COVID-19情報:2023.12.11

皆様

本日のCOVID-19情報を共有します。

まず論文ですが、JAMA系列より3編+1編(Invited commentary)です。

1編目は、川崎病(KD:Kawasaki Disease)およびMIS-C患者における肥満の有病率および臨床転帰との関連を比較したコホート研究です。この国際コホート研究において、肥満はMIS-C患者とKD患者でより有病率が高く、より重篤な病像、臨床検査値および転帰と関連していました。本稿に関するInvited commentaryも参考になりますので、簡潔にまとめてあります。
2編目は、国際疾病統計分類第10版(ICD-10)の急性感染後のCOVID-19後遺症(PCC:Post–COVID-19 Condition)のコードU09.9の記録と関連する割合、臨床環境、危険因子、および症状を明らかにすることを目的としたレトロスペクティブコホート研究です。388,980人の退役軍人を対象としたこのコホート研究では、ICD-10コードU09.9の記録は地域および施設レベルで顕著なばらつきがありました。
3編目は、2022年に急増した救急外来(ED: Emergency Department)の待ち時間、入院期間(LOS: Length of Stay)、ED再診について、米国で全州的な質に関する共同研究に参加している多様なEDで明らかにすることを目的としたレトロスペクティブコホート研究です。270万人以上のED受診を対象としたこのコホート研究において、小児ウイルス性疾患の急増は、州内のED間で異なる小児急性期医療と関連していました。

報道に関しては、LONG COVIDに関する対策への民間の取り組みが数社から記事になっています。
まさに、これは国をあげて取り組むべき課題であると考えます。
また、「平時、有事の柔軟な切り替え、誤情報への対応も 感染症対策で意見書」も重要な取り組みであると考えます。来るべきパンデミック有事に備えておく必要は必須であるからです。今回のCOVID事例のように、出遅れてしまっては元も子もありません。韓国などは、過去の事例に学んで強固なK防疫体制を作り上げたのですから。

高橋謙造

1)論文関連      
Obesity and Outcomes of Kawasaki Disease and COVID-19–Related Multisystem Inflammatory Syndrome in Children

*川崎病(KD:Kawasaki Disease)およびMIS-C患者における肥満の有病率および臨床転帰との関連を比較したコホート研究です。
MIS-C患者(米国疾病対策予防センターの基準で定義)とKD患者(米国心臓協会の基準で定義)を対象とし、同時期の患者に関する国際川崎病登録(IKDR)データの解析を、8ヵ国、42施設を対象に、2020年1月1日~2022年7月31日に実施しました。最近のCOVID-19感染のエビデンスがある、またはCOVID-19のステータスが不明または不明なKD患者は除外しました。
主要アウトカムは、患者の人口統計学的特徴、臨床的特徴、疾患の経過、および転帰の変数をIKDRデータセットから収集しました。体格指数(BMI)/体重zスコアのパーセンタイル相当値を用いて、患者の体重を正常体重(BMI<85パーセンタイル)、過体重(BMI≧85~<95パーセンタイル)、肥満(BMI≧95パーセンタイル)に分類しました。脂肪率カテゴリーと臨床的特徴および転帰との関連は、KD患者群とMIS-C患者群とに分けて検討しました。
1767人の小児のうち、KD患者338人(年齢中央値2.5[IQR、1.2-5.0]歳、男性60.4%)とMIS-C患者1429人(年齢中央値8.7[IQR、5.3-12.4]歳、男性61.4%)が同時期に研究に組み入れられました。MIS-C患者とKD患者の比較では、体重過多(17.1% vs 11.5%)および肥満(23.7% vs 11.5%)の有病率が有意に高く(P < 0.001)、年齢、性別、人種および民族で調整した後でも、脂肪率のzスコアが有意に高くなっていました。KD患者については、集中治療室入室率を除けば、脂肪率の分類は臨床検査の特徴や転帰とは関連していませんでした。MIS-C患者では、脂肪率のカテゴリーが高いほど、ショック、集中治療室入室、強心薬の必要性の可能性が高く、炎症マーカー、クレアチニン値、アラニンアミノトランスフェラーゼ値が上昇するなど、臨床検査値および転帰が悪化しました。脂肪率はMIS-CでもKDでも冠動脈の異常とは関連していませんでした。
この国際コホート研究において、肥満はMIS-C患者とKD患者でより有病率が高く、より重篤な病像、臨床検査値および転帰と関連していました。これらの所見は、MIS-Cの小児の臨床像において、肥満が併存因子として考慮されるべきであることを示唆しているとの事です。
*Relevance of Obesity in Kawasaki Disease and Multisystem Inflammatory Syndrome in Children Associated With COVID-19

