見出し画像

あなたの知らない「詐欺グラフ」の世界(随時更新中)

僕は #詐欺グラフ が何よりの大好物で、ネットやテレビで変なグラフを見かけるたびにニヤニヤしながらフォルダに保存しています。保存先のフォルダ名はズバリ「#詐欺グラフ」。
そんな詐欺グラフの世界を皆さんに共有したいと思い、筆をとりました。(2024/2/6 update)

ネタ記事として、順次、ツッコミながら読んでいただければと思いますが、同僚や上司部下、取引先の「詐欺グラフ」に気づけるようにもなるため「ビジネススキルUP」にもつながるおトクな記事としても読むことができます

詐欺グラフとは

詐欺グラフとは、一般的なグラフの作り方とは異なる「演出」を加えることによって意図的に錯誤を狙うグラフ のことを指しています。本来、単なる羅列では直感的に理解しづらい数値等を分かりやすく表現するものがグラフであるわけですから、自分の主張を誇大に伝えるために読み手を誤解させる詐欺グラフはかなり悪質なものと言えるでしょう。
面白がって色々と集めるうちに、いくつかのパタンが存在することに気づいたのでパタンごとに順番にご紹介します。

立体的な棒グラフ

3Dで手前を大きく見せる手法です。Wordでも簡単に3Dグラフを作ることができてしまいますが、基本的には3Dグラフは 使ってはいけない機能 だと思った方が良いです。

画像1

原子力発電のコストが大きいと印象付けたいための演出ですね。
受験業界でもこの類のグラフはよく使われています。

画像2
画像3

そして…

画像4
ジャジャーン!

これは凄い! 2016年は2015年よりも減っていたのに力技で押し切っています(笑)
河合塾ではこういうグラフの見破り方は教えてもらえないんでしょうね…(大学受験の予備校だから当然ですが)

歪んだ円グラフ

全体を100%として表す円グラフ。パイチャートとも呼ばれるものですが、正円になっていない歪んだ円グラフもよく見かけます。
(ちなみに、円グラフは(歪ませなくても)錯誤を招きやすいものなので、ビジネスではあまり使わない方がいいです。人は異なる形の大小を正確に比較できないのです。帯グラフの方が正確+使い勝手も良いので一般的には推奨されます)

画像5

一見、アメリカの方が中国よりもCO2排出が多そうに見えますが、よくよく数字を見ると違います(笑)。3Dっぽく傾けることでこれを可能にしているわけですね。

画像6

ご成婚なされた眞子様と、小室圭氏のかつての留学先でのスケジュールをテレビ番組で紹介していた時の円グラフです。
よくよく見ると午後9時から午前0時までの時間が歪んでいることに気づきます… 翌日の予習が大変(小室さんがんばってる!)ということを主張したいのでしょうか。

このように「伝え手の意図」が透けて見えるところが詐欺グラフの面白いところです。

画像7
画像8

こちらのグラフもなかなか香ばしい。
報道番組内で「若者の不祥事」を特集しているわけですが、グラフを歪ませて大きく見せるだけでなく、10代と20代をまとめることで一番大きいセグメントにするという合わせ技です(笑)
ちなみに余談ですが、「最近は若者の不祥事が増えている」ということを言いたいのであれば、このグラフのような人数・件数だけでなく、「各世代の総人数に対する比率」「推移」についても言及しないと正しいことは言えないと思います。

グラフの目盛りの歪み

「歪み」は円グラフだけではありません。棒グラフや折れ線グラフの縦軸や横軸が恣意的に歪まされることで印象がガラっと変わっている悪質なグラフも良くあります。

下記は、民主党の首相が鳩山氏から菅氏に変わった直後のグラフです。

画像9
横軸をよーく見てみよう

一般的には内閣支持率は発足時が一番高く徐々に下がっていくもので、一見すると、菅氏の方が減少スピードが緩やかなように見えますが…
菅氏の内閣発足後、急に時間の流れがゆっくりになったのでしょうか? よく見ると横軸が恣意的に歪められていることに気づきます(笑)
実際にはより急速に内閣支持率が悪化していたわけで、意図したものではないかもしれないですが悪質な例と言えるでしょう。

画像10

こちらは池上彰氏の番組でのグラフですね。補正予算が大きいことを示したいのか左の軸が不思議な歪み方をしています。

最後に、2018年の台風18号で記録的な豪雨により災害が起きた時のテレビ番組の一コマです。民主党政権でどんどん予算が削減され、自民党でそれが持ち直されたという主張をしたいのであろう出演者のテロップとデータが表示されましたが…

画像11

民主党政権の平成21〜24年にかけて、確かに治水事業費は減少していますが、その後、自民党政権になっても大して回復していないんですよね。グラフ上では急回復しているように見えますが、わずか4ポイント程度で、実態はほぼ横ばいというのが正確な理解です。
なぜここまで急回復しているようにグラフ上では見えるかというと、縦軸が均等になっていないからです。対数グラフなのでしょうか?(笑)

0から開始しない棒グラフ

よく分かっていない人も多いですが、棒グラフはその面積で強い印象を与えるため、縦軸の一番下はゼロ。絶対にゼロ起点にしないといけません
これは法律でそう決まっているくらいに思った方がいいです。
(一定以上の知識がある人にゼロ起点になっていない棒グラフを見せたら、舐められるので気をつけましょう!)

