『あの路』 原画展
先日、いせひでこさんの絵本原画展を観た。
「さよなら」とは何かをテーマに、
いせひでこさんの最新作
・『けんちゃんのもみの木』(文・美谷島 邦子)BL出版
(日航機事故で九歳のけんちゃんを亡くされた美谷島邦子さんの文)
わたしが文を書かせていただいた
・『あの路』平凡社
それに
・『かしの木の子もりうた』(原作・ロバート・マンチ 文・細谷 亮太)岩崎書店
の三作の原画を一堂に集めた展示会 ーーー
場所は、安曇野の絵本美術館「森のおうち」
http://www.morinoouchi.com/exhibition.html
10月5日までやっている。
* * *
『あの路』のフランス語訳版 (Seuil Jeunesse )
いせひでこさんの原画には
いつも
絵本とは、また違った感動がある。
なんだろう・・・
観る者の
その時に抱えている
心の物語、
たましいの状態によって、
そのたびごとに
ちがった風光が現れ出る。
見えないものが、見え出すように・・・
*
『あの路』は、三本足の犬と少年との孤独な交流と、別れの物語だ。
この三本足の犬は、パリのとある路地裏に実在する。
その路地裏に、わたしの住んでいたアパルトマンがあった。
狭くて汚い路地裏を、三本足の犬が自在に駆ける。
すると、世界は自由になった。
いせひでこさんは
実際に三本足の犬と会って
たくさんお話して
たくんさんスケッチした。
*
『あの路』の原画は、今回、美術館の二階の空間に展示されている。
なんだろう、その部屋に一歩入ると、白い静謐に抱かれるような気持ちになる。
雪のような白
結晶の光と沈黙
小さな窓から
安曇野の緑が
こっそり覗いている。
*
遠くに立つ犬の姿
いつも、うるうるしてしまうよ・・・
*
ひとは誰でも
心のなかに
三本足の犬がいる。
〈あなた〉は、
〈わたし〉をみている。
さよならのむこうに立って。
ずっと。
* * *
しゃがんだ。
水たまりに空をみつけた。