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アメリカ人はアメカジをするのか? します! アメリカに逆輸入されたアメカジ”Japanese Americana"について
近年アメカジがまたブームで、ヴィンテージ市場も盛り上がり、そうした動画を観ることが増えてきました。
アメカジ歴25年以上の僕も久々にアメカジ熱が刺激されています。
個人的に面白いなと思うのはOWATTERUMANさん。
アメカジを理論立てて解説していてとても新鮮です。
そんな中久々に耳にしたのが「アメリカ人はアメカジしないよ」とか「アメカジしてもアメリカ人みたいになれないよ」という意見。
思い起こせば、結構昔からこういうふわっとした批判(?)がありました。
で、調べてみるとこれが半分は本当ですが半分は嘘であることが分かりました。
日本のアメカジはアメリカに逆輸入されていた
アメカジ系の動画やインフルエンサーを追っていると、「アメリカでは日本のアメカジが”Amekaji”として認知されている」とか、「日本のアメカジは欧米やアジアで人気」といった意見がちらほら出てきます。
また、海外のデニムマニアやファッションインフルエンサーが日本のデニムを紹介したり、いわゆるアメカジブランドの服を着たりしているのもよく目にします。
そこでいっちょ本格的に調べてみると、あるキーワードにたどりつきました。
それが、
Japanese Americana(ジャパニーズアメリカーナ)
というジャンル。
いわゆる日本の”アメカジ”をお手本とした逆輸入版アメカジのことを英語で”Japanese Americana”というんだそうです。
この”Japanese Americana”、結構しっかりとしたインフルエンサーがいて、アメリカでも認知度は高いようです。
いくつか動画を貼っておきます。
これらは日本の”アメカジ”を揶揄したり見下すものでは全くなく、むしろアメリカよりいいもの作ってると肯定的に紹介した内容です。
また、動画はアメリカ人向けに作られているので、外国人が日本に媚びるために撮ったのではないと分かります。
観ていてちょっと不思議な気持ちになりますね……
”Japanese Americana”の歴史
ではこの”Japanese Americana”という名称、いつから使われているのでしょうか?
恐らく最も古い動画がこちらで2020年4月投稿。
こちらは2018年の記事ですが、いわゆる”アメトラ”を紹介しているものの、”Japanese Americana”という記述はありません(ちゃんと全部読んでないのでどこかに書いてあるかも…)。
こちらは2020年6月の記事。
タイトルにしっかりと”Japanese Americana”とあります。
どうやら”Japanese Americana”は、2020年辺りからアメリカで使われ始めた言葉のようです。
2020年といえばコロナ初期、世界中の都市がロックダウンに困惑し、海外渡航が禁止され、そのことで外国への憧憬が強まった時期でもありました。
それ以前からいわゆる日本の”アメカジ”に興味を持ち、頻繁に日本を訪れては日本製ジーンズやアメカジアイテムを購入していた人たちが日本に行きたくても行けない鬱憤を晴らすために、自分達の好きなものを同胞に紹介しはじめたのが”Japanese Americana”の走りなのではないかと推察します。
そしてコロナが明けはじめた2023年からまた彼らが日本に取材や買い物に訪れ、”Japanese Americana”動画を出し始めた……と考えるとつじつまが合います。
とはいえ、そこまでポピュラーではない
とはいえ、じゃあ2025年のアメリカ人が皆いわゆる”アメカジ”ファッションをしているかというと、全然そんなことはないでしょう。
だから相変わらず「アメリカ人は”アメカジ”じゃないよ」というのも間違いではありません。
ただ、上記したように”アメカジ”がアメリカにないというのも違います。
むしろ”アメカジ”は、いつの間にかアメリカンファッションに敏感なアメリカ人が憧れるものに進化していたのです。
これって車とかも同じですよね?
日本人がアメ車に憧れる一方、アメリカ人が日本のスポーツカーや軽トラにこぞって乗りたがる現象。
OSAKA5
アメカジといえばジーンズ、そして日本は90年代からヴィンテージジーンズのレプリカを得意としてきました。
それらの有名なブランドが、海外では”OSAKA5”(オーサカ・ファイブ)として知られているそうです。
Studio d'artisan
DENIME
FULLCOUNT
EVISU
WAREHOUSE
の5つ。
アメカジ好きなら誰でも知っているブランドで、僕もダルチ以外は全部何かしら買ったことがあります。
動画もいくつかありますね。
アメリカ人もAmecajiと言う
”Japanese Americana”としてアメリカに逆輸入された”アメカジ”ですが、”Amekaji”と呼ぶこともあるようです。
こちらのアメリカ人デニムインフルエンサーの動画。
内容はジージャンについて語っているのですが、4:00辺りから文字起こしすると…
And then with any jacket I mentioning right now, there's obviously, gonna be modern versions of it. Among heritage brands, Amekaji brands, and also among more brands.
訳
そして、僕が今言ったどんなジャケットも、新しいバージョンになっていく。ヘリテージブランドも、アメカジブランドも、他のブランドもだ。
と、はっきりAmekajiと言ってますね。
また、Amekajiについて特に説明していないところから、視聴者がこの単語を理解できることを前提として使っているのが分かります。
ちなみに、Amekajiを検索してみるとこちらの記事が出てきました。
これもやはり2020年の記事。
こんなのもあります。
”アメカジ”はアメリカでも”Amekaji”として理解されているようですが、2025年現在ではやや”Japanese Americana”の方が優勢な気がします。
流れをおさらい
さて、なんかややこしくなったので全体的な流れをおさらいしてみましょう。
①オリジナル 19世紀後半~
19世紀ぐらいからアメリカにて労働者や学生、軍人、アスリート向けに作られた衣料品、靴、アクセサリーなど。
また、そこから派生したファッションジャンル。
②アメトラ、アメカジ 1960年代~
1960年代頃から発生した、アメリカのファッションを真似たもの。
また、アメリカの伝統的な労働服、軍服等をリメイクしたもの。
90年代には現在主流となるアメカジブランドが乱立。
*アメリカへの憧れ
*オリジナルの模倣
③”Japanese Americana” 2020年頃~
日本の”アメカジ”をアメリカに逆輸入したもの。
*日本への憧れと古き良きアメリカの郷愁
*オリジナルの模倣の模倣
なんとも不思議な現象ですが、双方が双方に憧れている感じがほっこりします。
中学生の時に憧れ、どっぷり浸かってきたアメカジがここまで進化するとは思ってもいませんでした。