*上記論文に関するInvited Commentaryです。
◯MIS-CとKDの患者比較においてと精査に値する特徴
・いくつかの臨床的特徴を共有し、標準的な診断検査がない2つの疾患を扱う場合、患者の誤分類が常に懸念される。この懸念に対処するため、著者らはSARS-CoV-2感染の最近の証拠があるか、この変数のデータが欠落しているため、KDの小児499人を除外した。
・冠動脈瘤はKDの合併症であるが、MIS-Cの合併症ではないので、MIS-Cコホートでは冠動脈瘤のある患者を除外することができたかもしれないが、これは実施されなかった。患者の誤分類に関する懸念に対する解決策として、パンデミック前に診断されたKDとMIS-Cの患者を比較することが考えられた。
◯説明のつかない肥満とKD患者のICU入室との関連
・強心薬の投与もKDショック症候群の診断もKD患者の肥満とは関連していなかったので、ICU入室の適応が何であったのか、なぜそれが肥満と関連するのかは不明である。ICU入室の基準に関する42施設間のばらつきは、本研究では取り上げられなかった。
◯異なる亜種間での比較の重要性
・パンデミックの際、健康の社会的決定要因がSARS-CoV-2への曝露に影響し、低所得者層でMIS-Cのリスクが増加したことはよく知られている。
・SARS-CoV-2の武漢亜種とα亜種に関連したMIS-Cの第一波は最も重症であった。MIS-CでICUに入室し、強心補助を必要とする患者の割合は、その後のオミクロン亜種で減少した。したがって、これらのデータを分析する上で、異なる亜種の出現とMIS-C症例の相対的な時期を知ることは有益であったろう。
・肥満が社会経済的地位の低さを示す指標となり、その結果SARS-CoV-2への曝露が増加し、パンデミックの初期にMIS-Cが重症化した可能性がある。
・様々な型が世界的に明確に定義された時期に循環しており、この知識とMIS-C患者の入院時期が相まって、最悪のMIS-C転帰がパンデミックの初期に起こったかどうかを特定するのに役立った可能性がある。
◯長期的な予後の異なる2疾患
・川崎病とMIS-Cは基本的に異なる疾患であり、長期的な結果も異なる。
・川崎病は主に冠動脈を侵す血管炎であり、長期的な罹患率と死亡率をもたらす。対照的に、MIS-Cは心臓バイオマーカーの上昇と心室機能の低下を伴う全身性の炎症性疾患であり、発熱後数週間で正常化する。しかし、MIS-Cは新しい疾患であるため、長期的な追跡調査はまだ行われていない。
・MIS-C患者におけるより重篤な臨床経過の一因としての肥満の役割は、健康の社会的決定要因や様々な変異体への曝露の複雑さから切り離すことは困難である。MIS-Cの症例数が世界的に減少していることを考えると、Khouryらが発表したデータは、MIS-Cの臨床的重症度に影響を及ぼす肥満の役割の可能性に関する最終的な見解となるかもしれない。

Rates of ICD-10 Code U09.9 Documentation and Clinical Characteristics of VA Patients With Post–COVID-19 Condition

