中野盆踊り大会
陽が沈むとともに、群衆の熱気は増していった。夜風が夜の闇をゆっくりと吹く頃には、混沌とした美しさがあった。
酔っ払いも子供も、ジジイもギャルも、品のある奥様もはげ散らかしたおっさんも、下手糞もうまいのも、ガイジンもジャップも、みんなひとつになって踊る喜びに身を任せる。最初に遭った恥じらいは消えてゆき、もうそこに恥も外聞もない。
踊り子の見よう見まねで踊る。踊り子もまた良かった。凛としながらも、溢れ出る喜びが、顔から、全身から、伝わってくる。ただ、美しかった。踊る喜びに身を投じているという、その一点で僕らは一体となり、粗相も狂気も許される。
まつりとは、こういうものかもしれない。俗な混沌の中にひとすじの趣きを感じた。
「….招き猫が…」「….まだ終電まで…」「…..ストレス発散…」「二次会に…」「たのしかったね….」
帰り際、雑踏は人々を飲み込んで、また新しい朝が来る。