[制作について]断面の仕上げ、念引き、型紙
制作は常に冒険で同じ道を行っているつもりでも毎回違います。
行きたいところまで行けるようになってきましたが、2017年から続けていると行きたいところも高くなり、いろいろ遠回りもしてきました。
高い場所(仕上に対する解像度が上がり高いレベル)にもそれなりに早く行けるようになったのも遠回り(あらゆる方法と関連する知識の集積)の成果だといえます。
まだまだ道半ばですが現時点の制作について記してみます。
*断面の仕上げ
裁断面の仕上げは、革の表情が変わる楽しい時間ですが、
一方で、革の取り方、貼り合わせ方、裁断の仕方など前工程の出来が顕著に表れる答え合わせのような工程とも感じます。
革の裁断面は高知県産の蜜蝋で仕上げています。自身で加工した電気コテの先を使って浸透させ、紙やすり、綿製の布、のり水を使って程よい光沢が出るまで磨き上げます。コテ温度も固定で2つあり、浸透させるのと仕上げと使い分けます。
顔料を使って断面を隠すことはせず、自然の輝きを求めます。過度に磨きすぎない、タンナリーの仕上げた革の美しさを最も感じられる瞬間で留めます。
*エッジクリーシング(Edgs Creasing)
日本語では念と呼ばれ、念を引くなどと言ったりします。
Creasing Ironという専用の道具を使って裁断面に沿うように筋を入れる作業になります。
念引き用のアイロンは市販されていますが、求める筋のためにコテ先は自身で削り出して制作しています。
裁断面から1mmの幅で細い筋を入れられる良いものができました。
様々な見解がありますが、この工程は装飾的な意味合いが主であると思っています。自身の作品では磨かれた裁断面から1mmの間隔で筋が入り、筋から1.5mmの位置にステッチが入ります。
筋が入るだけで作品を引き締まり、気品のある雰囲気をまといます。
*型紙の考え方
作品の制作は平面から始まります。普段のインプットからスケッチを何枚も描き続けて、これなら大丈夫かなという形や構造が見えたとき、立体を意識した型紙を引いていきます。
型紙という平面的なものを立体を意識して考えることは、スケッチの具現度合い、力の掛かる部分の想定というデザイン面と実用面の両方を検討することを意味します。
仮引きの型紙から試作をしたら、イメージへ近づけるために数値見直します。
何度か繰り返すとデザインと実用性の双方がバランスする型紙が出来上がります。
未熟ゆえに一発で引けないのが悔しいです。
同時に仕立ては修理の利くものでないとならないので、場合によっては構造の制約の中から導きだすこともあり、作業がなかなか進まないこともあります。
実用品を制作しているので、用の美が宿るような制作を心掛けています。
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まつさきけんや
1995年生まれ
2017年からInsieme Leathersを開始。
修理の利く革の一点ものを制作しています。
最近は生物多様性保全に資する活動のため、
多様性喪失の一因となる獣害問題を革小物・鞄という実用品と
現状を捉えた写真を媒体に、現状を知ってもらう活動をしています。
IG: @Insieme_leathers
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