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大内岳 × 福永健人「ぶどう」Music Video対談⑤ 〜準備と集中〜

ドラマーでありながら、コラージュアニメ作家でもある。

2021年6月23日にリリースした福永健人『No.23』より
収録曲「ぶどう」のMusic Videoを制作して頂いた大内岳さん。

福永とは、二十代前半からの古い「対バン仲間」だった彼が
突如として摩訶不思議な映像世界を作り出した。
その裏側にはどんな思想やエピソードがあったのか。

他ならぬ福永自身があまりにも気になってしまったので、リリースのすぐあとに対談をお願いました。

「ぶどう」Music Videoの裏側から、果ては芸術に取り組む根本の話まで。
半ば対談であることも忘れて、たっぷり語り合いました。

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【制作するときの「準備と集中」】

「手足を取られながら、なんとか進むっていうほうが良い飛沫かな、っていう。」

大内 : それでいうと、似て非なるというか、こんなことを言ったら怒られるかもしれないけど、自分は作っている時から「早く終えたい」って気持ちは常にあるんですよ笑 

福永 : 笑

大内 : ドラムのレコーディングなんかでもそうなんですけど、常に「人を待たせている」という気持ちがあって、もう、これはプレイヤー自慢でもなんでもないんだけれど、基本2テイクくらいしか録らないですもん。

福永 : 助かるけどね、そういうドラマーは。

大内 : 自分でうーんと悩み出す前に「これでOKです」って言う文化が自分の中にあって、それで(アニメ)作品に関しても、最中に集中するというか...矛盾するかもしれないけど、トライアンドエラーで沢山素材を作るんだけど、撮る瞬間にはめちゃめちゃ頭を働かすというか、集中するというか。
みんな結構、何かをやった後に、それをプレイバックする時に集中するんだけど

福永 : そうね。

大内 : 俺は作る時に集中するっていう。

福永 : なるほどね。

大内 : だからそのあとはむしろ落とし前の時間というか。
実は提出することは夜中の時点で決まっている、みたいなことがあって。
朝に直そうかなみたいなことは結構細かいことが多い。

福永 : 俺も依頼された時の録音スタジオなんかでは1テイク2テイクしか録らないというか...予習が好きで。だからその場で聴いて、弾くっていうよりはお家でちゃんと練習してきて、パッと録って終わり、みたいな方が好き。

大内 : ...でも構造を覚えすぎちゃうのも良くないと思うんですよ。

福永 : というと?

大内 : 抑揚をぴったり合わせることにはまって演奏していた時期もあるんだけど、今はもうちょっとこう、自分が飲まれているというか。

福永 : あーなるほど。

大内 : 自分が泳いでいることは変わらないけど。

福永 : 波に揺られるってことだよね。

大内 : 例えば泳いでいるとして、そのために着替えて水着で泳いでいるというよりは、そのまま服で、着衣水泳みたいな感じで。手足を取られながら、なんとか進むっていうほうが良い飛沫かな、っていう。

それは映像を撮る時にもあって、気持ちの、脳みその予習はすごくする。
その表現のコアの部分をものすごくよく見据えて、その上で、それ以外をうろ覚えにしておく、みたいな感覚。

福永 : ほおお。

大内 : 結構なんか、なまけものなんですよね。サボり癖があって。

福永 : サボり癖があって笑

大内 : だから今いろんな活動をしているのかもしれないです。

福永 : バンドいくつくらいやってるんだっけ?とんでもない数やってるよね?

大内 : いっぱいありますね。数えれば6つはありますね。
サポートと合わせて14こくらい....。

福永 : すげえ笑 ...改めてお忙しい中対談ありがとうございます。

大内 : いやいや、とんでもねーです。

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福永 : 俺はねえ...結構予習をしていかないと、不安で。メンタルが弱いといえばそれでおしまいなんだけど。

大内 : 笑

福永 : 緊張しちゃうんだよね。ちゃんと予習していくと、飄々としていられるというか。弾けるし、って思いながら始まるわけだから。予習派じゃない人もいるじゃない、何にも決めずに行って、アドリブでバーっと弾いてっていう。

大内 :うんうんうん。

福永 : 福永の場合は、「ここはアドリブ」って、それも決めていく。ここは○○コードに○○スケールをぶつけにいく、とか、アドリブとかいう割になんとなくの指針も決めていく。

大内 : 壊れ方というか。「こういう風に壊す」というか。

福永 : そうそうそう。レコーディングってやっぱ、気分が乗ってくるから準備しても結局違うものになっちゃうんだけど、きちんと準備をした上で、予想と違うようになっちゃう、というのを楽しんでる部分もある。

大内 : 確かにその、ちゃんと目指した方が、良いエラーが起きうる。

福永 : そうそうそう。エラーマネージメント。エラー自体は全然OKなんだよね。ただ、ガチガチになって指回りませんでした、みたいなのは、好きじゃない。

大内 : まだはじまってないな、みたいな。

福永 : そうそう。

大内 : そうなっちゃうと余計緊張しちゃって、上手くまとめにいっちゃって、とか。まあでも、そういう意味でいうと、自分はゆとり派ですわ。

福永 : ゆとり派ね笑 そこはお互い結構違うんだね。

大内 : そうですね。OK、NG概念も結構ガバガバなので、こっちは。

福永 : そう言うわりに、(「ぶどう」Music Videoは)届いてから、俺が直したところって殆どないよね。

大内 : 直そうかなと思っているところは共通していたというか。

福永 : ここはこうじゃない?みたいなのが殆ど一緒だったから、福永は実質何も言ってない、みたいな。

大内 : 最初のミーティングが良い感じだったのが大きかったと思いますね。元々の突っ込んだニュアンスというか、この作品に対してというより、色々と芸術の話をあらかじめしていたから。

福永 : うんうん。

大内 : やっぱそれさえあれば...だから、それが「準備」ですよね。 結局そこが分かっていれば、どれがエラーなのかとかがわかる。

福永 : かなり抽象的な話をしたもんね。

大内 : さっき(この対談が始まる前に)良い録音をするためには「音の入り口と出口は良い機材で揃えよう」みたいな話が裏であったけれど、入り口と出口の話さえしっかりできれば、途中はどんな道を通っても、少なくとも許してはもらえるという笑

福永 : "許してはもらえる" 謙虚だなぁ笑

大内 : 発注する側もそこらへんは実はなんでも良いと思っているというか。だから、逆に「売れればいい」みたいなものを作る方が難しいかもしれない。
売れれば良い人は、もっと、その、見え方に敏感だと思うから。
途中で「ここはこうのほうが良いんじゃないですか?」ってことを、きっともっと言ってくるはず、という気はしています。

福永 : 今回はずっとパクチーみたいな音楽と映像だからね。

大内 : パクチーのステーキ。

二人 : 笑

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>>次回 そもそも、ぶどうって何だ?「ぶどう」Music Videoが完成するまでの思想に迫ってみます。

<<前回 ものをつくる上で「完成」とはなにか

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福永健人 - ぶどう(official music video)  dir.大内岳

再生ボタン付き

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