伊坂幸太郎『ホワイトラビット』を読みました。

好きな小説家さんがいます。
伊坂幸太郎さんです。

高校の頃に、『チルドレン』『陽気なギャングが地球を回す』重力ピエロ』などを読んで以来、伊坂作品は欠かさずに読んできました。

そして、20年7月に文庫化された『ホワイトラビット』もさっそく読み終わりました。今回は、その『ホワイトラビット』の魅力を綴ります。

あらすじ

兎田孝則は焦っていた。新妻が誘拐され、今にも殺されそうで、だから銃を持った。母子は怯えていた。眼前に銃を突き連れられ、自由を奪われ、さらには家族に秘密があった。連鎖は止まらない。ある男は夜空のオリオン座の神秘を語り、警察は特殊部隊SITを突入させる。軽やかに、鮮やかに。「白兎事件」は加速する。誰も知らない結末に向けて。驚きとスリルに満ちた、伊坂マジックの最先端!(文庫裏面のあらすじ欄)

誘拐ビジネスのベンチャー企業の一員の兎田は、妻・綿子ちゃんが誘拐されて、誘拐犯の要求を受けて、ターゲットの男を探し回ります。

また、泥棒の黒澤は仕事仲間の失態から、とある民家に不法侵入します。

そして、絶対に隠したい秘密を抱えたある親子は、突然現れた謎の男に銃を向けられ、拘束されてしまいます。

こうして、立てこもり事件が発生します。
(ツッコミどころは多いと思いますが、こう説明するしかないので、
ツッコミはなしでお願いします。笑)

思わず笑ってしまう、何気ない文がすき。

伊坂作品の特徴として、「言葉遊びのユーモア」が挙げられます。
面白みある言い方が、ちょっと笑ってしまいます。
「確かに、そういわれればそうだな!笑」って。

例えば、以下の部分です。

「おい、おまえは父親じゃないのか」銃口が、黒澤を捉えている。
「俺は父親だ」嘘だとはいえ、黒澤は言い切る。自分に子供はいないものの、「失敗は成功の母」と同様に、「泥棒は防犯装置の父」といった言葉があるかもしれず、それならばこれも嘘では言えないだろう、と自らを言い聞かせる。誰もが何かの父なのではないか、と。(p126)

こういった文があるから、伊坂作品はサクサク読み進められます。
視点が変わったり、時系列が変わったり、ユーモアがあったり、
独特なキャラがいたり、、、

本の離脱を防いで、最後まで楽しく読める仕組みが盛りだくさんです!

人気キャラ「黒澤」が登場!

本書には、あの「黒澤」が重要どころで登場します。
黒澤とは、探偵や泥棒をしていて、いつも冷静で、ぶっきら棒な登場人物です。冷静沈着ですが、時々真顔で、ユーモアをいう、オチャメな一面もあります。

盗られたことにも気づかせないくらい一流の腕前ですが、
盗った相手の家に、「○○をとりました。」とレシートのような置手紙を置いてきます。礼儀正しいです。

とても親切な泥棒に分類されると思います。

「一流だけど、オチャメ」、「いい人だけど、泥棒」というような隙のあるところが魅力的で、作品を一層おもしろくさせています。

黒澤は『重力ピエロ』『フィッシュストーリー』『首折り男のための協奏曲』『ラッシュライフ』などにも登場しています。『重力ピエロ』では、わき役として登場しますが、時には短編などで大活躍することもあります。

別作品のキャラが登場するのは、ファンとしてうれしいです!

癖のある展開がおもしろい。

伊坂作品には、何人かの視点が入り組んで物語が進行していくことが多いです。本書も、兎田、黒澤、警察官・夏之目など何人かのパートに分かれて語られます。

本書は、視点と時系列が目まぐるしく変わります。
が、しかし、キャラクターのバックグラウンドや展開がわかりやすく、なぜか読みやすいです。
そして、ちょっと、読者の視点をずらすことで、後半の伏線の回収が鮮やかになり、一気に読まされました。

また、綿子ちゃんがボコボコになるシーンなどもありますが、決して暗い感情にはならない、このバランス感覚がすごいです。

なぜか、わかる。なぜか、暗くない。
これができるのは一流の小説家なのでしょうか。


久しぶりに一気読みをしてしまった小説でした。
立てこもりや誘拐は伊坂作品の中でよく取り上げられますが、
その中でも一番面白かったです!

ちょっとずつつながり、伏線と回収がうまく、
オリオのような変なヤツが登場してかき乱し、
ユーモアのある文と工夫のある語りが存在し、
おもしろおかしくたのしい時間を過ごせました。

最後まで読んでいただいた方、ありがとうございました。

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