感染症関連知見情報:2024.04.11

皆様

本日のCOVID-19情報を共有します。

本日の論文は、LANCETより3編、NEJMより1編です。やはりLong COVID関連の論文がジリジリと増加傾向にあります。COVID-19 survivorの、最大の懸念事項の一つが長期的後遺症です。

LANCET の1編目は、ノルウェーのデータを用いて、Long COVIDおよび急性合併症後の予防におけるCOVID-19ワクチンの影響を分析することを目的とした研究です。COVID-19ワクチンの接種は、すべての研究コホートにおいて、Long COVID症状の発症リスクの有意な低下と関連していることが示されました。
2編目は、COVID-19パンデミック時代の参加者とパンデミック以前の参加者を比較し、所見の特異性(血漿中の抗原の存在を評価)を理解することを目的とした研究です。SARS-CoV-2は感染後14ヵ月まで何らかの形や場所で持続する可能性があり、急性感染がこの持続に影響することが示唆されました。
3編目は、前臨床試験においてニルマトルビルと比較して高い効力と有効性を示した、強力で広域スペクトル、経口生物学的利用可能な低分子3C様プロテアーゼ阻害剤であるGST-HG17とリトナビルの経口投与の有効性と安全性を、XBBおよび非XBB株に感染したCOVID-19(コロナウイルス感染症)患者を対象として評価した研究です。
GST-HG171+リトナビルによる治療は、明らかな安全性の懸念なしに、COVID-19を接種した低リスクの成人患者において、症状の回復とウイルスクリアランスにおける利点を実証しました。

NEJM論文は、RSVプレフュージョンFタンパク質ベースの母体ワクチン候補(RSVPreF3-Mat)の有効性と安全性について評価した論文です。
乳児のRSV関連下気道疾患のリスクは、医学的に評価されたRSVワクチン接種群の方がプラセボ群よりも低いが、早産リスクはワクチン接種群の方が高いことが示唆されました。

報道に関しては、「流行危機なのに「麻疹ワクチン」が足りない大問題 武田は自主回収、第一三共・田辺三菱は出荷制限」が間違いなく必読です。麻疹ワクチンの不足を引き起こしている国内製薬企業、そして国産ワクチンにこだわると言う建前の姿勢を見せつつ、国内製薬企業を保護しようとする厚労省、この状況を安全保障の観点からも問題であると記事は指摘しています。このような状況になっても、ワクチンを輸入する措置は取らず、自分たちの利益のためなら国民は不在にしても構わないというロジックが明らかです。しかも記事が指摘する通りに、大手マスコミはこの事を大々的に書こうとはしません。これは、マスコミ記者が不勉強で麻疹の危険性を理解していないのか、それとも、大手広告主である製薬企業にそっぽをむかれたくないのか、はたまた、官僚とズブズブの記者クラブで情報がもらえなくなるのが怖いのか?この全てが当てはまるのだと思いますが、これではまるで、反社組織同士の駆け引きのようです。
解決策は明らかなのに、国民不在のまま時間が経過すれば解決すると思っているのでしょう。これは大臣や政治家の責任も大きいです。亡国の首相は、友好国のl大臣と2ショットを撮って喜んでいるようですが、利権省庁や製薬会社を無視して、大量のワクチン購入契約でも結んで帰ってくれば国民の支持も少しは変わろうと言うものです。

高橋謙造

1)論文関連    
LANCET
Effectiveness of COVID-19 vaccines to prevent long COVID: data from Norway

*ノルウェーのデータを用いて、Long COVIDおよび急性合併症後の予防におけるCOVID-19ワクチンの影響を分析することを目的とした研究です。
ノルウェーのワクチン接種キャンペーン展開に合わせて、年齢と健康状態に基づいて4つの研究コホートを作成しました。コホートには、ワクチン接種者2,364,651人、未接種者1,532,935人が含まれました。様々なヘルスケア側面をカバーする6つの登録からのデータをOMOP (Observational Medical Outcomes Partnership) CDM(common data model)にマッピングして解析しました。
Long-COVIDおよび急性期以降の合併症の予防におけるCOVID-19ワクチンの影響を、公開されているスクリプトを用いて評価しています。
いずれのCOVID-19ワクチンの接種も、すべての研究コホートにおいて、Long COVID症状の発症リスクの有意な低下と関連していることが示されました。メタ解析によるハザード比(HR)は0.44~0.71で、ワクチンの一貫した予防効果を反映していました。さらに、ワクチン接種により、心不全、静脈血栓塞栓症、動脈血栓症を含むCOVID後の血栓塞栓症および心血管合併症のリスクが低下することも明らかになりました。
本研究は、ノルウェー人集団におけるLong COVID症状およびCOVID後の血栓塞栓および心血管合併症の予防におけるCOVID-19ワクチンの効果を確認するものです。
データの入手可能性と診断コードの制約に関する限界が認められたものの、本研究は他国での先行研究結果を支持し、結果の一般化可能性と再現性を実証しました。

