COVID-19情報:2023.12.14
皆様
本日のCOVID-19情報を共有します。
まず本日の論文ですが、LANCET系列より3編、BMJより1編です。
LANCETの1編目は、急性COVID-19後症候群(PACS: post-acute COVID-19 syndrome )症状の緩和を目的としたシンバイオティクス製剤(SIM01)の評価を目的とした研究です。SIM01による治療は、PACSの複数の症状を緩和することが明らかになりました。
2編目は、SARS-CoV-2感染症への有望な治療アプローチのひとつとしての宿主指向性療法に関して、中等度から重度のCOVID-19の入院患者を対象に、宿主指向性の抗ウイルス・抗炎症薬であるMP1032の有効性と安全性を評価した研究です。MP1032+SoCによる治療は安全で、忍容性も良好でした。
3編目は、英国での超過死亡に関して論じたコメント記事です。
BMJ論文は、COVID-19後遺症(PCC: Post-covid-19 condition)に対するCOVID-19一次ワクチン接種(推奨スケジュール内の初回2回接種と初回ブースター接種)の有効性を調査することを目的とした集団ベースのコホート研究です。感染前のCOVID-19ワクチン接種とPCCと診断されるリスクの減少との間に強い関連があることが示唆されました。この知見は、ワクチンの推奨のための意義を後押しする重要なエビデンスであると考えます。
報道に関しては、「米国、中国で複数の感染症が大流行、日本は「コロナ後」にどう備えるかコロナ、インフル、RSV感染症の「トリプルデミック」はなぜ起きる?」 が必読です。この中で、11/30に配信したNatureのNews記事が、ここでも取り上げられています。
高橋謙造
1)論文関連
LANCET
A synbiotic preparation (SIM01) for post-acute COVID-19 syndrome in Hong Kong (RECOVERY): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial
https://www.thelancet.com/journals/laninf/article/PIIS1473-3099(23)00685-0/fulltext
*急性COVID-19後症候群(PACS: post-acute COVID-19 syndrome )症状の緩和を目的としたシンバイオティクス製剤(SIM01)の評価を目的とした研究です。
香港の3次紹介センターで行われたこの無作為化二重盲検プラセボ対照試験において、米国疾病管理予防センターの基準に従ったPACS患者を、SIM01(100億コロニー形成単位を1日2回小袋に入れたもの)またはプラセボを6ヵ月間経口投与する群に無作為に割り付け(1:1)、無作為順列ブロックにより検討しました。組み入れ基準は、SARS-CoV-2感染が確認されてから4週間以上、疲労、記憶力低下、集中力低下、不眠、気分障害、脱毛、息切れ、咳、運動不能、胸痛、筋肉痛、関節痛、胃腸の不調、全身倦怠感など、14のPACS症状のうち少なくとも1つが存在することであり、免疫不全、妊娠中または授乳中、経口輸液ができない場合、無作為化前の30日間に消化管手術を受けた場合は除外しました。参加者、ケア提供者、治験責任医師は群割付けについてマスクされました。
主要アウトカムは、intention-to-treat集団において、インタビュアーによる14項目の質問票で評価された6ヵ月までのPACS症状の緩和としました。症状緩和の予測因子を同定するため、前方ステップワイズ多変量ロジスティック回帰を実施しました。
2021年6月25日から2022年8月12日の間に、463人の患者がSIM01投与群(n=232)とプラセボ投与群(n=231)に無作為に割り付けられました。6ヵ月後、SIM01投与群では有意に高い割合で、疲労の軽減(OR 2.273、95%CI 1.520-3.397、p=0.0001)、記憶力の低下(1.967、1.271-3.044、p=0.0024)、 集中困難(2.644、1,687-4.143、p<0.0001)、胃腸の不調(1.995、1.304-3.051、p=0.0014)、全身倦怠感(2.360、1.428-3.900、p=0.0008)などが見られました。治療中の有害事象発生率は群間で同程度(SIM01群232例中22例[10%] vs プラセボ群231例中25例[11%]、p=0.63)。SIM01による治療、オミクロン株への感染、COVID-19前のワクチン接種、および軽症の急性COVID-19は、症状緩和の予測因子でした(p<0.0036)。
