ふりかえりカンファレンス2024に参加して、アンラーニングについて考える
今年もこの季節がやってきました!
という事で、ふりかえりカンファレンス2024に参加してきたので、その様子や考えたこと諸々を書いていこうと思います。
カンファレンスについて
今年はハイブリッド開催
今年のふりかえりカンファレンスは、オンサイトとオンラインのハイブリッド開催でした。昨年までのカンファレンスもすばらしいセッションばかりだったしオンライン側にも惹かれたのですが、なんとオンサイト側は一日OST形式でひたすらふりかえりについての話ができるとのこと。色んなチームで行われているであろうふりかえりのリアルについて話を聞くことができるチャンスだと思い、オンサイト側に参加しました。
現地会場はフィードフォース様
現地会場は、株式会社フィードフォース様のオフィスでした。
企業オフィスを会場にしての勉強会はあまり経験がなかったのですが、とてもキレイでおしゃれなオフィスでびっくりしました。
ソファーでゆっくりもできるし、分かれてOSTをやるにも全体でスクリーンでセッションを見るにも丁度よく、素晴らしかったです。
ざっくり総括は「最高」
個々の細かい話は後述するとして、通しての総括は、ともかく最高の体験でした。お弁当も美味しかったし、どこでする話も熱量が高く学びが深く、ちょっと後ろでゆっくりもできたり、3時のお弁当(2個目)も美味しかったです。スタッフの方々の準備や合間での対応も最高でした。本当にありがとうございました。
最後の方は大分クタクタになっていて、ソファーから動けなくなっていましたw。周りを見回すと、会場全体でも割とそんな感じでやり切った雰囲気が漂っていたような・・・。
現地参加者の満足度の高さが分かります。
キーノート「リフレクション」って何?/熊平 美香さん
リフレクションの定義と必要性
リフレクションのお話。「内省」という日本語の印象から、個人に閉じた、自分自身をいかに見直すかという話と勝手に考えてました。ところがそんな狭い話に納まる事もなく、キーノートのお話全体としては以下のような流れだったと受け止めています。
リフレクションがどういうものか
今、ビジョンを掲げそれを実現していくために何が必要か
そのために、どう学び成長していくか
反省ではなく経験から学ぶのがリフレクションであり、学びのサイクルを素早く回すために経験をどう深堀りするかのお話で、今までアジャイルの文脈でインプットしてきたことと重なる部分が多くありました。そこで、今まで聞いてきた話とは少し違う方向に一歩踏み込んだ話がでてきたり、違う角度からの視点を受けて改めて整理しなおす事ができたりと、まさに違う領域の知見がコネクトするいい感じの効果が実感できました。
意見・経験・感情・価値観
リフレクションに欠かせないメタ認知のためのメソッドとして、「認知の4点セット」が紹介されていました。
意見:あなたの意見
経験:その意見に関連する経験(知っていること)は何ですか。
感情:その経験には、どのような感情が紐づいていますか。
価値観:そこから見えてくるあなたが大切にしている価値観はなんですか。
キーノートの冒頭から、熟語の並びが大好物な人たちにパワーワードがぶちこまれ、会場内の多くの人の中できっといきいきと叫ぶボイスが鳴り響いていたはずです。
この4つの概念による分析は、最初は意見の背景にある価値観を知り、どうして自分がそう思うのかを認知する、というメタ認知のためのメソッドとして紹介されましたが、その後もキーノート内の多くの場面で登場し、様々な使われ方をしていました。どうも意見から価値観に向けて一方向に流れるだけのものではなさそうなので、私なりに整理してみました。
何を思ったか、から
「意見(思い)→ 経験 → 感情 → 価値観」ベースに持っている価値観を知る
何かを思った際に、それを深く分析する
何を感じたか、から
「ネガティブな感情 → 経験 → 価値観 → 意見(ギャップ)」ギャップがあるという事実に気付き、アクションに繋げる
感情はビジョンのWhyを見つけるキー
伝えたい事のWhy、から
「価値観 → 経験 → 感情 → 意見(伝えたい事)」意見の大元にあるWhyを共有する
ビジョンを伝える
過去の学びから
「意見(知識)→ 経験 → 感情 → 価値観」今の知識をどう学んだか、どう今の自分に繋がっているか知る
経験から
「経験 → 感情 → 価値観 → 意見(学び)」経験から何を得て、どう次につなげるか
想定の結果と実際の結果の差
言い出せばもっと色々と出てくるような気がします。
何をとっかかりとして、どのように掘り下げていくのか、考えやすくてとても使いやすそうだなと思いました。けんけんかんかん!
