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Photo by
kuroshio358
Time is money #シロクマ文芸部
働いていると、大好きな本を読む時間が全然ない。
男は毎日遅くまで仕事をして、今日も帰ってきたのは真夜中だ。
疲れ果てた男は、家に着くなりベッドに横になった。
それでも手を伸ばし、サイドテーブルに置いてある本をとってみるが、急速に眠気がおそってくる。
「今日も本が読めないのかぁ」
恨めしそうに本を見ていると、突然本から煙が出てきた。
「何これ? 燃えてるのか?」
しかし火が出ている様子はない。
男が不思議そうに本を見ていると、羽を生やした小さな小さな猫が現れた。
「猫? 何で?」
驚く男に向かって猫は、
「私は本の妖精です」と言った。
「妖精って……」
「私は本を読みたい人のために、時間を増やしてあげることができます」
「時間? 本を読む時間をくれるのかい?」
「そうです。ではさっそく……」
猫は杖のようなものを手にとり、振りかざそうとする。
「ちょっと待って!」
男は慌てて猫の動作を止めた。
「…どうしました?」
「増やした時間は、本を読むことだけに使えるのかい? 他にもやりたいことがたくさんあるんだ」
「限りのある時間なので、できるのは一つだけです。本を読まないなら、他の妖精を呼ぶこともできますけど…」
男は悩んだ。
確かに本は読みたい。でも見てない映画もあるし、ゲームだってやりたい。
いや、その前に今日できなかったことがある。まずはそれを……。
「決まりましたか?」
猫の問いかけに、男は苦悶の表情を浮かべ答えた。
「……仕事の妖精を呼んでくれ」
小牧幸助さんの企画に参加させていただきました。
みなさん、ワーカホリックにならないように……。