COVID-19情報:2023.10.23
皆様
本日のCOVID-19情報を共有します。
本日の論文は、Nature系列より2編、The Journal of Infectious Diseases(JID)より1編です。
Natureの1編目は、SARS-CoV-2感染またはワクチン接種の前後で縦断的に採取した鼻咽頭スワブを用いて、鼻上皮におけるSARS-CoV-2サイトカインおよび抗体応答を評価した研究です。鼻のIgAとIgGは感染後異なる動態を示し、IgAが最初にピークに達することがわかりました。ワクチン接種により鼻腔IgAは低下するが、IgG誘導はワクチン接種後180日まで持続しました。
2編目は、SARS-CoV-2伝播の性質およびSARS-CoV-2変異株に対する免疫圧に対するワクチン接種および以前のウイルス暴露の影響について検証した研究です。AZD1222を筋肉注射したハムスターの感染は、未感染のハムスターと比較して3回の空気感染では約60%減少しましたが、既感染のハムスターと経鼻接種したハムスターの感染は80%減少しました。
JID論文は、COVID-19パンデミック時のデンマークの医療従事者(HCW: Health Care Workers)の欠勤および健康に対するBCGの効果を検証することを目的とした単盲検ランダム化比較試験の報告です。計画外欠勤に対するBCGの有意な効果は認められませんでした。
報道に関しては、東京都が児童の長期後遺症に関するパンフレットを出版したようです。また、「次の危機にはいくら必要? 神奈川県がコロナの入院・療養費など試算」は要注目です。未知の健康機器に対して、試算しておくというのは重要なPreparednessです。
高橋謙造
1)論文関連
Nature
Utility of nasal swabs for assessing mucosal immune responses towards SARS-CoV-2
*SARS-CoV-2感染またはワクチン接種の前後で縦断的に採取した鼻咽頭スワブを用いて、鼻上皮におけるSARS-CoV-2サイトカインおよび抗体応答を評価した研究です。
本グループは、この抗体応答確認のための新規の方法論を確立しました。この手法えお用いて、粘膜と全身の反応を比較しました。
その結果、サイトカインと抗体のプロフィールが各領域で異なることが示され、鼻腔サイトカインは創傷治癒の表現型を示す一方、血漿サイトカインは炎症促進経路と一致していました。鼻のIgAとIgGは感染後異なる動態を示し、IgAが最初にピークに達することがわかりました。ワクチン接種により鼻腔IgAは低下するが、IgG誘導はワクチン接種後180日まで持続しました。
この研究によって、呼吸器感染症に対する全身反応に加えて粘膜反応を研究することの重要性が強調されました。ここに記載した方法は、鼻上皮における免疫についてよりよく理解することにより、粘膜ワクチンの開発を促進するために用いることができ、感染に対する粘膜応答を研究するための、より簡便で代替的な臨床的実践を提供するものであるとの事です。
Infection- or AZD1222 vaccine-mediated immunity reduces SARS-CoV-2 transmission but increases Omicron competitiveness in hamsters
*SARS-CoV-2伝播の性質およびSARS-CoV-2変異株に対する免疫圧に対するワクチン接種および以前のウイルス暴露の影響について検証した研究です。
SARS-CoV-2の空気感染効率に対する既存の免疫の影響を理解するために、未感染、経鼻または筋肉内ワクチン接種、および既感染ハムスターを用いた感染連鎖実験を行いました。感染効率には明らかな勾配が観察されました: AZD1222を筋肉注射したハムスターの感染は、未感染のハムスターと比較して3回の空気感染では約60%減少しましたが、既感染のハムスターと経鼻接種したハムスターの感染は80%減少しました。また、デルタB.1.617.2株は、ナイーブ、ワクチン接種済み、および以前に感染した感染経路において、宿主内および宿主間で二重感染した後、オミクロン株B.1.1.529と競合しましたが、オミクロンB.1.1.529の競合性は、デルタ株B.1.617.2に対する既存の免疫のある群で増加しました。これはデルタ株B.1.617.2に対する体液性応答の強さの増加と相関しており、最も強い応答は既感染動物に見られました。これらのデータは、ワクチン戦略を改善し、既存の免疫がSARS-CoV-2に及ぼすさらなる進化的圧力に対処する継続的な必要性を強調しているとのことです。
The Journal of Infectious Diseases
Using BCG Vaccine to Enhance Nonspecific Protection of Health Care Workers During the COVID-19 Pandemic: A Randomized Controlled Trial
*COVID-19パンデミック時のデンマークの医療従事者(HCW: Health Care Workers)の欠勤および健康に対するBCGの効果を検証することを目的とした単盲検ランダム化比較試験の報告です。
デンマークの9病院の1221人のHCWを対象としました。参加者は標準用量のBCGまたはプラセボに1対1で無作為に割り付けられました。
主要アウトカムは計画外欠勤日数でした。主な副次的アウトカムは、COVID-19の発症率、全原因入院、感染症エピソードでした。
計画外欠勤に対するBCGの有意な効果は認められませんでした。1000労働日あたりの平均欠勤日数は、BCG群で20日、プラセボ群で17日でした(リスク比、1.23;95%信頼区間、0.98-1.53)。BCGは、全体としてCOVID-19の発生率や全死因入院には影響を及ぼしませんでした。二次解析では、BCG再接種はCOVID-19発症率の上昇と関連していましたが(ハザード比[HR]、2.47;95%信頼区間[CI]、1.07-5.71)、入院リスクも低下させました(HR、0.28;95%CI、0.09-0.86)。感染症エピソードの発生率は無作為化群間で同程度でした(HR、1.09;95%CI、0.96-1.24)。
この比較的健康なHCWコホートにおいて、BCGはいずれの研究結果にも総合的な影響を及ぼしませんでした。