Plasma-based antigen persistence in the post-acute phase of COVID-19

*COVID-19パンデミック時代の参加者とパンデミック以前の参加者を比較し、所見の特異性(血漿中の抗原の存在を評価)を理解することを目的とした研究です。
RNAで確認されたSARS-CoV-2感染後14ヵ月間、171人の成人を追跡調査しました。これらの参加者は、主にワクチン接種が可能になる前、あるいは再感染が起こる前に調査され、パンデミック時代に属すると定義されました。研究結果に背景を持たせるため、これらの人々を2020年以前に血漿サンプルが採取された250人の成人から成る対照群と比較しました。
パンデミック時代の参加者の SARS-CoV-2 抗原検出頻度は、プレパンデミック時代の参加者に比べて有意に増加していることが明らかになりました。SARS-CoV-2 血漿中抗原の有病率は、感染後急性期において経時的に上昇傾向を示しました。具体的には、COVID-19発症後3.0~6.0ヵ月で+10.6%、6.1~10.0ヵ月で+8.7%、10.1~14.1ヵ月で+5.4%の絶対差がありました。
パンデミック時代の参加者の急性期後の血漿中のSARS-CoV-2抗原の有病率が、感染後の異なるタイムポイントにおいて、パンデミック前の参加者と比較して高いことが明らかになりました。COVID-19急性期に入院した参加者や健康状態の悪い参加者ほど、検出可能な抗原を持つ傾向がありました。
今回の所見から、SARS-CoV-2は感染後14ヵ月まで何らかの形や場所で持続する可能性があり、急性感染がこの持続に影響することが示唆されました。本研究は、SARS-CoV-2の持続性に関連する臨床症状に関するさらなる研究の必要性を強調しています。また、SARS-CoV-2の急性感染後の持続性を示す強力なエビデンスであり、結果を正確に解釈する上で、抗原検出のための免疫ベースのアッセイの特異性を理解することの重要性を強調しています。

Efficacy and safety of GST-HG171 in adult patients with mild to moderate COVID-19: a randomised, double-blind, placebo-controlled phase 2/3 trial

*前臨床試験においてニルマトルビルと比較して高い効力と有効性を示した、強力で広域スペクトル、経口生物学的利用可能な低分子3C様プロテアーゼ阻害剤であるGST-HG17とリトナビルの経口投与の有効性と安全性を、XBBおよび非XBB株に感染したCOVID-19(コロナウイルス感染症)患者を対象として評価した研究です。
この無作為化二重盲検プラセボ対照第2/3相試験は、中国の47施設で、症状発現が72時間以内の軽度~中等度のCOVID-19成人患者を対象に実施されました。適格患者は、疾患進行のリスクレベルおよびワクチン接種状況などの層別化因子を用いて、GST-HG171(150mg)+リトナビル(100mg)または対応するプラセボ錠を1日2回、5日間投与する群に1:1で無作為に割り付けられました。有効性の主要評価項目は、28日以内に臨床症状が持続的に回復するまでの期間とし、COVID-19に関連する11の対象症状のスコアが2日間連続で0であることと定義し、修正intention-to-treat(mITT)集団で評価しました。
2022年12月19日から2023年5月4日までに1,525例の患者をスクリーニングしました。無作為化を受けた1,246例のうち、ほとんどがCOVID-19の基本接種(21.2%)またはブースター接種(74.9%)を完了し、ベースライン時の疾患進行リスクは低くなっていました。GST-HG171+リトナビルを投与された617例中610例、プラセボを投与された610例中603例がmITT集団に含まれました。GST-HG171+リトナビルを投与された患者では、臨床症状が持続的に回復するまでの期間中央値がプラセボ群と比較して短縮しました(13.0日[95.45%信頼区間12.0-15.0] vs. 15.0日[14.0-15.0]、P = 0.031)。SARS-CoV-2 XBB株(45.7%、mITT集団の481/1053)および非XBB株(54.3%、mITT集団の572/1053)の両サブグループで一貫した結果が観察されました。有害事象の発生率は、GST-HG171+リトナビル群(320/617、51.9%)とプラセボ群(298/610、48.9%)で同程度でした。プラセボ群、治療群ともに最も多かった有害事象は高トリグリセリド血症(10.0%対14.7%)で死亡例はありませんでした。
GST-HG171+リトナビルによる治療は、明らかな安全性の懸念なしに、COVID-19を接種した低リスクの成人患者において、症状の回復とウイルスクリアランスにおける利点を実証しました。本研究では、ほとんどの患者が症状発現後2日以内に治療を受けたため、症状発現から治療開始までの期間が長い患者に対する症状回復の潜在的ベネフィットを確認するには、実臨床試験が必要であるとのことです。