後はひたすらOST
テーマ出しとOSTと
カンファレンスの目玉である、耐久OST。おしゃれオフィスの中でテーブルを配置して、ひたすら話して聞くという贅沢な時間でした。
ふりかえりカンファレンスなので、時間の区切りごとに都度ふりかえりをする、という建付けでやっていましたが、正直時間が足りずに毎回ギリギリまで話していたような気がしますw
やはり現地参加を選んだ熱量の高い集団だけあって、テーマ出しはあっというまにほぼすべての枠が埋まりました。どれも魅力的なテーマばかりで、元々は他の様々なチームや組織ではどんな感じでふりかえりをやっているかを聞いてみたいという目的でしたが、想像以上に濃い話が出来たし聞けました。
対話の機会
色々な勉強会やカンファレンスに参加するようになって、回数を重ねるごとに、こういう場で対話する事の重要さをますます感じています。自分の考えを整理し、アウトプットしてフィードバックを得、人の考えを聞いてさらに気付きを得る。また、普段一緒に仕事をしている訳では無い、様々なバックボーンを持った方との話は本当に刺激的です。
聞いているだけでももちろん色々な学びはあるんですが、誰かの意見で気になった事を深堀りしてみるのも良いし、思いついたことをまずは話し出してみるだけで、自分でも気付いていなかったことがその場で明らかになったりします。
何度も顔を合わせた事のある方と話をするのも、初めて会う方の話を聞くのも楽しかったです。参加者の皆さん、ありがとうございました。
とはいえしんどい
刺激的で学びが深い分、疲労度も半端なかったです。すべての時間への参加はできませんでした。前日に遅くまで用事があったり朝移動のため早起きだったりと、コンディションの整え方が万全でなかったのが悔やまれました。次の機会に向けてのふりかえりポイントですね。
焚き火
だいぶ疲れていたので、ふりかえりの手法としてふりかえりカタログでも紹介されている「焚き火」を最後の時間にやってみました。
焚き火映像を流して、それを見ながら、あとはもう流れに任せるだけ。穏やかな時間が流れつつ、思った事を自然に語るという、なんとも癒されるとても良いふりかえりでした!一日中フル回転していた頭がいい感じにクールダウンできました。
アンラーニングするという事
キーノートでの「アンラーニング」
キーノートの中で、学びと成長の一つの要素としてダブルループ・ラーニングとアンラーニングが紹介されていました。
アンラーニングは、「過去の成功体験などに基づき形成されたものの見方/行動様式をアップデートしていくこと」と定義され、過去の成功から得た学びをメタ認知により分析するとともに、それが通用しなくなった場合には、過去の学びを手放す必要があるというものです。
経験学習とアンラーニング
Q&Aの中でも、アンラーニングをやる基準は何か?との問いがありました。回答として、きっかけは「今の状態が合わない時」、それが何故かから考えることが大切との事でした。
何か問題が起きた時、上手くいかない時、今までのやり方が通用しなくなってきた時。アンラーニングの必要性の説明では、おおよそこんな感じの言葉が並んでいます。
この辺りで、少し自分の中で混乱が起きていました。リフレクションにせよふりかえりにせよ、アジャイルの文脈の中では経験学習が大原則になっています。経験から知識を得て、検査・適応のサイクルをくりかえすことで学びや成長を少しずつ重ねて先に進んでいく場合に、「アンラーニング」というものはサイクルの中にどう組み込まれるのでしょうか。
「過去の学び」とか、「手放す」という概念が、イマイチピンと来ていませんでした。
アンラーンするべき事をどう認識するのか
せっかくのOSTという機会ですし、キーノートで浮かんだ疑問についてさっそくテーマとして出してみました。
その直前の小糸さんの「キーノートの感想をゆるーく語りたい!」のテーマでも、お弁当を食べながらそれに近しい話をしつつ、そのまま同じ場所で続いた私の「アンラーンいつするの?」のテーマは、アンラーニングについて話にとどまらず、その時々で色々な方向に流れてすごく盛り上がりました。ご一緒した皆さん、ありがとうございます!
ちょうど、転職してしばらく経った・転職したばかり・転職が決まった・転職活動中、という人が集まっていて、転職というタイミングでのアンラーニングが話題になったりしました。
新しい環境で新人として慣れていく際、それまでの経験をアンラーニング
新メンバーを迎え入れた側が今までのやり方をアンラーニング
オンボーディング内容を継続的に見直し、自分達の状態を見直す
自分達の製品・組織はどんな製品・組織かを、新人の立場で全メンバーに聞いてみて、改めて認識をすり合わせる
ロールが変わったときにアンラーニング
社外のイベントに出て、組織によって違うやり方に触れてアンラーン
話していて、「上手くいかない時」というよりも、違う考えや文化に触れた機会がアンラーニングのきっかけとなるのでは?という事が浮かびあがってきました。異質なものに触れてそのギャップを感じることで、改めて自分の状況を認識し、それが上手くいっているのかそのままでいいのかそれともさらに良くしていけるのか、初めて考えることができるのではないかなと。
とはいえ、ここでいうアンラーニングが「過去の学びを捨てる」ことなのかというとそんな事はなさそうで、今までのものに違う考えや視点などの新しい経験が結合し、相乗効果が生まれていくものだと感じます。
学び続けるという事
成功体験から得た学びをただ実践していたり、ただひたすら走り続けている状態だったりでは、現状を意識すること自体が難しそうです。それに対し、経験学習のサイクルを回していくという事は、例えば上で挙げた転職などの明確なきっかけが無くても、知識をアップデートし続ける=アンラーニングし続けている、という事ではないかな?と考えています。
ラーニングを続けるとはアンラーニングを続ける事だ、という不思議な結論になりましたが・・・
「過去の成功体験を捨てる」だとちょっと仰々しく聞こえますが、得た学びを捨ててまた学ぶという無限ループを繰り返す訳では無くて、今の状況に対して、立ち止まりふりかえって確認し、そこからの変化を許容していくことなのかと。いつものアジャイルに戻ってきた感じがします。深い。
まとめ
キーノートの素晴らしい話を材料にして、自分の考えを話し、様々な人の話を聞くことができた、最高のカンファレンスでした。
来年の日付も決まっていたので、今から楽しみです。現地チケット争奪戦、頑張ろう!
おまけ
ショパン先輩、最高でした。