No.23 登場人物④ yuma yamaguchiさん 編
ゆうまさんは恩人といって差し支えない。
福永は現在CMを中心とした作曲業で生計を立てている。
そして、作曲業を福永に教えてくれたのが、ゆうまさんなのである。
当時小さな居酒屋でアルバイトをしていた福永が調理するキッチンの目の前。
カウンター席の奥から3番目座ったのが、CM作曲家の大先輩であるところのゆうまさんであった。
そんなミラクルは漫画でしか読んだことがないが、事実は小説より奇なり。いや、漫画より…?
ゆうまさんのフレンドリーで全く威張るところのない柔和な人柄に乗せていただく形で、実は福永も音楽をやっているんです、なんてお話をした。
閉店も近づいてきた頃、他のお客さんが帰ったタイミングで、入り口付近にあったギターを見て
「ケントくん、ちょっと弾いてみてよ〜」と。
ついさっき「今流れているマクドナルドのCM、あれ僕が作曲しました」と言っていた方の前で
ギターを弾くなんていうのは、そりゃあもう緊張ものだが、清水の舞台に飛び込むような気持ちで一曲弾いた。
確か近藤研二さんの「誕生日」という曲を。
後から聞いた話によると「あれ、思ったより上手いぞ...」と思っていただけたらしい。
そこまではまあともかくとしても、それから1年くらいが経った頃であろうか、実際にCMの仕事を振ってくださったのである。
ギタリストとして、ゆうまさんの楽曲を演奏させていただく。
その中には後に世界で40賞以上を受賞した「GRAVITY DAZE 2」の通称「重力猫」も含まれていた。
居酒屋で出会った、ギターが思ったより上手い、毛髪の多いメガネ男を、
日本あるいは世界の最前線CMシーンに使用する予定の、
自分の楽曲のギタリストに起用するなんてことは、普通はできないと思う。
例えど上手いと思ったにしても、でも居酒屋にいた謎の青年である。
どの立場から語っているのかわからなくなるが、素晴らしい作曲家であると同時に、凄まじい耳と度胸をお持ちの方だと思った。
それらの作品を元にポートフォリオを作り
CM音楽制作会社に営業をして、ギタリストでなく元々の興味分野であった作曲業にシフトして行ったのが、現在の福永の生活の基盤である。
そう、とんでもない大恩人なのである。
今回の”No.23”では「07.科学の木」後半でローズ&ピアノを弾いていただいた。
といってもぱっと聴いて「これはローズ、これはピアノ」とわかるような音量感ではないかもしれない。
この楽曲の後半はなにしろ多くのトラックが入り乱れている。
でも、逆に、ミュートするとはっきりわかる。「この音は抜いたらいけない音だ」と。
その状態をみなさまにお聴かせできないのはなんとも歯がゆい。
楽曲の後半、どことなくエレクトリックでサイケデリックなものが登場して欲しかった。
ところが、福永はアコースティックなアプローチは得意だが、エレクトリックなアプローチが苦手である。
そんな折、ゆうまさんの自宅でウイスキーと音楽を楽しんでいた際に
「俺も参加させてよ!」と言ってくださったのである。
少し前にリリースされたゆうまさんのアルバム「NotAnArtist」を暗くした部屋で大音量で聴いて
「05.潜行(feat.角銅真実)」のストリングス入りでちょっとだけおしっこを漏らしていた福永にとって
それをお断りする理由など微塵もなかった。
ホールトーンスケールから徐々に崩壊していくローズソロ。
福永が苦手とするエレクトリックかつ理知的なアプローチ。
見事に叶えてくださった。
その上でそれを隠し味にさせていただいちゃうなんて、最も贅沢な使い方をさせていただいてしまったんじゃなかろうか。
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2021.06.23リリース
福永健人1st EP「No.23」
「07.科学の木」にコーラスで参加してくださった、yuma yamaguchi氏の紹介でした。
狭い針の穴をぴったり貫くローズ&ピアノをありがとうございました!
No.23特設ページはこちら
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「No.23」セルフライナーノーツ(全曲解説、制作エピソードなど)
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