SIM01による治療は、PACSの複数の症状を緩和することが明らかになりました。今回の知見は、腸内細菌叢の調節によるPACSの管理に示唆を与えます。他の慢性または感染後の状態におけるSIM01の有益な効果を探求するために、さらなる研究が求められます。
Efficacy and safety of MP1032 plus standard-of-care compared to standard-of-care in hospitalised patients with COVID-19: a multicentre, randomised double-blind, placebo-controlled phase 2a trial
https://www.thelancet.com/journals/lanepe/article/PIIS2666-7762(23)00229-6/fulltext
*SARS-CoV-2感染症への有望な治療アプローチのひとつとしての宿主指向性療法に関して、中等度から重度のCOVID-19の入院患者を対象に、宿主指向性の抗ウイルス・抗炎症薬であるMP1032の有効性と安全性を評価した研究です。
無作為化二重盲検プラセボ対照第IIa相試験において、患者を2:1に無作為に割り付け、MP032 300mg×2回/日+標準治療(SoC)またはプラセボ×2回/日+SoCを28日間投与しました。対象となったのは、18歳以上でSARS-CoV-2陽性、中等度から重度のCOVID-19症状を有する患者です。試験は6カ国20施設(ブルガリア、フランス、ハンガリー、イタリア、ルーマニア、スペイン)で行われ、14日目の主要評価項目としてNIAIDスケールによる病勢進行を評価しました。副次的評価項目は、病勢進行(28日目)、病勢消失(14日目および28日目)、死亡率、COVID-19関連パラメータ、安全性などです。MP1032とCOVID-19バイオマーカー(eGFR、Dダイマー)を関連付ける曝露反応解析を実施しました。
132例の患者が登録され、MP1032+SoC(n=87)またはプラセボ+SoC(n=45)が投与されました。患者はすべて白人または白人で、平均年齢(中央値)は60.5歳(63歳)。ワクチン接種を受けた患者は全体で10例のみで、各群5例ずつ。14日目(MP1032 9.8%対プラセボ 11.6%)および28日目の両群間で疾患進行の有意なリスク差は検出されず、MH共通のリスク差はそれぞれ-0.276%(95%信頼区間、-11.634~11.081、p=0.962)および1.722%(95%信頼区間、-4.576~8.019、p=0.592)でした。
MP1032+SoCによる治療は安全で、忍容性も良好でした。全体として、10件のSAEを含む182件のTEAEが、verum群では53.5%(46/86例)、プラセボ群では57.8%(26/45例)に報告され、SAEはverum群では5.8%(5/86例)、プラセボ群では6.7%(3/45例)に発現しました。SAEはいずれも関連ありませんでした。
本試験の規模には限界があり、同時に発生したSOCにもばらつきがありましたが、これらの知見は、宿主指向性抗ウイルス薬候補としてのMP1032のさらなる調査を必要とするものです。
Excess mortality in England post Covid-19 pandemic: implications for secondary prevention
https://www.thelancet.com/journals/lanepe/article/PIIS2666-7762(23)00221-1/fulltext
*英国での超過死亡に関して論じたコメント記事です。
◯英国を含む多くの国では、2020年と2021年のCOVID-19パンデミックに関連したピークを過ぎた後も、明らかな超過死亡が続いている。
・英国国家統計局(ONS)は、5年平均(2020年を除く)との比較に基づき、2022年に英国で登録された死亡者数が7.2%、44,255人増加したと算出したが、この傾向は2023年まで続き、年初6ヵ月に登録された死亡者数は予想を8.6%、28,024人上回った。Continuous Mortality Investigation(CMI)でも、異なる方法を用いて同時期に同様の超過死亡(28,500人)を発見している。超過死亡の推定にはいくつかの方法を用いることができ、それぞれ解釈の際に考慮すべき限界があるが、全体的な傾向はさまざまな方法で一貫している。