**本論文は、NEJMのJournalWatchで取り上げられました。
https://www.jwatch.org/na56646/2023/10/10/does-bcg-vaccination-protect-against-covid-19
このコメントでは、
BCGがCOVID-19を予防するという仮説は、
オーストラリアや他の数カ国で実施された研究(N Eng J Med 2023; 388:1582) やオランダの研究でも (Clin Infect Dis 2022; 75:e938)確認されませんでした。
有効なSARS-CoV-2ワクチンが利用可能であることを考えると、COVID-19に関しては、BCGワクチンという考えはそろそろ終わりにした方がよいかもしれないとの事です。私のグループでも、Ecologicalには有効性を示唆する結果が出ましたが(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33859726/)、複数の
ランダム化比較試験でBCG仮説に否定的な結果が出ていますので、この種の議論には終止符を打ちたいと思います。
2) 治療薬、 ワクチン関連
国内
保管方法を誤ったコロナワクチン、359人に接種 茨城・龍ケ崎
https://mainichi.jp/articles/20231020/k00/00m/040/042000c
海外
治療薬
3)診断・検査、サーベイランス関連
変異株
Long COVID
児童らの後遺症、どう対応? 新型コロナ、都がリーフレット―「訴え聞く」「無理させない」
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023102100128&g=cov
*「新型コロナは5月、感染症法上の位置付けが季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に変更された。ただ感染拡大は続き、後遺症に苦しむ人の中には子どもも多いとみられる。そこで都は9月下旬、小中高校生について後遺症の具体的な症状や対応策をまとめたリーフレットを作り、ホームページに公開した。
症状については、倦怠(けんたい)感や疲労感、集中力低下、頭痛、睡眠障害など多岐にわたると紹介。感染後に疲れやすくなり体育の授業を見学するようになった小学5年生や、感染中から頭がぼーっとして集中できなくなった中学2年生などを例に挙げた。
子どもが倦怠(けんたい)感を訴えている場合には「訴えをよく聞き、症状や体調に合わせて無理をさせないことが重要」と指摘。「他の病気が隠れていることもある」とした上で「日常生活に影響がある場合は医療機関に相談することが重要」とした。」
国内
コロナ感染患者らの匿名情報、治療研究へ第三者に提供
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA21A4M0R20C23A9000000/
*「厚生労働省は2024年度から国や自治体が持つ感染症患者らに関する情報を匿名化し、第三者が利用できる仕組みを始める。公的な研究機関や研究者などがデータを活用し、治療薬の効果や後遺症の分析につなげる。
まずは人数が多く個人が特定されにくい新型コロナウイルスの患者情報を対象とする。医師が氏名や性別、年齢、症状などを記入した発生届のデータを生かす。
基礎疾患に関する情報を含む「レセプト情報・特定健診等情報データベース」や「介護保険総合データベース」といった国などが持つ既存のデータとひも付けして提供することも可能とする。」
海外
4)対策関連
国内
非常時、国が自治体へ指示 感染症や災害に備え特例―地制調小委
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023102300695&g=cov
*「第33次地方制度調査会(首相の諮問機関)の専門小委員会は23日、新型コロナウイルスの流行などを踏まえた国と自治体の在り方に関する答申素案を提示した。感染症や災害などに備えた個別法で想定されない事態が生じ、国民の生命や財産が脅かされる恐れがある場合、国から自治体へ必要な指示を行えるようにすることを盛り込んだ。ただ、国と地方の関係は対等とする地方分権の趣旨を踏まえ、あくまで特例と位置付ける。」
次の危機にはいくら必要? 神奈川県がコロナの入院・療養費など試算
https://digital.asahi.com/articles/ASRBK53D7R8ZULOB009.html?iref=pc_special_coronavirus_top
*「県によると、入院は2020年度はのべ12万3千人が利用し、計1186億円が投じられた。1人1日あたり97万円かかった計算で、21年度は54万円、22年度は27万円に減った。
同様に試算すると、宿泊療養は20年度13万円、21年度12万円、22年度17万円。自宅療養は20年度2千円、21年度1千円、22年度500円だった。
試算では、入院は病院の感染対策の設備や病床確保の費用を盛り込んだ。宿泊療養や自宅療養はホテルの借り上げ料や療養者に貸し出すパルスオキシメーターの購入費、配食サービス、療養患者の健康観察を行うシステムの構築費などが含まれている。地域の医師会が療養サポートをする際の委託費も盛り込まれた。
20年度の入院費用がかなり高額になったのは、病院の設備費への補助がかさんだためという。宿泊療養は確保した宿泊施設の数に対して利用者が少なくなり、21年度より22年度が高くなった。こうした費用のほとんどは国からの交付金でまかなわれた。」
海外
5)社会・経済関連
茨城県購入のコロナ対策物品 1億3500万円分が未使用 検査院
https://mainichi.jp/articles/20231020/k00/00m/040/321000c
*「未使用は4県48市町村で90品目の4億8465万円分。茨城県ではマスクやガウン、手袋などのほか、県立医療大が買ったパソコン44台中33台が死蔵され、未使用額は計1億3559万円に上った。
県は「(需給)逼迫(ひっぱく)の可能性があり備蓄していた」と説明。マスクなどの期限切れはなく、未使用分を優先配布しているという。大井川和彦知事は20日の定例記者会見で「無駄になった物はなく、適正に行われた」と見解を述べた。」
*この事例は、モラル・ハラスメントとは言えないものだと考えます。緊急対応においては、このような一種の「ムダ」が発生するのはヤムを得ないことだと思われます。
少人数旅行、コロナ5類後も定着 聖地巡礼も1人気まま
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF282R40Y3A920C2000000/