「未定」【二話】
僕は目が悪い。眼鏡だ。黒縁の。
コンタクトに変えようかなんて思ったこともあったけど、眼鏡を外すと馬鹿に見えると言われたときに一生眼鏡を使い続けると誓ったのだ。
そんなことを待合室で思い出していた。
名前が呼ばれた。
診察室へと向かうと見慣れた黒いドーナツがそこに並んでいた。
いつもの検査をした後、なんだかよくわからない機械を握らされた。
いや、なんだ?これ。
「初めてだったかな?心の視力検査のほうは。」
「心の視力?」
何を言っているのだろう。
「ああ、心の視力だよ。こんな機械で測れるって言うのも、なかなかだけどね。」
「はあ......」
なんだろう、心の視力って。
「悪い人は悪いんだよ。本当に何も見えていない。でも君は大丈夫そうだ。」
幸い僕は心の眼に不具合を持っていないらしい。
「あ、そうなんですね?」
「基本的に心の眼も顔についている目も性質は同じさ。その眼に、これからもいろいろなものを見せてあげなさい。」
「分かりました。あのー先生、どうしたら心の眼は良くなるんですか?」
「例えば……」
目が、覚めた。
最悪だ、夢だった。
いつも大切なことを夢は教えてくれない。僕だけなのかもしれないけど。
そして夢はいつもめちゃくちゃだ、会話はまともじゃないし、ちゃんとつながってないのに話が成立しやがる。だから僕は夢があんまり好きじゃない。
寝起きで朦朧とした意識で時計に目をやった。
まだ2時。真夜中だ。寝よう。もう一度。
でも少しだけ考え事をすることにした。
心の視力って、なんだ?