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Vol.6 そのジョブ型、間違っていませんか?
他人事のようなタイトルですが、自分の会社の話です。(笑)
最近ジョブ型の人事制度が流行っています。
私の会社にも導入されているのですが、何だか違和感があります。
ジョブ型というのはスキルや役割を定義して、プロジェクトに必要なジョブを洗い出し、それぞれのジョブが実行できる人材を集める手法だと理解しています。
でも私のところのジョブ型はちょっと変です。
何て言ったらよいんでしょうか。結局、何でも屋を求めている感じ?
今日はそのあたりの話を書きます。
ジョブ型とは
私のジョブ型のイメージは、AとBとCという役割があって、Aができる人、Bができる人、Cができる人を集めるイメージです。
アジャイル開発なら、プロダクトオーナー、スクラムマスター、開発メンバーがいて、開発メンバーはさらに分割されます。ここでは仮に、クラウド技術者、フロントプログラマー、バックプログラマー、システムテスト技術者とします。
そうすると、ジョブはザックリ以下のようになります。
(説明し易くしているので、厳密性は気にしないでください。)
<プロダクトオーナー>
企画力、外交力、交渉力が突き抜けている人
<スクラムマスター>
協調性、調整力、人材育成力が突き抜けている人
<クラウドエンジニア>
クラウド設計、最適化スキルが突き抜けている人
<フロントエンドエンジニア>
デザイン、Webプログラミングスキルが突き抜けている人
<バックエンドエンジニア>
ロジカル思考力、プログラミングスキルが突き抜けている人
<システムテストエンジニア>
緻密な性格で、テストスキルが突き抜けている人
何か違うジョブ型
私の会社でもジョブが定義されてはいます。
でも、その中身を見ると、専門スキルに加えて、すべてのジョブに、交渉力、調整力、人材育成力などが並んでいます。
そして、等級ごとにそのレベルが違うのですが、その内容はどのジョブでも全く同じなのです。
例えば調整力だと、どのジョブでも以下のように書かれています。
ここでは、等級1が最上級だとします。
等級1:社外調整力
等級2:社内調整力
等級3:部内調整力
等級4:チーム内調整力
これって結局、専門家を目指せと言いながら、なんだかんだで総花的で、
全部頑張ってね
オールマイティになってね
何でも屋になってね
というメッセージに見えます。
以前から、会社が求める人材像というのがあったのですが、結局のところその頃と何ら変わっていません。
勿論、専門性だけであとは不要、と言いたいのではありません。
でも、突き抜けた人を集めて、足りないところを補い合う、というのがジョブ型の真髄なのではないでしょうか。
優先順位のあるジョブ型
そもそも、全部頑張ってね、というのが私は好きではありません。
他の投稿で、優先順位が大事、と書きましたが、ここでもそれは変わりません。
こういうのも、優先順位がメチャメチャ大事だと思うのです。
私のイメージは、例えば以下の通りです。
<◯◯エンジニア>
等級1:+協調性 または 調整力 または 人材育成力(強みを1つ選択)
等級2:◯◯エンジニア上級レベル
等級3:◯◯エンジニア中級レベル
等級4:◯◯エンジニア初級レベル
<スクラムマスター>
等級1:+人材育成力
等級2:+調整力 または 協調性(等級3と逆を選択)
等級3:+協調性 または 調整力
等級4:◯◯エンジニア初級~中級レベル
分かりますでしょうか。スキルに優先順位をつけて、ひとつずつ高めていくイメージです。
また、ジョブによって、取得すべきスキルが違います。
他のスキルが不要とは言いませんが、普通レベルでよいスキルまで、わざわざ定義する必要はないのです。
人は一つのことにしか集中できない
優先順位が必要だと提言すると、全て大事なので、優先順位はそれぞれ個人で考えて高めてください、と返ってきます。(実際にあった話です。)
そんなのは当たり前で、自分の何を伸ばすかは、個人のキャリアプランで考える必要があります。
でもそうじゃなくて、会社として、事業部として、部門として、それぞれの特徴によって優先する項目があるはずです。
でもそういう発想がないんです。メリハリがないというか、想像力がないというか。
専門スキル、調整力、伝達力、人材育成力、と4つが並列にあると、それぞれに目標を立てても、1年を通して4つの目標を全て意識して行動するのは、簡単ではありません。そもそも目標を覚えられません。
4つともできる人もいますが、1つしかできない人の方が圧倒的に多いです。また、集中した方が効果が出やすいです。当たり前の話です。
例えば、うちは開発部門だから専門スキル以外は協調性を特に重視します、とか、うちの部門は調整力が少し劣っているから今年は調整力強化に注力します、とか、1つ決めてもらえると、スッと頭に入ります。
会話する時も、今年は調整力を強化だから、特に注意して進めよう、というように、周囲と調和し、ベクトルも合います。
かつ、個人でそれぞれ強みを磨けば、組織力が最大化に向かいます。
まとめ
今回はジョブ型について書きました。
これを、以前書いた「発散力」と「収束力」という視点で見ると、ジョブ型は多種多様な人材を生み出す「発散力」であり、同時に、互いに補い合う「収束力」のマネージメント手法でもある、と言えます。
「発散力」にも「収束力」にもならないジョブ型では効果がありません。
両者が共に強く働くジョブ型を目指したいものです。
そういう細部に拘った経営をしてほしいなあと思う今日この頃です。
皆さんのところはどうでしょうか。