仕事したくない(2)

これまでのあらすじ:
 勤め先のずさんな人事と人間の尊厳を軽んじる上層部の態度に辟易し、仕事のモチベーションの一切を失っていたけれども。「仕事したくない」を書くことでなんとかやる気を取り返したように見えたもつかの間、此度の疫病騒動で働いたぶんの賃金を貰えない運びに。奴隷状態に陥ることに抗い労働時間を積極的に短縮するも、すべての仕事には期限と顧客が存在するため止まることは許されず——!?

こんばんは。これまで夜毎にワイン1本以上を飲み干していた酒浸りをここ数日きっぱりやめたところ、摂取カロリーが急減し貧血を起こしているけれどもです。バカは死んでも治らない……。

仕事したくない(2)。

さっきメーラーを開いたら、偉い人から「リリース予定日をすぎても何の音沙汰もないのはどういうことか。状況が状況だからと言って甘えているのではないか。説明求ム」というメールが届いていて、それを読んだ瞬間に胃がギューッとなってワーッと死にたくなってしまった。いや、自業自得のギューではあるのだが。

けれどもはここ3年ほど、普通の人事判断力があればこんな小娘には任せないような大仕事を一手に引き受けさせられており、さらにその仕事を回すための残業や休日出勤に対し上層部から舌打ちされている状況にある。ちなみに回ってきた理由は「期待されているから」とかではなく、ただの考えなしの丸投げである。「奴隷労働をしろ」という無言の圧力に抗して次の8月で早3年。胃を病み、肌をぐちゃぐちゃにし、帯状疱疹を発症しながらも翌週の会議の準備が終わらないため休まずに働くような献身がすべて「莫大な経費を使う厄介者」という評価に還元にされてきた。ひどい話である。

まあ、とはいえデートのために有給を使ったり、精神統一のために有給を使ったり、甚大なストレスをやりすごすべく酒を飲み始めたらどうにも飲みすぎてしまい翌日起きられず突然の病休をくりだすなど、やりたい放題やっている。すべては復讐である。そしてこの復讐がまた私の立場を悪くしている悪循環である。奴隷というのは本当につらい。人権がない。

ちなみに奴隷なので先日不慮の事故で壊れてしまった仕事の機材の修理費を半額自腹で負担しろと強いられた。しめて5万。誰が払うか。奴隷制度は本当に悪であることを身を以て痛感している。私は今後人種差別の歴史の一切を許さないだろう。神は私にレイシズムに中指を立てさせるためにこの状況を与え給うた。

中指を立てても時間は止まらない。
相当の賃金が貰えない状況下で仕事をするためのモチベーション・システムを早急に構築しなければならない。


【案1 花の命は短いのよ作戦】

けれどもは先週30歳になった。おめでとう。
転職市場で審査対象となるのは①業績、②年齢、ざっとこの2点である。
つまるところ、とにかく時間がないのだ。華々しい業績があるからといってそれが年相応のものであればあとは有用性マッチングに賭けるしかなくなるものだ。長い時間をかければ業績が立つのは当たり前のこと。私個人としての人材の魅力は時間とともに減耗するばかりである。
将来のキャリアを見越せば、いまここで時間賃金のことにかまけている場合ではないことは一目瞭然である。

【案1のリスク】

・不確かなもの(未来)に賭ける博打性をどう処するか。私はあまり私の未来に期待していない。どうすれば自分を信じて未来に期待できるのか、その方法を見つけられるか心もとない。
・収入を補塡するために副業を始めてしまったので、しばらくは人生の時間が労働に奪われることになる(なぜこんな年齢にもなってバイトなどするはめになってしまったのか……情けなさすぎる)。
・そして、この年齢(まだ学びの余地のある年齢)において労働に人生を捧げることがどれだけリスキーかはっきりとわかる。胡乱な20代を過ごしてしまったことを反省し、早急に世界に追いつくための学習を進めなければならないにもかかわらず、ここで人生を一旦止めることは果たして得策なのか?

【案2 三十六計逃げるに如かず作戦】

孫子もそれを推奨している。
また、FXトレーダーも損切りは大事だと言っている。
責任感を焚き火で燃やし、何もかもかなぐり捨てて明日辞表を叩きつける。

【案2のリスク】

・①業績を捨てて②年齢に賭けるには、私は社会人として不適合すぎる。②年齢に賭けるということはすなわち「若さを担保とし馬車馬のように働きます」と宣言することである。できない。
・これまで必死に築いてきた何百名もの仕事相手との信頼関係をすべて棄ててこの業界で生き続けることは絶対にできない。狭い世界なのだ。
・となると別業種への転職という選択になるが、けれどもは現職を愛しており、身を転じることは望ましくない。
・あと、自己都合退職について正当な理由が今のところ立たない。
・自分の企画を見捨てるほど情熱のない仕事の仕方はしていない。

【案3 死ぬ】

死ぬ。つかれた。

【案3のリスク】

・人々が泣く。
・いままで人々のことを「泣かないで」と抱きしめてきたのに私が泣かせては説得力がない。どころか、これまで伝えてきた「あなたは素晴らしい」すらも私が死ぬことで無効になってしまう。捧げる愛はすべて私の人生を担保にすることしかできなかった。そのような、私を担保としたちっぽけな愛であっても、人を勇気づけてこれたことを私はもう知ってしまっている。
・その笑顔を自分勝手に台無しにすることはできない。私はこの人生への責任として、どんなに苦しくとも事故か病気以外で死んではならない。


結論:【案1】を採るしかないっぽい。

であれば、【案1】を遂行するためにするべきこと:
・奴隷根性をインストールするのだけは絶対に拒否する。
・外部の仕事相手への奉仕精神を強化する。
・低次の自尊心と低次の自己愛を極力無化する。
・業務を学びの代わりとする(奇跡的に不可能ではない)。
・現在でなく未来を見据える。
・社会貢献を自己満足回路に組み込む。
・大きな主語としての人類を愛する努力をする(今はできていない)。
・目標期限を定め、具体的な作業計画を立てる。
・世界の滅亡を望むのをやめる。
・死にたい気持ちを滅却する。
・全部終わったら3か月休むことを自分に約束する。

いけるだろうか、これで。やる気を回復できるだろうか。人生として選択を誤っていないだろうか。不安しかないが、とにかくいくしかない。
なぜならば私には明日死ぬことが約束されていないからだ。

私へ:
こんなん書いてる暇があったら仕事しろ。