COVID-19情報:2024.01.11

皆様

本日のCOVID-19情報を共有します。

まず論文ですが、Natureより2編(COVID−19関連)とNEJMより2編(RSV関連)です。トリプルデミックの観点からは、SARS-CoV-2ウイルス以外のRSVやFluウイルスにも観点を拡げた方が良いと判断し、文献を検索する事にしました。

Natureの1編目は、SARS-CoV-2が低温・低湿度条件下では、温暖・高湿度条件下と比較してより安定であることがin vivoでの空気感染率の差につながるかどうかを調べるため、3つの異なる環境条件下(10℃、相対湿度45%(RH)、22℃、45%RH、27℃、65%RH)で、シリアンハムスターモデルを用いて空気感染実験を行った論文です。得られた
データでは、環境条件がSARS-CoV-2の安定性に影響を与える場合でも、曝露時間が制限されている実験環境では、このことが感染への測定可能な影響に直接結びつかない可能性があることを示唆しているとの結論になりました。

2編目は、IgMのN-グリコシル化がヒトの急性ウイルス感染に果たす役割について解明を試みた研究です。健常対照者と入院中のCOVID-19患者のIgM N-グリコシル化の解析から、COVID-19の重症度と相関する高マンノース化とシアリル化の増加が明らかになりました。

NEJMの1編目は、高齢者においてかなりの罹患率と死亡率を引き起こす可能性があるRSV(Respiratory Syncytial Virus)に関して、安定化RSVプレフュージョンF糖蛋白をコードするmRNAベースのRSVワクチン、mRNA-1345に関する無作為化二重盲検プラセボ対照第2-3相試験の報告です。mRNA-1345ワクチンの単回投与により、明らかな安全性の懸念はなく、60歳以上の成人において、RSV関連下気道疾患およびRSV関連急性呼吸器疾患の発生率はプラセボよりも低かったとの結論です。

2編目は、妊娠中のワクチン接種が、新生児や乳児におけるRSV(Respiratory Syncytial Virus)関連下気道疾患の負担を軽減できるかどうかを検証した研究です。妊娠中に投与されたRSVpreFワクチンは、医学的に認められた乳児の重症RSV関連下気道疾患に対して有効であり、安全性に関する懸念は認められなかったとの事です。

報道に関しては、日経が国産ワクチンという視点から、第一三共が開発したmRNAワクチンをかなり深く掘り下げていますので必読です。また、石川県の被災地の避難所で感染症が出始めています。対策でも言われていることですが、まめな手洗いが一番なのは確かなのですが、水の供給そのものが追いつかない状態では対策が難しいところです。

高橋謙造

1)論文関連      
Nature
Airborne transmission efficiency of SARS-CoV-2 in Syrian hamsters is not influenced by environmental conditions

*SARS-CoV-2が低温・低湿度条件下では、温暖・高湿度条件下と比較してより安定であることがin vivoでの空気感染率の差につながるかどうかを調べるため、3つの異なる環境条件下(10℃、相対湿度45%(RH)、22℃、45%RH、27℃、65%RH)で、シリアンハムスターモデルを用いて空気感染実験を行った論文です。
先祖伝染型のSARS-CoV-2 Lineage Aと、より伝播性の高いDelta Variant of Concern(VOC)を比較しました。空気感染はSARS-CoV-2感染ドナー動物を用いてウイルス接種後24時間で評価しました。センチネルは感染セットアップの中で90cmの距離に置かれ、感染したドナー動物に1時間暴露されました。
環境条件は肺のRNA力価に中程度の影響を与えましたが、ドナーの排出動態は環境条件の影響を受けず、1日目の変異型間で有意差はありませんでした。全体として、デルタの感染効率は22℃、40%RHで最も高く(62.5%、セロコンバージョンに基づく)、その他の条件では37.5~50%の範囲でしたが、これらの差は有意ではありませんでした。このことをさらに明らかにするために、エアロゾルの安定性の比較を行ったところ、感染性ウイルスはすべての条件下で1時間の時間ウィンドウの間、安定したままであることがわかりました。
今回のデータは、環境条件がSARS-CoV-2の安定性に影響を与える場合でも、曝露時間が制限されている実験環境では、このことが感染への測定可能な影響に直接結びつかない可能性があることを示唆しているとの結論です。