・これらの超過死亡の原因は複数あると考えられ、Covid-19感染の直接的影響、急性疾患のエピソードによる転帰不良をもたらすNHSの急性期サービスに対するプレッシャー、慢性疾患の発見と管理に対する混乱などが考えられる。
◯OHID(Office for Health Improvement and Disparities)はよる2020年7月以降のイングランドの週ごとのポアソン回帰モデルに基づく超過死亡率の推計値(全体と年齢、民族、地域、原因別に分けての発表)
・このモデルによると、2022年6月3日に終わる週から2023年6月30日までの期間において、すべての原因による超過死亡は50~64歳が相対的に最も多く(予想より15%高い)、これに対して25~49歳と25歳未満は11%高く、65歳以上は約9%高い。
・これらのグループの年齢の中央値は2020年以降変化しているが、死亡率を性別に分けた年齢標準化死亡率分析では、年齢差がより明確になっている。年齢標準化CMIでも同様のパターンがみられ、2022年の相対的な超過死亡は若年層(20~44歳)と中年層(45~64歳)で最も大きいことがわかった。
・心血管疾患を含むいくつかの死因は、同期間(2022年6月3日から2023年6月30日までの週)における全死因による死亡(9%)を上回る相対的過剰を示している(すべての心血管疾患(12%)、心不全(20%)、虚血性心疾患(15%)、肝疾患(19%)、急性呼吸器感染症(14%)、糖尿病(13%))。
・ この13ヵ月間の中年成人(50~64歳)では、調査したほぼすべての死因の相対的過剰率が、全年齢のそれよりも高かった。心血管疾患による死亡は予想より33%高く、特定の心血管疾患では虚血性心疾患による死亡が44%、脳血管疾患が40%、心不全が39%高かった。急性呼吸器感染症による死亡は予想より43%多く、糖尿病による死亡は35%多かった。肝疾患を含む死亡は、50~64歳では予想より19%高く、全年齢の死亡と同じであった。
・死亡場所に注目すると、2022年6月3日から2023年6月30日まで、個人宅での死亡は予想より22%多く、病院での死亡は10%多かったが、ケアホームでの死亡に過剰はなく、ホスピスでの死亡は予想より12%少なかった。
・心血管系疾患を含む死亡では、個人宅での相対的過剰は27%と全死因より高かった。病院での死亡は8%高く、ケアホームでの死亡は3%高いだけであった。 パンデミックの急性期における超過死亡は、高齢者が最も多かった。現在は、中年および若年層で相対的に最も顕著な過剰死亡が続いており、CVDによる死亡と個人宅での死亡が最も影響を受けている。
・このような傾向を説明し、予防や疾病管理の努力に役立てるためには、タイムリーで詳細な分析が必要である。このような詳細な知見を活用することで、死亡率への継続的かつ不平等な影響と、それに対応すると思われる罹患率への影響を、集団全体で緩和できる可能性がある。
BMJ
Covid-19 vaccine effectiveness against post-covid-19 condition among 589 722 individuals in Sweden: population based cohort study
https://www.bmj.com/content/383/bmj-2023-076990
*COVID-19後遺症(PCC: Post-covid-19 condition)に対するCOVID-19一次ワクチン接種(推奨スケジュール内の初回2回接種と初回ブースター接種)の有効性を調査することを目的とした集団ベースのコホート研究です。
スウェーデンの登録ベースのコホート研究であるSwedish COVID-19 Investigation for Future Insights-a Population Epidemiology Approach using Register Linkage(SCIFI-PEARL)プロジェクトを用いて、スウェーデンの2大地域での、2020年12月27日~2022年2月9日の間に初回登録されたCOVID-19に感染した成人全員(18歳以上)(n=589,722)を対象としました。初感染から、死亡、Emigration、ワクチン接種、再感染、PCC診断(ICD-10診断コードU09.9)、追跡終了(2022年11月30日)のいずれか早い時点まで追跡しました。感染前にCOVID-19ワクチンを少なくとも1回接種していた人はワクチン接種済みとみなしました。
主要アウトカムは、PCC の臨床診断としました。PCCに対するワクチン有効性は、年齢、性別、併存疾患(糖尿病および心血管疾患、呼吸器疾患、精神疾患)、2019年中の医療接触者数、社会経済的因子、および感染時の優勢ウイルス株で調整したCox回帰を用いて推定しました。