画像12

ゼロ起点のグラフでないとまさに上記のような表現もアリになってしまうわけです。「MRJスゲエ!! 燃費が数分の一!」って、あれ…?

これ、別に嘘じゃないからいいんじゃないの?と思われる人も多いかもしれませんが、では逆にこのグラフで何を言いたいというのでしょうか。20%の減少を、見た目に「20%感」が全くない(むしろ誤解させる)表現にする意味はどこにもありません。
言い方を変えると、棒グラフとはその面積で印象付けるために使うグラフです。ゼロ起点じゃない棒グラフは、「騙す意図がある棒グラフである」と思われても仕方がない、という覚悟を持ちましょう。
(折れ線グラフならゼロ起点でなくても「面積での印象」が無いので比較的問題ありません)

縦軸に「にょろ(〜)」を使って一応ゼロ起点にしているよ、というグラフは多少は良心的ですが、やっぱり誤解を招くのであまり良いとは思えません。

画像13

最近も、東京都福祉局のHPに掲載されていた、福祉業界の労働環境が改善されてますよ、ってグラフが炎上しました。

すごい改善! と思いきや、左軸を見ると、あれっ?

やはりこちらも一見した印象で大きく誤解を生みそうです。実際に批判が殺到したため、下記のグラフに差し替えられたようです(この記事によって世間のグラフリテラシーが向上し多数の批判につながったのだとしたら幸いです…!)。

うーん、これならギリギリセーフか

なお、ソフトバンク(というか孫さん)は、この種の詐欺グラフが大好きです。ソフトバンクの発表会は詐欺グラフ好きクラスタの間ではご褒美と言えるものです。
以下の2つのグラフは、これまでに挙げてきた「グラフの目盛りの歪み」「0から開始しない棒グラフ」の組み合わせです。どこがおかしいか考えてみてください。

画像14
画像15
グラフは雰囲気!という強い意志

恣意的な2軸グラフ

「2軸グラフ」というものが存在します。主に折れ線グラフで、ふたつの数字をひとつのグラフの中に重ね合わせることで、新たな「気づき」を得られる表現ですね。
これ自体は良いのですが、それぞれの軸の数字を変えることで、かなりズルいメッセージ性を持たせてしまうことが可能です。

まずは電子書籍の市場規模。

画像16

紙媒体が激減している一方で電子書籍が迫る勢い…ではありません(笑)
紙媒体の激しい減少を支えられるほどの市場には全くなっていない「焼け石に水」レベルというのがおそらくより正しい評価ですが、なかなか誤解を招く表現になっています(もっとも、2012年の当時とは異なり、2024年現在では、電子書籍市場はかなりの市場規模になっているとは思います)

次。

画像17

これも同じような例です。ビール系飲料の減少の方が全然大きいのですが、ズルい表現ですね。

続いて、マツコの知らない世界。サーモンの回でした。

画像18

こちらも、鮮魚全体の消費金額が大きく下がっているにもかかわらず、サケは増えている、ということを示しているものですが、言うほど増えてるわけでもないんですよね。

…共通して言えることは、2軸グラフはそれ自体が必ずしも悪質とは言い切れないまでも、数字の大小が大きく異なるふたつの数字を左右の軸に置くことは誤解を招く可能性が高いので、使わない方が良さそうということです(数字の大小で2軸にするのは避けて、全然違う観点の数字の場合のみに使うに留めるのが良いと思います)

その他のパタン

本来まとめて扱うべきものを分けてカウントすることによってランキングがおかしくなるパタン。

画像19

iPad2なのでもうずいぶん昔のデータですね。
iPadは色や容量別にカウントしているため、タブレット端末のシェアで1位から落選してしまいました(笑)

最後はちょっと複雑です。グラフだけの話ではなく、論理展開全般に関わりますが、どこがおかしいか、分かりますか?

画像20

「社会保障費を軽視して、防衛費を増やしている!」ということをおそらく言いたいのだと思いますが、とにかくツッコミどころしかありません
・社会保障費の「前年度比での伸び率」が減った(2.0%から1.6%へ)ということですが、防衛費については「前年度比での伸び率」への言及がないので比較ができません
・そもそも社会保障費の「伸び率が前年比で減った」ことを問題視する必要があるのか。「伸び率」は依然として1.6%と(防衛費に比べて)高い
・というか金額で見たら社会保障費はもともと非常に大きい。日本の予算に与えるインパクトで考えたら「伸び率」ではなく「伸び額」で考えるべきではないか
・社会保障費は「前年と同じ伸び率だったら6400億円の増加のはずが伸び率が下がったので1400億円少ない5000億円の増加にとどまった」というのが真実なので「1400億円削減」という煽ったまとめも全く適切ではない
(安倍首相を批判したいのは僕も分かりますが… 控えめに言ってこれは完全に落第点。仮にも新聞としては許されないレベルだと思います)

 * * *

世にはびこる #詐欺グラフ
皆さんも見かけたらご一報いただけますと幸いです。



いいなと思ったら応援しよう!

けんけん
サポート…も嬉しいですが、フォローや、SNSで拡散していただけるとさらに嬉しいです! よろしくお願いします!