
Vol.26 想像力の欠如例 その2
前回スマホがを使えない会社が異状であるが放置されていることを書きましたが、今回は、そもそもその状態が異状だと気づいてすらいない事例を書きます。
前提として、社員にはいまだにパカパカ携帯(ガラケー)が与えられています。社用スマホは課長以上の特権です。
ちなみに、前回とは異なる部門での出来事です。
複数の部門で似たような体験しましたし、このような組織は会社内で決してレアケースではありません。
残念な発言
「最近、個人スマホで写真を撮っている人が多い。情報セキュリティ的に大問題だから、絶対に使わないように徹底指導しないといけない。」
これは、その時に私が所属していた組織の課長さんの発言です。
これを見てどう思いますか?
「個人スマホは絶対NGだから当たり前だ。」でしょうか。
勿論それは非常に正しい意見です。
でも、前回書いた通り、これだけで終わってはいけないのです。
少し想像力を働かせれば、なぜそうなっているかは明白です。
それを対症療法で止めることの、マイナス要因も明らかです。
社員のストレスが増えて、モチベーションが下がることも自明です。
なので私は、「徹底するのは良いけども、それは、社用スマホが配られていないという異状をお詫びした上で、不便で申し訳ないけどルールを守ってほしい、と言い方にした方がよいと思います。また、自分は課長として社用スマホの利用者を増やせないか、上に掛け合ってみる、というぐらいの姿勢を見せた方が、社員は納得します。」と進言しました。
この時、「確かにそりゃそうだ。」とすぐに納得してくれることを私は期待していました。
ところが意外にも、その課長さん、どういうことか分からないという顔をしたのです。
しばらく議論して、ようやくそういう考え方もあるのか、みたいな感じになりました。
私は、組織というのはこんなにも凝り固まるものなのかと、愕然としました。コンサバな組織は、今が悪いことが分かっているけど変わりたくないのではなく、そもそも今で問題ない、少なくとも悪くないと、本気で思っているのです。
こういうところに大きな変革をもたらすのは、大変な労力を要します。
風土改革の難しさも同時に実感しました。
対症療法ではなく根本治療を
みなさんの組織はどうでしょうか。
ダメなことをしているから、ダメと言う。ルールを作る。罰則を作る。
これで済ませていないでしょうか。
残念ながら、ここで終わる組織は進化しません。
ルールや罰則は対症療法であって、根本治療ではないからです。
再発防止のために、対症療法はもちろん重要です。
でも、同時に根本治療をしないと組織は進化しないのです。
何故ついつい個人スマホを使いたくなるのか、少しばかり「想像力」を働かせるだけで、とんでもなく危機的なことが起こっていることに、容易に気づきます。
根源は何?
でも私は、この課長さんが悪いとは全く思っていません。
何故なら、これは大企業では普通に見られる風景だからです。
でなければ、大企業病という言葉も生まれません。
これは、間違いなく経営課題なのです。
古い経営がこのような社員を量産したのです。
個々の社員が、自己啓発で気づけばよいという話ではありません。
それに期待するのは経営ではありません。
そういう人は、組織で浮いてしまうので、すぐに辞めてしまいます。
なのに、経営改革や風土改革では「あなたがた、今のままではダメです。変ってください。」と要請されます。
自分たちは常に時代のトレンドにあった経営をしている、時代が変わったから、皆さん変わってくださいというスタンスです。
それはナンセンスです。
過去に書いたディズニーの経営を見てもわかる通り、真理はそう簡単に変わりません。
時代で変わる部分はあり、変り続けないと生き残れないという側面はあります。でも変わり続けようとする風土は変わってはいけないものです。
風土は長い年月をかけて醸成されます。その根幹を改革せねばならない状況は、経営の責任です。
経営陣もそれは分かってはいると思うのですが、であれば、もう少し謙虚になれないのでしょうか。
「これまでの経営手法は不十分でした。結果として会社の風土が悪くなってしまいました。本当はこうありたいので、皆さん協力してください。」
社員の信頼を得て会社を立て直したければ、こういう姿勢から始めねばならないという気がします。
まとめ
では、どうなっていたらよいでしょうか。
ありたい姿とはどういうことなのでしょうか。
この点は、ビジョンドリブンの肝になるところなので、回を分けて、次回記載したいと思います。