NEJM
RSV Prefusion F Protein-Based Maternal Vaccine - Preterm Birth and Other Outcomes

https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa2305478?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%20%200pubmed

*RSVプレフュージョンFタンパク質ベースの母体ワクチン候補(RSVPreF3-Mat)の有効性と安全性について評価した論文です。
18~49歳の妊婦を対象とした第3相試験を実施しました。女性は、妊娠24週0日から34週0日の間に、RSVPreF3-Matまたはプラセボを投与する群に2:1の割合で無作為に割り付けられました。主要アウトカムは、出生から生後6ヵ月までの乳児における、医学的に評価されたRSV関連下気道疾患の有無または重症度、および出生から生後12ヵ月までの乳児における安全性。ワクチン群でプラセボ群より高い早産リスクが認められたため、登録とワクチン接種を早期に中止し、早産の安全性シグナルに関する探索的解析を実施しました。
解析対象は妊婦5,328例と乳児5,233例でした。登録が早期に中止されたため、目標とした妊婦約1万例と乳児の登録には到達せず。ワクチン群3426例、プラセボ群1711例の乳児が出生から6ヵ月齢まで追跡され、医学的に評価されたRSV関連下気道疾患があったのはそれぞれ16例と24例(ワクチン効果、65.5%;95%信頼区間、37.5~82.0)、医学的に評価された重症RSV関連下気道疾患があったのはそれぞれ8例と14例(ワクチン効果、69.0%;95%信頼区間、33.0~87.6)でした。早産はワクチン群では6.8%(3494例中237例)、プラセボ群では4.9%(1739例中86例)に認められました(相対リスク、1.37;95%信頼区間[CI]、1.08~1.74;P=0. 01);新生児死亡はそれぞれ0.4%(3494例中13例)および0.2%(1739例中3例)に発生し(相対リスク、2.16;95%CI、0.62~7.56;P=0.23)、この不均衡はおそらくワクチン群で早産の割合が高かったことに起因すると思われます。その他の安全性シグナルは観察されませんでした。
安全性が懸念されたため早期に登録が中止された本試験の結果から、乳児のRSV関連下気道疾患のリスクは、医学的に評価されたRSVワクチン接種群の方がプラセボ群よりも低いが、早産リスクはワクチン接種群の方が高いことが示唆されました。
  

2) 治療薬、 ワクチン関連       
国内     
流行危機なのに「麻疹ワクチン」が足りない大問題
武田は自主回収、第一三共・田辺三菱は出荷制限
https://toyokeizai.net/articles/-/746813?page=2
*「現在、はしかワクチンを国内で販売するのは武田薬品工業、第一三共、田辺三菱製薬の3社だけだ。
2022年のMRワクチン生産量は159万2000人分、はしか単体ワクチンは5万7000人分、つまり合計で165万人分だった。これは定期接種の対象者数とほぼ同じだ。未接種世代が麻疹ワクチンを希望するのは、麻疹が流行したときだが、彼らに回す余裕はない。
今回は武田薬品工業が、1月16日にMRワクチンの一部ロットの自主回収を発表した。ワクチンの効果を示す「力価」が、国の規格を下回っていたためだ。
翌日には、第一三共も「他社製品の自主回収により供給に影響が生じる可能性が否定できない」としてMRワクチンの出荷を制限した。田辺三菱製薬も、同様の措置をとっている。定期接種分を確保するための措置だろう。
現在、わが国では麻疹ワクチンが不足している。これについて、厚労省や専門家はどのように考えているのだろう。
厚労省の審議会の常連である川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、マスコミの取材に対し、「成人の9割はワクチンや過去に感染したことによる自然免疫で抗体を獲得しているとされる」「まずは小児の定期接種を進め、成人で感染によるリスクの高い人は抗体検査などを受けて、必要であれば接種を受けてほしい」と語っているが、これでは十分ではない。
少なからぬ国民が麻疹ワクチンの接種を希望しているにもかかわらず、この説明は、彼らの声にまったく応えていない。
ワクチンが必要で、国内で製造できなければ、海外から買えばいい。
ワクチンを製造している企業は、グラクソ・スミスクライン、サノフィパスツール、メルク、ノバルティス、ファイザー、インド血清研究所など世界中にあまたある。
世界での麻疹ワクチン市場は、年率3.9%程度の成長を続けると考えられており、2030年にはその規模は約10億ドルに達すると予想されている。今後、麻疹ワクチン開発に参入する企業が増えるだろう。
どうして、麻疹ワクチンの供給先を国内企業に限定するのか。これは「安全保障」の見地からいってもナンセンスだ。
厚労省に求められるのは、麻疹流行時にワクチンを速やかに確保することだ。厚労省は、外資系企業の麻疹ワクチンを速やかに承認し、麻疹流行時には十分量を確保できるように体制を整備すべきだ。残念なことに、このような動きはないし、マスコミも指摘しない。」