IgM N-glycosylation correlates with COVID-19 severity and rate of complement deposition

*IgMのN-グリコシル化がヒトの急性ウイルス感染に果たす役割について解明を試みた研究です。IgGのグリコシル化に関しては、ヒト重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染時に重要な役割を果たし、免疫細胞を活性化し、サイトカイン産生を誘導する事が分かっています。
健常対照者と入院中のCOVID-19患者のIgM N-グリコシル化の解析から、COVID-19の重症度と相関する高マンノース化とシアリル化の増加が明らかになりました。これらの傾向は、SARS-CoV-2特異的免疫グロブリンN-グリカンプロファイルでも確認されました。さらに、IgMのマンノシル化およびシアリル化の程度は、重症度マーカーと有意な相関がありました。
この研究により、IgMのN-グリコシル化の変化をゴルジ糖転移酵素の発現と関連づけることが出来ました。また最後に、抗原特異的IgM抗体依存性補体沈着が重症COVID-19患者で上昇し、エキソグリコシダーゼ消化によって調節されることを観察しました。
以上のことから、この研究によりIgMのN-グリコシル化とCOVID-19の重症度が関連付けられ、ヒトの疾患におけるIgMのグリコシル化とその下流の免疫機能を理解する必要性が強調されたとの事です。

NEJM
Efficacy and Safety of an mRNA-Based RSV PreF Vaccine in Older Adults

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2307079

*高齢者においてかなりの罹患率と死亡率を引き起こす可能性があるRSV(Respiratory Syncytial Virus)に関して、安定化RSVプレフュージョンF糖蛋白をコードするmRNAベースのRSVワクチン、mRNA-1345に関する無作為化二重盲検プラセボ対照第2-3相試験の報告です。
60歳以上の成人をmRNA-1345(50μg)またはプラセボを1回投与する群に1:1の割合で無作為に割り付けました。
2つの主要評価項目は、少なくとも2つの徴候または症状を伴うRSV関連下気道疾患の予防と、少なくとも3つの徴候または症状を伴うRSV関連下気道疾患の予防でした。
主な副次的有効性エンドポイントは、RSV関連急性呼吸器疾患の予防でした。安全性も評価されました。
全体で35,541人の参加者がmRNA-1345ワクチン(17,793人)またはプラセボ(17,748人)の投与群に割り付けられました。追跡期間中央値は112日(範囲:1~379日)でした。主要解析は、RSV関連下気道疾患の予想症例の少なくとも50%が発生した時点で実施されました。ワクチンの有効性は、少なくとも2つの徴候または症状を伴うRSV関連下気道疾患に対して83.7%(95.88%信頼区間[CI]、66.0~92.2)、少なくとも3つの徴候または症状を伴う疾患に対して82.4%(96.36%CI、34.8~95.3)でした。RSV関連急性呼吸器疾患に対するワクチン有効率は68.4%(95%CI、50.9~79.7)でした。RSV亜型(A型およびB型)の両方に対する予防効果が認められ、年齢や併存疾患によって定義されたサブグループ間で概ね一貫していました。mRNA-1345投与群では、プラセボ投与群に比べ、局所的な副作用(58.7%対16.2%)および全身的な副作用(47.7%対32.9%)の発現率が高く、重篤な有害事象は各試験群の参加者の2.8%に発現しました。
mRNA-1345ワクチンの単回投与により、明らかな安全性の懸念はなく、60歳以上の成人において、RSV関連下気道疾患およびRSV関連急性呼吸器疾患の発生率はプラセボよりも低かったとの結論です。

