんの歌い方に鳥肌が立った。
『ミュージックプランクトン』
ベースがすっごくよかった。今回ベースが良くも悪くもあまり目立ってなかった気がするけど(音自体ちょっと小さめだった?)、この曲の途中でベースのワウっぽいエフェクトがかかった音がすごく面白くて、聴いててとても気持ちよかった。ライブ中に興奮して熱くなると動き回って暴れる森野さんは、いつも見ていてこっちも楽しくなる。
『光の中へ』
よかった。ただ良かった。特にギターがめちゃくちゃかっこよかった。と思う。
『猫の尻尾』
蒼山さんの佇まいに見惚れ聴き惚れつつ、途中の暴れるところが格好良すぎて鳥肌。
『TOWER』
会場中の全員が「最高だぜ」と思ったのは間違いない。
ぜんぶ良かった気がするけど、私が注目したのはドラムである。
今回のライブを通して、ドラムはシンバルの音が異常に良かった(毎回キムさんのドラムは特定の音が異常に良い気がする)。「TOWER」では、フロアタム?かな?とにかくシンバル以外の音も良かった!
そのうえ、最後の最後でたぶんだけどドラムアレンジをしてくれた、はずだ。原曲にないリズムだった気がする。それがめちゃくちゃ気持ちよかった。
SAKANAMONのライブでドラムアレンジがあるのは割と珍しい気がしたから、最後の最後で!と本当に興奮した。もっとドラムアレンジしてほしい。ベースアレンジもギターアレンジもボーカルアレンジも。
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まとめ。
総じて、いろいろ思うところはあるとはいえ、今回のライブもすごく楽しかった。
SAKANAMONの曲を「真向」から選んだファン。
その曲を「真向」から選んで演奏したメンバー。
それを皮肉にも「真向」からぶち壊した、あの映像ーー。
振り返ってみると、それはそれとしていい思い出になりそうだ。
ただ、でもやっぱり、あの映像は一生見たくない。
もちろんあの映像に感動した人もいるのだろうけれど、なんならそういう人の方が多いのかもしれないけれど、それは私の個人的な気持ちとは全く別の話だ。
あんな映像を作るのにお金をかけるなら、サポートメンバーを依頼して演奏の厚みを増すだとか、照明を増やしてみたりだとか、その他機材をグレードアップしたりだとか、もっと演出として効果的なことがあるはずだ。
それが、私の率直な感想である。
いつか、キーボードもしくは生ピアノを迎えた編成での『烏兎怱怱』を聴くのが、私の夢である。
いや、無駄な演出のない『烏兎怱怱』なら、何でもいい。
ともかく、SAKANAMONを好きな気持ちはまだ変わっていないので(むしろ強まったと言ってもいい)、これからも彼らを応援するしかない。
私も自分の人生に真向から立ち向かって、たまには陳腐なイメージや何やかやに悩まされることもあるだろうけれど、大好きなBGMと共に乗り越えて、過ごしていきたい。
最後まで読んでくださり本当にありがとうございました。
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