*国際疾病統計分類第10版(ICD-10)の急性感染後のCOVID-19後遺症(PCC:Post–COVID-19 Condition)のコードU09.9の記録と関連する割合、臨床環境、危険因子、および症状を明らかにすることを目的としたレトロスペクティブコホート研究です。
本研究は米国退役軍人省(VA)の医療システム内で行われ、ICD-10コードU09.9が導入された2021年10月1日から2023年1月31日の間にSARS-CoV-2検査結果が陽性であった退役軍人(n=388,980)、および系統的なカルテレビューにより症状の有病率が評価されたU09.9コードを有する患者の無作為抽出サブサンプル(n=350)を解析対象としました。
主要アウトカムは、医療記録におけるICD-10コードU09.9に関連する割合、臨床環境、危険因子、症状としました。
SARS-CoV-2検査陽性の388,980人中、平均(SD)年齢は61.4(16.1)歳で、87.3%が男性でした。人種および民族では、アメリカン・インディアンまたはアラスカ先住民が0.8%、アジア系が1.4%、黒人が20.7%、ヒスパニックまたはラテン系が9.3%、ネイティブ・ハワイアンまたはその他の太平洋諸島民が1.0%、白人が67.8%でした。U09.9文書化の累積発生率は、感染後6ヵ月で4.79%(95%信頼区間、4.73%-4.87%)、12ヵ月で5.28%(95%信頼区間、5.21%-5.36%)でした。U09.9の報告と独立して関連する因子には、高齢、女性、ヒスパニック系またはラテン系の民族、併存疾患の負担、症状、入院、または人工呼吸によって顕在化した重度の急性感染が含まれました。一次ワクチン接種(調整ハザード比[AHR]、0.80[95%CI、0.78-0.83])およびブースターワクチン接種(AHR、0.66[95%CI、0.64-0.69])は、U09.9の報告の可能性の低下と関連していました。U09.9コードの報告における地理的地域および施設による顕著な差は、地域のスクリーニングおよびケアの慣行を反映している可能性があります。体系的なカルテレビューを受けた患者350人のうち、U09.9コードを有する患者のカルテに最も多く記録された症状は、息切れ(130人[37.1%])、疲労または消耗(78人[22.3%])、咳(63人[18.0%])、認知機能の低下または脳霧:Brain Fog(22人[6.3%])、および嗅覚および/または味覚の変化(20人[5.7%])でした。
388,980人の退役軍人を対象としたこのコホート研究では、ICD-10コードU09.9の記録は地域および施設レベルで顕著なばらつきがありました。U09.9の報告に関する強い危険因子は同定されましたが、ワクチン接種は予防的であるようでした。U09.9の正確で一貫性のある記録は、臨床治療や研究のために患者を追跡する上でその有用性を最大化するために必要であり、今後の研究では、U09.9が記録された患者の長期的な経過を検討すべきであるとの事です。

Emergency Department Care for Children During the 2022 Viral Respiratory Illness Surge

*2022年に急増した救急外来(ED: Emergency Department)の待ち時間、入院期間(LOS: Length of Stay)、ED再診について、米国で全州的な質に関する共同研究に参加している多様なEDで明らかにすることを目的としたレトロスペクティブコホート研究です。
2021年1月1日から2022年12月31日までのミシガン州救急部改善共同体データ登録の25のEDを対象としました。小児(患者の年齢が18歳未満)のウイルス性疾患および呼吸器疾患の受診を分析し、小児病院、都市部の小児科の受診件数が多い(全体の受診件数の10%以上)、都市部の小児科の受診件数が少ない(全体の受診件数の10%未満)、農村部のEDについて、待ち時間、LOS、ED再訪率を比較しました。
暴露としては、2022年9月1日から12月31日までのウイルス性疾患および呼吸器疾患を有する子どものED受診件数の急増と設定しました。
主要アウトカムとしては、ED受診待ち時間の延長(到着から担当医がつくまで4時間以上)、LOSの延長(到着から退院まで12時間以上)、ED再訪率(ED退院から72時間以内の再来院)としました。
2021年と2022年に25のEDで行われた合計2,761,361件のED受診が対象となりました。2022年9月1日から12月31日までのウイルス性疾患および呼吸器疾患による小児科受診は301,688件で、その前の4ヵ月と比較して71.8%、2021年の同期間と比較して15.7%増加しています。急増中の小児病院では、受診の8.0%で待ち時間が4時間以上、8.6%でLOSが12時間以上延長し、ED受診1,000人当たり42人が再受診。他の施設では待ち時間の延長はまれでした。しかし、LOSの延長は都市部の小児科受診件数が多いEDでは425件(2.2%)、都市部の小児科受診件数が少ないEDでは133件(2.6%)、農村部のEDでは176件(3.1%)に影響しました。受診件数の多さは、すべての施設においてED再訪問の増加と関連していました。
270万人以上のED受診を対象としたこのコホート研究において、小児ウイルス性疾患の急増は、州内のED間で異なる小児急性期医療と関連していました。臨床管理パスウェイと質改善努力は、EDとケア設定間の強力な協力関係により、危険な臨床状態をより効果的に緩和する可能性があるとのことです。