COVID-19ワクチン接種者299,692人のうち、追跡調査中にPCCと診断されたのは1201人(0.4%)であったのに対し、ワクチン未接種者290,030人のうちPCCと診断されたのは4118人(1.4%)でした。COVID-19ワクチン接種は、感染前の接種回数にかかわらず、PCCリスクの低下と関連し(調整ハザード比0.42、95%信頼区間0.38~0.46)、ワクチン効果は58%でした。ワクチン接種を受けた人のうち、1回のみ接種を受けた人は21,111人、2回接種を受けた人は205,650人、3回以上接種を受けた人は72,931人。1回接種、2回接種、3回以上接種のPCCに対するワクチン効果は、それぞれ21%、59%、73%でした。
本研究の結果は、感染前のCOVID-19ワクチン接種とPCCと診断されるリスクの減少との間に強い関連があることを示唆しています。この結果は、PCCによる集団負担を軽減するためにCOVID-19に対する一次ワクチン接種の重要性を強調しているとの事です。
2) 治療薬、 ワクチン関連
国内
コロナ流行から4年、第一三共の純国産ワクチン接種開始…米国は11か月で実用化
https://www.yomiuri.co.jp/medical/20231213-OYT1T50227/
*「新型コロナワクチン開発を巡っては、日本企業は海外勢と比べ、大幅に後れをとった。感染症対策を国家安全保障政策に位置づけ、研究を手厚く支援してきた米国では、新型コロナの流行開始から11か月でワクチンの実用化にこぎ着けた。
政府は、今回の教訓を受け、2022年3月にワクチン開発の司令塔として「先進的研究開発戦略センター( SCARDA:スカーダ)」を設置。1500億円の基金で企業や研究機関を支援するなどして、新興感染症に対するワクチン開発を強化した。」
海外
ファイザー来期も売上高低迷 2年で4割減、コロナ薬不振
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN13ENO0T11C23A2000000/
*ファイザーの24年売上・利益見通しが市場予想届かず、コロナワクチン低調
https://jp.reuters.com/markets/world-indices/2JVIUJKEKNPNVD7Y7TFZKRYOTU-2023-12-13/
*「ファイザーの成長を支えてきたコロナ関連製品の需要は、ここに来て急減している。23年は9月に米国でコロナ追加接種用のワクチン提供を始めたが、これまでのところ利用率は低迷している。」
治療薬
3)診断・検査、サーベイランス関連
変異株
Long COVID
国内
海外
4)対策関連
国内
海外
米国、中国で複数の感染症が大流行、日本は「コロナ後」にどう備えるかコロナ、インフル、RSV感染症の「トリプルデミック」はなぜ起きる?
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/78355
*「中国で小児を中心に呼吸器疾患が増加している。国内メディアは11月23日、世界保健機関(WHO)が中国当局に詳細な情報の提供を求めたことを報じた。28日、『東洋経済オンライン』は、「中国で急増の『呼吸器疾患』に広がる大きな懸念 情報提供を要請するも、中国には隠蔽の前歴」という『ニューヨーク・タイムズ』の記事を紹介した。この中で、「中国当局は今回、未知の病原体についての懸念を公に認めておらず、WHOの声明にも公には応じていない」と、中国政府の姿勢を批判し、未知の病原体の蔓延の可能性について言及している。
この件については、私もマスコミから数件の取材を受けたが、未知の病原体にメディア側の関心があるのは明らかだった。読者・視聴者の関心をひくと考えているのだろう。
だが、この論調はピントがずれている。もっとしっかり議論し、準備しなければ、今冬、日本では多くの命が失われかねない。コロナパンデミックの収束にあたり、我々は何に留意すべきか、本稿で論じたい。
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コロナパンデミックは収束を迎えつつある。どうやら、この間に様々な感染症に対する免疫が失われて、世界が正常化するために、様々な感染症が大流行しそうだ。世界史上、最も高齢化が進んだ日本は、どうすればこの問題を克服できるのだろうか。現在、中国で起こっていることは決して人ごとではない。我々は世界から学ばねばならない。」
5)社会・経済関連
隠されたコロナ禍の記憶
https://www.sankei.com/article/20231214-XCONSFDT3FL6XPEQS6MKHHGLSU/