Bivalent Prefusion F Vaccine in Pregnancy to Prevent RSV Illness in Infants

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2216480

*妊娠中のワクチン接種が、新生児や乳児におけるRSV(Respiratory Syncytial Virus)関連下気道疾患の負担を軽減できるかどうかを検証した研究です。
18ヵ国で実施されたこの第3相二重盲検試験において、妊娠24週から36週の妊婦を、RSVプレフュージョンF蛋白ベースの2価ワクチン(RSVpreF)120μgの単回筋肉内注射を受ける群とプラセボを受ける群に1:1の割合で無作為に割り付けました。有効性の2つの主要エンドポイントは、生後90日、120日、150日、180日以内の乳児における、医療的に付き添われた重症RSV関連下気道疾患および医療的に付き添われたRSV関連下気道疾患でした。ワクチン有効性の信頼区間の下限(90日では99.5%信頼区間[CI]、それ以降の区間では97.58%CI)が20%より大きいことが、主要エンドポイントに関するワクチン有効性の成功基準を満たすと考えられました。
この事前に規定された中間解析では、1つの主要エンドポイントに関してワクチン有効性の成功基準を満たしました。全体として、3682人の母親参加者にワクチンが、3676人にプラセボが投与され、それぞれ3570人と3558人の乳児が評価されました。ワクチン群では6例、プラセボ群では33例の乳児が出生後90日以内に医療的介入を受けた重症下気道疾患に罹患した(ワクチン有効率、81.8%;99.5%信頼区間、40.6~96.3);それぞれ19例、62例が出生後180日以内に罹患しました(ワクチン有効率、69.4%;97.58%信頼区間、44.3~84.1)。RSV関連下気道疾患は、生後90日以内にワクチン群24例、プラセボ群56例で発生しました(ワクチン有効率、57.1%;99.5%CI、14.7~79.8)。安全性に関するシグナルは、妊産婦および生後24ヵ月までの乳幼児では検出されませんでした。注射後1ヵ月以内または出生後1ヵ月以内に報告された有害事象の発生率は、ワクチン群(女性の13.8%、乳幼児の37.1%)とプラセボ群(それぞれ13.1%、34.5%)で同程度でした。
妊娠中に投与されたRSVpreFワクチンは、医学的に認められた乳児の重症RSV関連下気道疾患に対して有効であり、安全性に関する懸念は認められなかったとの事です。

2) 治療薬、 ワクチン関連       
国内     
国産mRNAワクチン始動 第一三共、海外輸出も視野:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC05C0N0V01C23A2000000/
*「なぜ日本勢は後手に回ったか
コロナ禍で日本は外国製ワクチンに依存した。mRNAワクチンは20年にファイザーと独ビオンテック、モデルナが実用化している。後手に回ったのはなぜか。アーサー・ディ・リトル・ジャパンの花村遼パートナーは「国内のワクチン市場は特殊な状況にあった」と解説する。
1970年代以降、日本では予防接種の副作用を巡る集団訴訟が相次いだ。政府がワクチン政策に消極的になった理由の一つだ。企業もリスクの予見性を持てず、次世代技術を採用したワクチン開発が進めにくかった。
一方、米国はコロナ前から備えていた。モデルナは2013年に米政府の資金援助を受け、mRNA技術の開発を進めた。コロナ発生後、米政府は明確な指揮系統を敷き、国費や人材を大量投入してmRNAワクチンを短期で実用化した。
次なるパンデミックに対し、国や企業はどう備えるべきか。花村氏は「ワクチン開発を戦略的に行う国の機関『先進的研究開発戦略センター(SCARDA)』の設置などは正しい方向性だ」と評価する。一方、「政府が平時もワクチン事業に投資を続けられるかが課題になる」と説く。
経済安全保障の観点から、mRNAワクチンの国産化は必須だった。今後は持続可能なワクチン供給体制の構築が目標となる。
「平時の備えに差」 海外製から2年以上遅れた理由
2021年3月に第一三共がコロナワクチンの臨床試験(治験)を開始したとき、国内では既にファイザー製ワクチンが流通し始めていた。第一三共の奥沢宏幸社長は「スターティングポイントでの出遅れが大きかった」と反省する。
パンデミックの予見は難しい。そのため平時におけるワクチン開発は採算性の観点から優先度が下がる。第一三共も2000年代後半からmRNA医薬品の基礎研究を進めていた。しかし、中期経営計画では競争優位性があるがん分野への投資を柱に据えていた。
海外勢はコロナ流行から約1年でmRNAワクチンを実用化している。重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)などの流行を受けて、ワクチンの開発体制を準備していたからだ。第一三共ワクチン企画部の二階堂千恵ワクチン企画グループ長も「平時の備えという点で差があった」と分析する。
コロナ禍では世界中でワクチン製造設備の資材の争奪戦が起きた。開発に成功しても量産化できなければワクチンの大規模接種は実現しない。生産設備に使う資材は、供給網(サプライチェーン)の確立や維持を含めて、日常的に確保できる手立てが必要だ。」

