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在宅における失敗談 5選

在宅業務はとてもやりがいがあります。
一方で外来業務より点数や加算の点が複雑であったり、患者個々で対応方法が異なるため、様々な困難や失敗に直面することがあります。

今回は、私が実際に経験した在宅業務での失敗を5つまとめました。
在宅での失敗など山ほどありますが、学びのあった失敗を5つまとめましたので、参考になると幸いです。




1. 一包化のホチキスを間違える

在宅患者さんの一包化をホチキスするのは一般的になってきていると思います。
一包化したもの同士をホチキスする際にミスが生じ、そのまま患者さん(施設)に渡してしまうというケースがありました。
これは経験されたことのある方は多いのではないでしょうか?

起こった間違いとしては、
▶下剤の別包ホチキスのつけ忘れ
▶用法の異なるもの同士をホチキスした

などがありました。

ホチキス止めの間違いは、施設において誤投与を起こしてしまう可能性があります。
それは薬剤師の専任業務である監査と同様に注意が必要であると考えます。

ホチキスを事務さんに手伝ってもらう場合には、最終的に薬剤師のチェックがはいるようにしておいた方がいいですね。

ホチキスと同様に施設のカレンダーへのセットも監査同様に注意が必要ですね。


2. 呼吸困難にオキノーム散、鎮痛のためと勘違い

自分が薬剤師1年目の時のエピソードです。

在宅訪問開始となった個人宅の年配女性に、オキノーム散が処方されました。その女性は認知症の旦那さんとの2人暮らしで、家族に理解してもらうのは困難な状況です。
初回訪問時に処方されたのがオキノーム散でした。
私はオキノーム散を「痛み止め」という認識で、患者さんに説明しましたが、実際は呼吸困難に対する処方で、結果的に誤った服薬指導をしてしまいました。
患者さんが亡くなられた後に呼吸困難に対する処方だったということが分かり、非常に悔やまれました。

呼吸器疾患の終末期における呼吸困難の症状の緩和には、モルヒネやオキシコドンなどのオピオイドが使用されることがあります。
いずれも適応外使用であることには注意が必要です。
このことは当時知ってはいましたが、残念ながら指導に生かすことは出来ませんでした。

【反省点】
①医師から患者さんの情報を詳細に仕入れるべきだった
②患者さんからヒアリングを丁寧に行うべきであった

①について、この時患者さんの情報は全く貰っておらず、経過や病状が不明な状態での介入開始でした。
医師によっては丁寧に情報を送ってくださることもありますが、全く情報が無い時もあります。
全く情報がない中では、この例のような出来事が生じる可能性があるため、正しく服薬指導をするという点でも医師に連絡して詳細を聞くべきです。

②について、患者から今のつらさを聞き出すことができれば、会話の途中で疼痛への使用ではなく呼吸困難への使用であることが分かった可能性があります。患者さんからのヒアリングは非常に大切であることを再認識しました。


3. 透析患者、薬局の自己負担金なしと勘違い


透析患者さんのような更生医療を利用している患者さんの窓口負担はゼロであることを外来で経験していました。

施設に新規で入居された方が透析をしており、入居後は在宅医から処方を出してもらうことになりました。
外来の経験から、私は契約の時「透析をされているのであれば薬の自己負担金は生じない」とご家族に説明してしまいました

しかし在宅クリニックからの処方箋には更生医療の公費番号が入力されておらず、そのまま調剤してしまいました。その結果自己負担金が発生してしまいました。
気づいた時には既に遅く、施設長さんやご家族さんへ謝罪や相談をすることになりました。

透析患者さんの窓口負担がゼロになる(更生医療を利用できる)のは、透析を実施している医療機関の処方に限られるということをこの件で学びました。

【反省】
在宅の現場には外来と違い、保険に精通した事務さんがいるわけではありません。そうなると在宅対応する薬剤師が保険について正しく理解する必要があります。
このような経験が今の発信活動の原動力の1つになっていることは間違いありません。

みなさんも金銭トラブルは避けたいですよね。(ホントやーよ。金銭トラブルは。)


4. 医師から依頼のあった患者に在宅の契約を断られる

医師から新規の個人宅の患者さん。ご家族に居宅療養管理指導の契約を説明した所、断られてしまったケースがありました。
その家族の言い分としては、
「高い」
「その値段なら桃が買える」

というようなものでした。
他の例では、
「その値段なら卵が買える」
と言われたこともあります。

何かと食品と比べられ、悔しさを味わいました。
桃や卵に負けたのか、と。。

また、医師から依頼があったということは、
「この患者さんには薬局の訪問があったほうが良い」
という医師の判断があったということなので、
その医師の期待に沿えなかったことに対する悔しさも感じました。

【反省】
契約での話術が下手だったことが原因の1つです。
ご家族が薬を取りに行けるような状況で、薬局の在宅訪問を利用してもらうにはそれ相応のメリットがあることを説明する必要があります。(この話術については、また紹介します)

基本的に医療のことしか勉強してこなかった薬剤師には、契約は苦手分野かもしれません。しかし、薬の説明同様にメリットをしっかりお伝えできれば断られる可能性は減らすことができます。


5. 中止となった薬を抜き忘れたまま施設にセット

施設患者さんの薬をカレンダーにセットしているケースです。
医師の診察で中止指示があったにも関わらず、その中止薬を抜き忘れるという事例がありました。

原因としては、
①患者さんの薬は1週間分余裕があった
②処方された薬が置いてある場所が複数に分かれていた
③中止指示が出た段階で即対応すべきであった

が挙げられます。

①は、例えば定期診察の際に中止指示があった時に、中止すべき薬が1週間分余っているという状況になります。
すぐに中止したい場合はこの1週間分から薬を抜く必要があります。
この状況でも抜き忘れの可能性がありますが、さらに②の状況が重なるとより抜き忘れの可能性が高まります。

例えば1週間分の薬がカレンダーセットの関係から、3日分は施設に、4日分は薬局にあるという状況になるとさらに抜き忘れの可能性があがります。
この状況は中止薬抜き忘れリスクが高いので極力避けるようにしたいですね。

中止薬が出たと分かった瞬間にメモを残して、後から絶対確認できるようなリマインダーツールを用いるといいです。
自分の場合は薬局内のチャットアプリに変更点など、後で忘れそうなことがあったらすぐに投稿するようにしています。



在宅業務では、薬剤に関する知識だけでなく、患者さんとのコミュニケーション能力や、点数の知識、柔軟な対応力が求められます。
これらの失敗談を参考に、より安全で質の高い薬剤サービスを提供できるよう、日々の業務に取り組んでいっていただければと思います。


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