海外     

治療薬      
コロナ飲み薬 7月から薬価引き下げ 厚労省、費用対効果を分析
https://www.asahi.com/articles/ASS4B3F5RS4BUTFL00YM.html
*「新型コロナウイルス感染症の治療薬として使われている「ラゲブリオ(一般名・モルヌピラビル)」の薬価について、厚生労働省は10日の中央社会保険医療協議会(中医協=厚労相の諮問機関)で、費用対効果の分析を踏まえ、7月から引き下げることを決めた。
 日本の薬価制度では、市場規模が大きい、または単価が高い医薬品は、国立の研究施設などで効果が検証され、薬価が調整される仕組みになっている。今回の検証では、ラゲブリオを使った人と、抗ウイルス剤などを使わない対症療法のみの人を比べた。その結果、入院や死亡のリスクは同等で、治療にかかる費用が増加する、と評価された。」

3)診断・検査、サーベイランス関連
変異株     

国内        

海外       
サルに感染症うつす観光客=中村克樹 /愛知 - 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20240411/ddl/k23/100/129000c
*「一般にヒトにも感染する動物の病気を動物由来感染症と呼びますが、ヒトから動物にも感染するので人獣共通感染症とも呼びます。新型コロナウイルスが感染拡大した当初も、サルの仲間の多くは同じように感染することが分かりました。2021年1月には、米・サンディエゴ動物園で、ゴリラが新型コロナウイルスに感染したことが大きく報じられました。私たちもウイルスを研究所内に持ち込まないように細心の注意を払いました。
ある時、チンパンジーの死体が見つかったという報告が入り、米国の研究者と現地の獣医師が、防護服で全身を包み、その死体を調べました。そうすると、よくみる病気の兆候、つまり、心臓の周りに液体がたまっていて、肺が暗赤色で硬く傷ついているのが確認できました。死因は肺炎だったのです。
数カ月後に、原因はヒトメタニューモウイルスだと断定されました。このウイルスは、ヒトに感染しても呼吸器系の症状を引き起こすだけ、つまり、風邪の症状が出るだけですが、類人猿などに感染すると重症化して死ぬこともあるのです。17年の感染拡大の時には、群れの12%の個体が命を落としたということです。」

4)対策関連
国内      

感染症リスク評価の司令塔「JIHS」 25年4月に国立機構新設
https://www.asahi.com/articles/ASS49365DS49UTFL014M.html
*感染症分析拠点、来年4月に設置 厚労相発表
https://www.asahi.com/articles/DA3S15908623.html
*「新型コロナウイルスでは、ワクチンや薬の開発で欧米に遅れた。その反省をふまえ、新機構は、臨床試験のネットワークの中核機能も期待されている。すぐに感染状況や患者の臨床情報を分析できる情報基盤を整備し、薬やワクチンの開発につなげる。
 また、複数の感染症に対応できる研究者を平時から育て、国民へのわかりやすい情報発信をする役割も担う。
 武見氏はこの日に開かれた準備委員会で、「二つの組織を抜本的に再編し、感染症に関するあらゆる情報をつなぐ組織とする。また、革新的な研究で新たな価値を生み出し、投資を呼び込む好循環も創出する」と強調した。」

海外       

5)社会・経済関連     


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