海外     

治療薬      

3)診断・検査、サーベイランス関連
変異株     

Long COVID

国内        
避難所でコロナやインフル発症相次ぐ 石川県、感染症対策へ新組織 - 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20240111/k00/00m/040/151000c
*「関連死」6人初めて認定、200棟全焼の輪島朝市では捜索続く…男性「知り合い埋まっているかも」 
https://www.yomiuri.co.jp/national/20240109-OYT1T50214/
*避難所のコロナ拡大に警戒、感染疑われる人や家族ら別室へ 
https://www.yomiuri.co.jp/medical/20240109-OYT1T50210/
*「新組織は県庁内に設置した。厚生労働省から派遣されている幹部をトップとし、石川県の健康福祉部門などが連携して避難所の感染症対策を指揮する方針だ。」

新型コロナ6週連続で増加 年末分、被災地で拡大懸念 厚労省 
https://www.sankei.com/article/20240110-H7ZC3QVRLJMELAM626HHTWMOGA/

全国のコロナ感染者、6週連続増 前週比1.27倍 インフルは減少
https://www.asahi.com/articles/ASS1B557YS1BUTFL00B.html

インフル3週連続で減少 厚労省 
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024011000830&g=cov

海外       

4)対策関連
国内      
避難所でインフル・コロナ・ノロの流行懸念 いずれも手洗いが重要
https://www.asahi.com/articles/ASS185Q3JS18UTFL003.html
*避難所で感染症相次ぐ 新型コロナやノロウイルス―識者「体調悪ければ申告を」・能登地震
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024010900681&g=cov
*「日本環境感染学会の災害時感染制御支援チームの菅原えりさ東京医療保健大教授によると、避難所で特にいま感染拡大が懸念されるのは、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症の呼吸器感染症と、ノロウイルスなどによる感染性胃腸炎だ。いずれも手洗いが最も重要な対策になる。
 食事や調理の前、トイレ使用後の手洗いは欠かせない。流水とせっけんが望ましいが、アルコール消毒薬で代用してもいい。手の甲や指の間で洗い残しが生じやすいので注意する。」
*このアドバイスはまさに正論なのですが、水不足の地でいかに手洗いを励行するか、大きな課題です。

生徒の悩み、ネット空間「デジタル保健室」で…アバターで周り気にせず相談 
https://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/kyoiku/news/20240109-OYT1T50149/

海外       

5)社会・経済関連     
新型コロナウイルスとの闘い◆3年間の記録 写真特集 
https://www.jiji.com/jc/d4?p=cvd019&d=d4_desease

やくみつる氏 コロナ禍後のパリ五輪で期待すること「興奮状態にある選手の肉声…それが流行語に」 - 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20240111/spp/000/006/119000c

昨年コロナで欠場した就実 「先輩の分も」 拾って拾って涙のV奪還
https://www.asahi.com/articles/ASS186F5RS18UTQP002.html

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