2) 治療薬、 ワクチン関連       
国内     

海外     

治療薬      

3)診断・検査、サーベイランス関連
変異株     

Long COVID
更年期障害? 上司にも理解されず コロナ後遺症、国は患者に支援を
https://www.asahi.com/articles/ASRD86DC2RD8UTFL00D.html
*コロナ後遺症「国が対策を」 患者の会、厚労省へ要望書 
https://www.sankei.com/article/20231208-JL4MDHQMCFIU5IVGJB4N7EIPQU/
*「コロナ後遺症」患者と家族の全国組織が発足 感染から1年たっても症状が…「医療や福祉の制度で支えて」 
https://www.tokyo-np.co.jp/article/294953?rct=coronavirus
*「後遺症に悩む患者の診察に対応する医療機関は、厚労省のホームページでリストが公表されている。女性は、このリストにあった病院に連絡したが、「重い症状でないと診察できない」と断られた。別のクリニックでも、医師に「病み上がりはそんなもんだよ」と言われたという。
 コロナ後遺症は、感染後、長期間にわたり倦怠感、関節痛のほか、集中力の低下、嗅覚(きゅうかく)障害など人によって様々な症状が続く。世界保健機関(WHO)は「症状が少なくとも2カ月続き、他の病気の症状として説明がつかないもの」と定義し、感染者の約10~20%に症状が出るとする。
 要望書は、対応できる医療機関の拡充や治療法の確立のほか、休業手当・傷病手当を治療が終わるまで受けられるよう給付期間を延長することなどを求めている。また、症状の影響で申請書類の作成が困難なケースもあり、手続きの簡素化や窓口の一本化を求めている。」

国内        
全国のコロナ感染、2週連続増 インフルは微減も17道県で「警報」
https://www.asahi.com/articles/ASRD85TWNRD8UTFL00Q.html

海外       

4)対策関連
国内      
平時、有事の柔軟な切り替え、誤情報への対応も 感染症対策で意見書
https://www.asahi.com/articles/ASRD855KKRD8UTFL00K.html
*「新たな感染症が発生した時の政府行動計画について専門家らが議論する「新型インフルエンザ等対策推進会議」は8日、改定の方向性に関する意見書をとりまとめた。新型コロナウイルスでの教訓をふまえ、平時の備え、平時と有事の切り替えの対応、わかりやすい情報発信などを主な課題として挙げた。政府は意見書をもとに来年6月ごろに改定案をまとめる。
 意見書は、現行の政府行動計画は「コロナのように短い期間で変異を繰り返す病原体による感染症危機を想定していなかった」と指摘。感染状況に応じた、柔軟な対策の切り替えを求めた。」

海外       

5)社会・経済関連     
路上に子ども戻さない フィリピンの養護施設、運営危機で協力求め - 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20231210/k00/00m/040/067000c
*「フィリピンで路上生活をする子どもたちの支援を続けているNPO法人アイキャン(名古屋市東区)が、寄付額200万円を目標に「冬募金」を展開している。新型コロナウイルス感染症の影響で収益の柱だった事業を実施できず、フィリピンで子どもたちが生活する施設の運営費が枯渇しているためだ。アイキャンは「子どもたちを路上に戻すことだけは絶対にしたくない」と協力を求めている。」

コロナ禍入社の若手社員、半数が「会社辞めたい」 人間関係に悩み - 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20231211/k00/00m/020/046000c
*「新型コロナウイルス禍のさなかに入社した若手社員の半数が、会社を辞めたいと感じている――。健康や医療相談サービスを提供するティーペック(東京都台東区)が実施した「若手社員のメンタルヘルスの実態」調査でこんな実態が明らかになった。近年、入社3年以内の離職者は3割超。若手の早期離職を防ぐには、コミュニケーションがカギになるようだ。」

母はワクチン接種後に死去 NHKがすり替えた本当の「遺族の声」は
https://www.asahi.com/articles/ASRD956F6RD9ULZU008.html
*「NHKの「ニュースウオッチ9」が、新型コロナウイルスのワクチン接種後に家族を亡くした3人の遺族を、コロナ感染で亡くした遺族かのように報道した問題で、放送倫理・番組向上機構(BPO)放送倫理検証委員会(小町谷育子委員長)が「放送倫理違反」との意見書を公表した。この3人の遺族のうち、大阪市在住の佐藤かおりさん(47)が朝日新聞の取材に応じ、BPOに対して「双方の意見を聞いて、まとめて公表して終わり、と見える」、直接の謝罪を求めているというNHKには「誰のために謝りたいのでしょうか」と現在の心境を語った。」

ANA総研、日本着の国際線座席数コロナ前の95%に回復:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC29DFA0Z21C23A1000000/


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