
[たまには短歌を] まもなく冬は明けてゆく
気がつけば、2月も半ばに差し掛かってきた。今年の冬はまだヒートテック穿いていない。それだけで、いつもより寒さが緩いような気がしている。そしてもう3月が近くに来ている。体温調整にも少しずつエラーが起き始めている。体も頭もこれから先は弱っていくばかりで、微調整を繰り返しながら毎日を生きていくしかない。指先は相変わらず冷たいのに、エアコンのせいで頭が暑い。人を見ながら、人に絶望し、人に頼りながら、人に傾倒していく。どうせロクでもない社会だから、人を罵倒せず、人を罵らず、もっとやさしい世界で生きたい思った。
2024年の2月に詠んだ短歌18首。
遠吠えと雲の合間に見える月 こちらの夜も更けてゆきます。
ブーブーブー温もり残る画面見て 頬を染めたし夜風の余韻
耳元に流れる「だよね」埃浮く 誰の声か日差しを見たし
目に映る悲劇の先に死神は 背を向け僕に興味を持たない
指すべる跡に見えたる白光は ぼーっとゆらめく雪の安眠
反射する光は脳を撃ち抜いて 雪の仕業、にごりは取れたか
その肩にポンと手を置きたかったよ でもやめる僕を信じるから
花開く造花に水を注ぎたる 垂れる雫は誰かの涙
遮断機の降りた喧騒つぶやきは おすすめの曲であってほしい
じゃがいもの皮から濡れる湯気を見て 天使の羽か冬のいたずら
正義とはつららのように尖ってて 溶けて消えてはまた尖るのか
ぼやけたる雨の車窓と温い風 指でひとすじ外は雨降り
目をつむり浴びる霧雨、曇天に錆の交わる煙が延びる
雨粒をすり抜け燻るなつかしき香りのこもる部屋と煙草と
雨粒の落ちるリズムが傘を打つ音と波紋が水面に続く
神様が落とした涙美しく泳ぎきれない死への誘い
寄りかかる差し込む光がまぶしくて 遠目に見える山が雪顔
ビル風がいつもに増して走ってて冬を抜ける準備がわびしい
手前味噌で恐縮ですが、昨夏はじめてZINEを制作しました。エッセイ17編といくつかの短歌で構成されています。ご興味のある方はぜひご覧ください。詳細は以下より。