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「映画を早送りで観る人たち」稲田豊史著 感想

岡田斗司夫氏が紹介していたので面白そうだと思ってポチりました。

結構ヴォリュームがあって、しっかりリサーチされているので読み応えがあります。
内容はタイトル通りですが、焦点は主にZ世代。
彼らの間で、映画のみならずコンテンツの消費の仕方に一大変革が起こっていることを丁寧に調査し、原因を紐解いていく内容です。
2022年4月初版発行なので、コロナの影響も反映されています。
これからのZ世代への理解にマストな一冊であると思えます。

個人的な理解としては、金と時間がないのにコンテンツだけは日々膨大に増え続け、それらを消費しないとSNSやライン、あるいはリアルの会話についていけなくなる→ほな速度速めて観たらええやん! というのがZ世代の常識らしい。
もちろんそこに「制作者への敬意」とか「間や演技、演出が理解できなくなる」といった反論が浴びせられるのですが、「コンテンツをどう観ようと自由」「早送りされるような作品作る方が悪い」「どうせ自分には間や表現の深みは分からないから」といった反論があるとか。
う~ん、確かに「金なし暇なしコンテンツあり」のZ世代の言うこともわからんでもないが、時間をかけて価値ある(とされる)作品の深みに一歩でも踏み込むことの意義も力説したくなる……

書籍の最後に、そもそも映像作品は映画でしか観られなかったものが、やがてテレビで視聴できるようになり、ビデオとしてそれを所持できるようになり、個人が好きなときに試聴でき、好きなときに停止・巻き戻し・早送りできるようになった、そして映像作品の所有はサブスクという非所有型に形態を移し、コンテンツの膨大さと1本あたりの単価が下がったことが「早送り試聴」というスタイルを生み出したという流れの解説が秀逸でした。
要するに、そもそもが映画をテレビサイズで観ること自体が邪道といえば邪道になるし、作り手への冒涜とも取れる。
ビデオ/DVD等で途中で何度も止めながら観るのも同じ。
だったら今さらサブスクで早送りで観ることにごちゃごちゃ言うこと自体がナンセンスということです。

著者はZ世代の主張や境遇に寄り添いつつも、最後まで早送り試聴に抗う姿勢を持っていますが、個人的にはまあ早送り視聴もそっちはそっちでありかなと思えました。
自分は早送りでは観られませんが。

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